じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 7/3のこの欄でオタマジャクシ救出の話を書いた。池に移したオタマジャクシはその後順調に育っている。カエルの恩返しなんてあるのかなあ。



7月11日(水)

【思ったこと】
_10711(水)[教育]21世紀の大学教育(7)国立大で全国初、「学生・教員FD検討会」設立される(前編)

 7/11の夕刻、「学生・教員FD検討会」の第1回の会合が開催された。この会は、岡山大学教育開発センターの下に設置され、各学部から2名ずつ推薦された学生委員を中心に学生委員32人、教員委員8人(7/11現在)で組織され、大学全体の教育改善について提言や要望とりまとめなどを行うことになっている。教養教育に限定した学生組織としては千葉大の「普遍教育学生会議」などが知られているが、大学全体の教育改善を定期的に検討する組織としては国立大では全国初、私立大でもあまり例は見られないのではないかと思う。

 第1回目の会合では、全学のFD専門委員長に選ばれたばかりの長谷川が「FDとは何か」について30分程度の講演を行った。ここではそのうち、一般性の高い部分を備忘録がわりに記しておきたいと思う。



 講演ではまず、『大学力を創る:FDハンドブック』(大学セミナー・ハウス、1999年)を引用しながら、FDが本来
個々の大学教員が所属大学における種々の義務(教育、研究、管理、社会奉仕等)を達成するために必要な専門的能力を維持し、改善するためのあらゆる方策や活動
として定義されていたこと、また、優秀な研究者として採用された大学教員が必ずしも教育者として優れているわけではないという実情のもとで、授業改善などさまざまな取り組みが行われてきたことを紹介した。しかし、FDは決して教員だけの取り組みで達成できるものではないこと、大学における勉学活動に関連して学生から出される要望は、原則としてすべてFDの検討課題になりうる点を強調した。

 次に、文部省(当時)高等教育局の「大学における学生生活の充実に関する調査研究協力者会議」が2000年6月に報告した「大学における学生生活の充実方策について(報告)−学生の立場に立った大学づくりを目指して−」の内容を一部紹介。この報告書は、学生の希望・意見の反映させる施策として
  • 「学生中心の大学」への転換を図るという観点から,大学教育においては,大学で教育を受ける学生の希望や意見を,適切に大学の運営に反映させることが重要。
  • 学生が積極的に大学運営に関わることを通じて主体的に大学生活を送ることは,学生の社会的な成長を促すことを期待できるものである。
  • 欧米諸国においては,伝統的に,学生の代表が大学の管理運営組織の正式なメンバーとされ,広範に大学運営への学生参加が認められている。しかし,このような制度を現時点において,我が国の大学に取り入れることは,これまでの経緯や,現在の大学の意思決定システムとの整合性に配慮する必要があり,慎重に検討すべき。
  • むしろ,大学の授業内容・方法や学生生活に関する事項など,学生の希望や意見を取り入れることが適切な事項について,大学の責任者が定期的に学生と意見交換する場を設け,その結果を,できるだけ大学運営に反映させるという方法が有効であると考えられる。
といった提言が盛り込まれており、今回の設立もその線に沿ったものであることを指摘した。なお、7/12の朝日新聞岡山版では「学生の意見を大学運営に反映させることが重要とする文部科学省の要請を受けて」設置されたような記述があったが、トップダウン型の要請があったわけでは決してない。昨年度の全学シンポジウムにおける学生の主体的な取り組みを契機としたボトムアップ的な盛り上がりと、「教える者と学ぶ者の共通意識を形成するための対話の重要性」を強調する学長の意向に沿って設立されたものであり、要請に基づいて仕方なく発足させたようなものではない点を強調しておきたい。

 次に、当面の課題(あくまで叩き台)として、
  • 授業評価
  • シラバス
  • 外国語教育
  • 新授業科目の企画・提言
  • 勉学環境
という5点を掲げた。あとのディスカッションでも発言したのだが、これらの課題はFDの中で重要度の高い順に並べられたものではない。むしろ、発足時にとっつきやすい課題、言い換えれば、それに取り組むことで何らかの成果が期待されるものとして選んだものである。

 FDについて学生の関心を高めるためには、「取り組み」に対して目に見える結果を随伴させ強化することが必要である。たとえば、
  • 体育会系のサークルが比較的活発であるのは、サークルに入って練習を重ねるという行動に対して「試合で勝つ」とか「連帯感」といった結果が伴うためである。
  • 生協の学生委員会活動が比較的活発に行われているのも、「食堂のメニューを増やしてほしい」とか「営業時間を延長してほしい」といった要望に対して「実現」という結果が直ちに伴うからと考えられる。
こうした行動分析学的な視点を活かすならば、FDにおいても、まず成果を出しやすい課題に取り組み、少しずつ「できる範囲」を広げていくことのほうが生産的であろう。抽象的な議論に終始していたのでは、委員のやる気や自信は消失してしまう。次回に続く。
【ちょっと思ったこと】


【スクラップブック】