【思ったこと】 _10629(金)[心理]オーストラリア研修(その5)回春庭園と回春室?
アデレードでは2日間にわたり「ダイバージョナルセラピー(Diversional Therapy、以下『DT』と略す)」のレクチャーを受け、現場の視察・体験に参加した。今回はその内容を紹介したいと思う。もっとも、今回体験したのは、「MURRAY WING」という、痴呆症ケア施設(居住者18人)において実践されているプログラムに取り入れられているものであり、DTもそれに特化された内容になっていた。
ちなみにこのプログラムは
- Socially stimulating activities:
- Bus Outings
- Concerts
- Special afternoon tea
- Happy Hour
- Cognitively stimulating activities:
- Occupational Therapy dementia specific sessions
- Other craft activities
- Newspaper Reading
- Cards
- Bingo
- Memory games
- Other board games
- Magic Memories
- Reminiscence
- Physically stimuloting activities:
- Exercises
- Group Walks (indoors and outdoors )
- Individual Walks
- Active Games (quoites, hookey, mini golf, bowls darts etc. )
- Emotionally stimulating activities:
- Beauty Therapy
- Relaxation (via Multi-Sensory Room )
- Art Therapy
- Doll Therapy
- Music Therapy
- Pet therapy
- Tending to pet birds
- 1:1 emotional support
- Spiritually stimulating activities:
- Church services
- Hymns We Love
- Church visitors
- Homecare activities:
- Cooking
- Linen Folding
- Dishes
- Sweeping
- Dusting
というように多様で豊富な内容になっており、その目的も
- 生活の質の向上
- 家庭的な環境の保持
- いろいろな活動に従事することによる置き換え・発散によって不適切あるいは攻撃的な行動を起こりにくくする
など、狭い意味での「療法」にとどまるものではなかった。
実際に体験したなかで特に印象に残ったのは、「SENSORY GARDEN」と「MULTI-SENSORY ROOM」であった。
前者(写真左上)は、痴呆症ケア施設の外庭に作られたもので、居住者はいつでもそこを散策することができる。日本の枯山水庭園のように静かに眺めるものではなく
- 散策することで体のバランスを保つ
- 触ってみることによる刺激
- 香りを楽しむことによる刺激
- 味を楽しむことによる刺激(毒性のある植物は植えられていない)
- 音を聞くことによる刺激(近づくとセンサーによりカエルの鳴き声や鳥の鳴き声がする仕掛け、バケツに水がたまると流れる仕掛けなどあり)
- 景色を楽しむことによる刺激
などの効果をねらったものであり、初めて訪れた印象としては、少々騒がしい「回春庭園」といった感じがした。また、すでにできあがった庭園を楽しむということなので、「育てる」ことに主眼をおいた園芸療法とは性格を異にしているように見えた。
後者(写真右上)は、施設の一室に設けられたもので、初めに種々の味のするキャンディを食して味覚を刺激し、リラックスチェアに座りながら音楽、照明、香りのする煙、暖かさ(ホース状のものをにぎる)、触覚(皮膚を刺激するような飾り)など、文字通りマルチな刺激を受容することができる。ジェットコースターのような加速度的な刺激は与えないのかとも思ったが、心臓や骨の弱いお年寄りには過激な運動は禁物であろう。尋ねた限りでは、ロッキングチェアを揺らす程度の刺激は効果がありそうだということだった。次回に続く。
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