じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] コモンセージ。年々株が大きくなり、たくさんの花を咲かせるようになった。



5月13日(日)

【思ったこと】
_10513(日)[心理]園芸療法・園芸福祉を考える(3)自然がもたらす癒しの環境

 東京の国際文化会館で行われた「日本園芸療法研究会第23回シンポジウム:自然がもたらす癒しの環境」に参加した。前日の「京都心理学セミナー:ことばと体験をつなぐもの〜心理療法からエコマネーまで〜」のほうの報告を中断して、記憶の新しいうちに、こちらのほうから感想を記しておきたいと思う。

 今回の講師は、「癒しの環境研究会」世話人代表の高柳和江・日本医科大学医療管理学助教授であった。案内サイトによれば、高柳氏は、「小児科医としてクウェートの病院に10年間勤務、そこでの医療環境の彼我の違いにショックを受け、研究会を設立した」という。ちなみに「癒しの環境研究会」は今年の7月14日・15日に、岡山市のママカリフォーラム岡山で第2回の全国大会を開催する予定であり、高柳氏はその時にも「21世紀の癒し」と題して記念講演を行うことになっている。

 今回の講演では、まず、病院の規模を「○○床」とか「○○人」というように収容人数だけではかる日本の医療のあり方について批判があった。そして、
  • フルタイムの患者からパートタイムの患者へ
  • 「見ざる聞かざる言わざる」から「見る、聞く、話す」への体制作り
という発想の大切さを説かれた。また、具体的な癒し環境の条件としては
  1. ポジティブ志向
  2. 樹木、水
  3. 生き物
  4. 自然、空、宇宙
  5. 家族、人間
  6. 同じ目の高さ
という6つを挙げておられた。



 講演のあと、約1時間にわたって活発な質疑が行われたが、その中では、
  1. なぜ植物はhealingの効果をもたらすのか
  2. 21世紀の医療は、高度医療と自己治癒力を高める医療に分化する
という2点が特に記憶に残った。

 1.は園芸療法の根本に関わる問題であるが、高柳氏によればその理由は、地球上に植物が生い茂りその後に人類が誕生した経緯を考慮すればclear-cutであるという。このほか、フロアからは「DNAに組み込まれている説」なども出た。

 私自身は、このDNA説はあまり信用していない。癒しの根拠を進化のプロセスだけに求めてしまうと、例えば、音楽療法はどうするのだろうか。園芸療法の場合は「人類の誕生以前から植物があった」と言えても、音楽療法については「人類の誕生以前から音楽があった」というロジックは使えない。絵画療法も同様である。

 私はむしろ、個人レベルでのインプリンティング効果のほうが大きいのではないかと思っている。つまり、今の高齢者の多くが園芸療法に興味を示すのは、子供時代に緑に囲まれて育ったことが大きく影響している。それゆえ、TVゲームばかりを楽しんで育った子供が将来高齢化した時には、ひょっとして、緑に囲まれた病棟よりもTVゲームで自由に遊べる病棟のほうを選ぶ可能性がある。そういう意味では、病院環境ばかりでなく、幼稚園や小学校の教育環境の中でもっと緑を増やし、自然環境との共生に価値を見出す世代を作り上げていく努力が求められるように思った。このことは私自身フロアから発言した。



 もう1つ、2.の視点も非常に大切だと思う。健康保持の基本は自己治癒力の保持にある。本来、薬というのは体内に少量の毒を送り込んで自己治癒力を活性化するようなものである。となれば、薬ばかりでなく、病院全体の環境を整備することが急務。数メートル間隔でベッドを並べた大部屋ではなく、日本庭園が眺められる床の間に布団を敷いたほうが自己治癒力が高まることは当然であろう。外来で長時間待たせて自己治癒力を破壊するのも、もってのほかだ。

 医療技術がどんなに進歩しても、人間はいつかは必ず死ぬ。子供や若い世代の難病を治すための高度医療はぜひとも必要だが、90歳の人を100歳まで人工的に延命させる技術は必ずしも必要無い。それよりも90歳の人が人間らしく死を迎えられるような環境を整えることもまた求められる。

 なお、このことに関連してフロアから「病院という呼称は廃止すべきだ」という発言もあった。hospitalがなぜ病院と訳されたのか、むしろ「オアシス」とか「院」と呼ぶべきであるという趣旨だがまったく同感だ。若い世代にとっては「病院は居心地の悪い、一時的な滞在場所。一刻も早く退院して、居心地の良い居住空間に戻るべき」という我慢も成り立つが、お年寄りでは、病院が長期間の生活空間になることがある。ホスピスだけでなく、一般病棟においても生活空間を保障するための改善が求められる。

 以上、なかなか実り多いシンポであった。なお、日本園芸療法研究会は、9/9と11/18にもシンポを予定しているとのことだ。
【ちょっと思ったこと】

都営地下鉄の不親切

 上記のシンポジウム参加のため、神田神保町から国際文化会館のある麻布十番駅に向かうことになった。3月に慶応大まで行った時には神保町から都営地下鉄で三田まで乗車したことがあった。たぶん三田あたりで乗り換えればよいのだろうと、あまり深く考えずに都営線の切符売り場に向かった。ところが、なんと、三田方面に向かう地下鉄と大江戸線とは同じ都営にもかかわらず「立体交差」していて連絡していない。といって今さら営団地下鉄に向かうのも面倒なので、「神保町〜森下〜大江戸線」という経路で麻布十番に向かった。ところが、これがよくない。途中の駅で5分ほど時間待ち?停車をしたあげく、まさに大江戸の外側を遠回りして、合計40分かかってやっと麻布十番に辿り着いた。

 ネットのどこかで「大江戸線は、世界初のリニアモーター式地下鉄である」などという噂があり、まさかとは思っていたが、やはり、ごく普通の地下鉄という感じだった。

 帰りがけに地図をよく見たら、営団の南北線で永田町乗り換えが神保町からの最短コースであることが分かった。都営線は260円かかったが、永田町経由なら160円で済む。

 とは言え、鳥居坂を下りたところにある7番の出入り口から南北線に乗るのはまた一苦労であった。いったん大江戸線のコンコースまで降りてから再度エスカレーターで上がり、またまた下がる。まるで迷路のようなところだ。毎日地下鉄を利用している方は、運動不足になることはまずあるまいと思った。

不払いいろいろ

 今年3月までの一年間に携帯電話・PHSの料金を払わず、請求にも応じない利用者は一年前よりも9万人増えて87万325人になったという。不払い者の多くはデータ通信利用者だというが、いったい何のデータ?

 いっぽう、国民年金保険の不払い者は264万人、3年前の調査より92万人増加したという。

 電話の場合と国保の場合とで事情は著しく異なるものと思われるが、政令指定都市の人口に匹敵する不払い者が存在するということ自体、システム全体に欠陥があると言わざるをえない。

米百俵の精神

 小泉首相の演説で突然脚光を浴びた「米百俵の精神」。米百俵は6tにあたり、100人が1年間食べられる量であるという。5/14朝のNHKニュースによれば、この話は新潟県の長岡藩の話。「苦しい状況にあっても明日のために備えよう」という意味のようだが、「明日のため」には経済復興ばかりでなく地球環境保護の視点をぜひとも入れてもらいたいものだ。京都議定書問題をどうするかなどもその1つ。