じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 鶴見岳頂上付近。朝、宿舎の窓から見た鶴見岳が真っ白になっていたので、予定を変更してロープウェイで頂上に。霧氷を期待していたのだが、頂上付近は猛吹雪で、頂上駅出口から10mほど進むのがやっとだった。帰り際には麓の駅でもみぞれが降る始末。



3月31日(土)

【思ったこと】
_10331(土)[心理]「食生活」が話題でーす。

 このところ、日本人の食生活に関する話題を耳にする機会が多くなった。3/30夜から3/31にかけてTVで流れたフレーズは次の三題。いっけん別物のように見えるが根は同じ。
  1. たべもの新世紀
  2. 緊急輸入制限
  3. ランチメート症候群
 1番目の「たべもの新世紀」というのは、3/30の21:15からのNHK番組で使われたフレーズ。NHKでは、公共放送プロジェクトとして、日本人の食生活をめぐる諸問題に総合的に取り組む予定であるという。今回のプロローグ的な放送では、1965年の73%だった食料自給率が1999年には40%に低下したこと、2000年調査によれば農業従事者の53.3%が60歳以上であること、このところ野菜の輸入が急増していることなど、最近の内外をとりまく変化が伝えられた。



 第2の輸入制限のニュースは、長ネギ、生椎茸、い草の3品目について、輸入品に国内生産物と同程度の価格になるように関税をかけるというもので、この方針をちらつかせながら、輸入元の中国に自主規制を求めていくという政治的意図が含まれているという。長ネギを例にとれば、1996年から2000年の間に輸入量が25倍にふくあがっているというから相当のものだ。生協の野菜売り場でも、「国内産200円、中国産120円」というように産地を明記した上で両方を並べ、消費者の選択に委ねる動きが広まっている。外国産のほうが農薬を過剰に使用しているとか遺伝子組み換え生産物であるというならば話は別だが、品質に大差が無いとするならば、値段の高い国内産を選ぶメリットがあまり見えてこない。そうなると国内の生産者はますます窮地に追い込まれ、耕地は荒れ果てていくことになる。

 もっともこの種の輸入制限策は根本的な解決にはつながらない。狭い国土と人件費の高い日本の農産物が価格競争で勝てるはずはない。1番目の番組のほうで、山下惣一氏は、工業製品と同じように機械化や流通の簡素化によるコスト低減にもっぱら力を入れてきた過去50年余りの農業生産のしくみそのものを問題視していた。「地産地消」や「身土不二」というような言葉を使いながら、今後は、地域で一体となり、地域で採れたものをその地域で食べるというネット作りの大切さを強調していたが、なるほどと頷けるところがあった。

 食物は、低価格化以上に安定した供給が求められる。現在の時点では、各種の自然災害によりコメが不作の年があっても、外国からの緊急輸入に頼ることができるが、今後も「足りない年だけ輸入すればよい」という自分勝手な論理が通用し続けるとは限らない。ひもじさを共有しようなどという博愛主義の国などどこにも存在しないのである。国内の水田の保護と、農業従事者の確保も緊急の課題となっている。



 1番目の番組ではほかに、「弧食」という聞き慣れないフレーズが登場した。これは文字通り、一人で食べるということ。父親の残業や母親の共稼ぎというやむを得ない事情に加えて、家族が揃っていても「一人で食べたほうが気楽だ」という子供が出ているという。このほか、1/27の日記にも書いたように、食べ物の好みにおけるジェネレーションギャップも大きな問題となっている。

 この「弧食」をもたらした要因としては、学校給食や栄養指導がもたらした若い世代の洋食化のほか、冷蔵庫の登場、インスタント食品の普及、洋室主体の住宅建築も一因になっているのではないかと私は思う。私の子供の頃は、食事の時には茶の間はちゃぶ台を並べて箸をつつく家庭が殆どではなかったかと思う。冷蔵庫が無いので、食べ残しても保存がきかない。「私だけ後で食べる」などと勝手なことを言っても、とっておく場所が無いのだ。また、。茶の間はそのまま寝室になるので、一人だけ夜中に食べると言っても食卓が無い。冷蔵庫やインスタント食品が普及し、小さいながらもダイニングルームが作られることによって、家族全員が食事時間を一致させる必然性が薄らいできたように思える。




 3番目の「ランチメート症候群」というのは、新入社員などが昼食時に同僚と一緒に昼食を取ることができず、そのための不適応から欠勤や退社してしまうような現象のことを言うらしい。ある意味でこれは「弧食」と通じるところがある。家の中では一人だけで気楽に食べられる人も、会社では「みんなと一緒に食べなければならない」というプレッシャーがかかるようだ。もっとも、「本当はみんなと一緒に食べたいのに、仲間に入れてもらえない」ことで悩んでいるのか、それとも「本当は一人で食べたいのだが、同僚がみんな一緒に食べているので自分だけ仲間はずれにされてしまったように見られる」ことで悩んでいるのか、このあたりがよく分からなかった。

 ちなみに、岡大の生協食堂では、「席取り」の横行による無用な混雑(=空いているはずの席に座れない)が問題となっている。少し前に観察してみたところでは、席取りのいちばんの理由は、二人またはグループで食べようとする人が、授業が終わるのが遅い友達の座席を確保しようとしている点にあることが分かった。「一人で食事をすることを避ける学生」と、「誰かと一緒に食事をするのを避ける学生」とどちらが「ランチメート症候群」になりやすいのかは、もう少し調べてみる必要がありそうだ。



 21世紀初頭の日本の課題は、景気回復や少子高齢化問題、温暖化防止などにあると言われているが、それらはみな、問題が発生したあとの対症療法として語られているにすぎない。食生活の問題は、これから先の人間づくりに関わるという点で、「起こってしまった。どうしましょう。」ではなく、問題が発生する前に十分に施策をつくす必要がある。 家族や職場の人間関係から、土地利用、消費、貿易、環境問題に至るまで、政治・経済のあらゆる問題に関わっていることを考えると、21世紀初頭の最重要課題は、ひょっとして食生活全般の見直しにあるのではないかと思ってみたりする。
【ちょっと思ったこと】

別府な一日

 上の写真にもあるように、3/31は朝一番に鶴見岳へ。そのあと、スギノイパレスでのんびりと湯につかり、中国遼寧省雑技芸術団のショーを楽しむ。舞台の真下からは、演技直前の真剣な眼差しや筋肉のこわばりなども目の当たりにして迫力満点の演技を堪能することができた。2000円程度の料金でこのようなショーを楽しめ、しかも別府でも有数の大浴場(この日は男性のほうが大浴場のローテーションにあたっていて、大鋸屑風呂や砂風呂にも入れた)に入ることができて得をした気分。

 余談だが、別府市内の観光施設を利用する時は、まず、SA、観光案内所、料金の安い温泉施設あるいは宿舎を訪れ、割引券を手に入れておいたほうがよい。たいがいは1割引程度で利用できる。鶴見岳ロープウェイなどがそうだが、場所によってはJAFの会員割引のほうが割引率が大きい場合もあるのでこまめにチェックするとよい(会員証のほか、割引券を多めに持参しておくこと)。このほか、上記のスギノイパレスのように、男女の浴場が日替わりとなる温泉や、午前中だけで終了する温泉、露天風呂が混浴になっている温泉などがあるので、事前に問い合わせておくことをオススメしたい。水着を持参したほうがよい場合もある(水着禁止の混浴風呂もある)。