じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

3月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
[今日の写真] 実験室の前の花桃がここ数日の暖かさで一斉に開花した。収穫を目的としていないため、枝は伸ばしたい放題。そのために花付きも良い。



3月23日(金)

【ちょっと思ったこと】

ミールの落下で思ったこと

 ロシアの宇宙ステーション「ミール」が日本時間23日15時すぎに落下、いくつかの破片が火の玉となってフィジー諸島の上空を通過する映像がCNNやTVニュースで報じられた。
  • まず思ったことは、機械というもののの忠実さということだ。人間の発する命令を実行するということは機械自らの破壊をもたらすことになる。もちろん、機械の中にはミサイルのように初めから自己破壊を目的として作られたものもあるが、過去15年にわたって人類に尽くしてきた機械となれば情が移る。最後の自己破壊命令を忠実に実行し、火の玉となって夜空に消えるありさまは人の心をひきつけるものだ。ここでもし機械の反乱などということが起こるとSF映画っぽくなってしまうのだが、いずれにせよ、道具を大切に使い感謝するという心は大切にしていきたいものだと思う。

     もっとも、見方によっては、人工物が蒸気や塵や破片となって地球に帰っただけとも言える。一種の筆供養のようなものか。

  • そもそもミールはなぜ廃棄されなければならなかったのか。『天文年鑑』によれば、もともとは2000年の2月か3月かに廃棄される予定であったが、民間出資のスポンサーがつき、2000年4月〜6月に宇宙遊泳などのプログラムを実施した。どうやらその後は、追加財源が無く、新たなスポンサーもつかなかったようだ。

    しかし、何も燃やしてしまわなくても、もっと高度を上げて、空気抵抗の影響を受けない状態で長期間保存できたようにも思う。あれだけの物体を打ち上げるコストを考えると、宇宙ホテルでも倉庫でもよいから何かリサイクルの道はなかったのだろうか。日本が買い上げ(あるいは借り上げ)ることはできなかったのだろうか。

  • 宇宙船というのは地球から遠く離れた空間にあるものと錯覚してしまうが、実際には地表に張りつくように猛スピードで駈けめぐっているようなものだ。例えば、ミールの最終高度は地上200km前後であった。地球の平均半径6371kmから見れば、その3.1%の高さに過ぎない。仮に地球を半径50cm(直径1m)のハリボテの大きさであるとすると、200kmの高さは1.6cmにすぎない。また、このことから見ても、地球の大気がいかに薄っぺらいものであるかが直感できる。
    ちなみに、昨年に打ち上げられた人工天体の中には、高度35800kmの高さを飛ぶもの多いが、これは通信や気象観測を目的とした静止衛星。静止と言っても地上からみて止まっているように見えるだけのことであって、実際には高速で地球を周回している。軌道が決まっているだけにニアミスもあるらしく、2001年の『天文年鑑』によれば、ひまわり5号のすぐ近く(5〜6km)をロシアのゴリゾント22号が通過した事例が記されていた。

  • 新聞によれば、ミールは1986年の打ち上げ以来、地球を8万6331周したという。1回の飛行距離を大ざっぱに6600km×2×3.14=4万1400kmであると考えると、総飛行距離は約36億kmになる(後日、正確な資料をもとに修正します)。長い道のりのように見えるが、実際は地球と太陽のあいだの距離の約24倍(24天文単位)にすぎない。天王星(19天文単位)には達するものの、海王星(30天文単位)や冥王星(39.5天文単位)には届かない。まだまだ井戸の中の蛙である。