じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] ミモザアカシアの花が咲き始めた。地味だが、この季節には貴重な花だ。



2月13日(火)

【思ったこと】
_10213(火)[一般]森首相の言い訳の問題点

 2/10の朝、ハワイのオアフ島沖で、愛媛県立宇和島水産高校の漁業実習船えひめ丸が、米原潜グリーンビルの急浮上のために沈没、2/14朝の時点で9人が行方不明になっているという。これに関して、事故当時ゴルフ場に居た森首相が、第一報後も3ホールを継続し、また、官邸に戻る前に自宅に立ち寄って着替えたことが問題視されている。

 今回の事故が首相官邸が責任を負うべき危機管理の対象にあたるかどうかは議論の残るところであろうが、ゴルフ場を直ちに離れなかった森首相の言い訳にはいくつか聞き流せない問題があるように思う。2/14の朝日新聞で報じられている首相の「原潜事故への反論」(要旨)の中からそのように感じる部分を抜き出してみよう。
  1. 【第一報が入った時に】しばらく様子を見ようと。いま私はここを離れない方がいい。その方が連絡がとりいいと考えた。あの話で動いたり、離れたりすれば、連絡がとれなくなる。携帯(電話)とかあるから大丈夫と思うが、電話だって輻輳(ふくそう)してたらつながらなかったり、いろいろある。
  2. 秘書官も次の連絡があるまでそこにいてください、その方が連絡がとりやすいと言われ、そのままプレーを続行した。
  3. 「ここをおれが離れても大丈夫だな」と(秘書官に)言ったら「大丈夫だ」と。
  4. このままラフな格好で入ると誤解を受けるといかんと思って、自宅で着替えて出た。
  5. 第一報は(ゴルフ場の)十五番(ホール)で受けた。インから回ったから。そこもちょうど茶店の時。そのまま止まっているわけにはいかない、後ろの方に迷惑かけるから。いろんな方がいるので、次に入ったのは十七番だった。そのまますぐ上がればいいということで茶店に待機していた。あちこち歩いちゃみんなに迷惑がかかる。非常にうるさいゴルフ場なので。
  6. (秘書官からの最初の)連絡は「確実に詳報を全部とって二回目に連絡する時はそこから出ていただくことになるでしょう」ということだった。
  7. 私はリーダーシップをきちっと発揮したと思ってますよ。
  • まず1.だが、一国の総理大臣は、いつ何時たりとも移動しながら指揮をとる必要に迫られている。その首相の携帯電話が、「電話だって輻輳してたらつながらなかったり、いろいろある。」なんていう不確かなものであったらどうするのか。「離れないほうが連絡がとりいい」が真実であるとするなら、大変なことだ。
  • 次に4.の着替えの点だが、緊急事態ならば例えステテコ姿でも官邸に入るべきである。まさか官邸内に着替えが無いはずはあるまい。となると、事態の緊急性よりも、官邸の入口を通過する際の格好を気にしていたということで明らかに資質の問題だ。
  • 5.の「そのまま止まっているわけにはいかない、後ろの方に迷惑かけるから。」とか、「あちこち歩いちゃみんなに迷惑がかかる。非常にうるさいゴルフ場なので。」というのは、人命に関わる問題よりも、ゴルフ場や他のプレイヤーへの迷惑をかけまいとの配慮を優先させた行動と言わざるを得ない。
  • 2、3、6の発言は他者からの連絡を鵜呑みにしているだけの受身的な行動であり、最後の「私はリーダーシップをきちっと発揮したと思ってますよ。」とは矛盾している。リーダーシップを発揮するとは「そこをきちっとしておけ」とか「ちゃんとやっておけ」ではなく、自ら能動的に情報を収集して対応にあたることだ。
 要するに、自分の行動を正当化するためにありとあらゆる言い訳をゴタゴタと並べすぎるのがいけないのだ。今回の事故が首相官邸が責任を負うべき危機管理の対象に当たらないと考えているのなら、その一点だけで押し通せばよい。合わせて、首相という激務に耐えるためにはゴルフという息抜きがゼッタイに必要であることを強調すればそれで済むことだ。もっとも、行方不明者の家族や学校関係者が一刻も早い救出を待ち望んでいる最中に、一国の首相としてのんびりとゴルフを続ける気持ちになれるのかという問題は残るだろうが。

 今回の事故だけに限るならば、首相が動いたところで救出活動が劇的に進むということは無かったと思う。しかし、同じような事故は日本近海でも今後起こりうる恐れが残っている。2/14の朝日新聞によれば、米太平洋軍のデニス・ブレア司令官は日本近海で米原潜が同様の事故を起こす可能性は「ほとんどない」との認識を示し、その理由として「米原潜が日本近海で緊急浮上訓練を行うことはほとんどない」などと説明したというが、「ほとんどない」とは裏を返せば「ゼッタイ無いとは言えない」という意味にもとれる。

 ひとくちに「ほとんどない」と言っても、偶然的に起こる確率がきわめて小さい場合(例えば、隕石が大都市に落下する確率のようなもの)と、人為的に統制可能な部分で最善を尽くす場合では意味が異なってくる。緊急浮上訓練はそれを行わなければゼッタイに起こらない事故であるし、高精度のソナーを使用してある程度防げるという点でも後者に該当している。このような再発防止策について森首相がどういう対応をとれるかに注目していきたいと思う。