じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 窓際の観葉植物(種名不明)の色づきがよくなった。何となく春の雰囲気。



2月1日(木)

【思ったこと】
_10201(木)[教育]生涯学習としての食心理学(1)

 自治体主催の生涯学習大学の講座の私の担当がいよいよ来週金曜日に迫ってきた。講座そのものは休憩を入れて2時間なので、大学の通常の授業よりも20分ほど余計に喋ればよいのだが、聴講生の大部分が60代〜70代ということで非常に気を遣う。

 昨年12/8の日記に書いたように、この講座への出講を依頼されたのは昨年の5月か6月頃のことであった。当時は大学の地域社会連携の重要性が特に叫ばれていた時期でもあり二つ返事で引き受けてしまったわけが、その後送られてきた日程表を見ると、他の回には体験学習や、県内では名の知られた職人さんの講演なども入っていて、私の分だけひどく場違いな印象を持った。そこで、講座全体の流れと受講生のニーズを知るためにこれまで3回分、一生徒として聴講させてもらった。

 聴講生のお年寄りはみな熱心で、講師の語りに頷きながら聞き入っていた。一時的に居眠りをしていた方は約2名ほど。多少の私語はあったが、みな講師の話題に関連したものばかり。それと当然というと失礼かもしれないが、携帯電話の着メロが鳴ることなどいっさい無い。

 この依頼を受けた時に私が予定していたのは「おいしさの心理学」という内容。県内の某大学食文化学部で担当している講義内容をコンパクトにまとめた内容を話せばよいのではないかと思っていた。しかし、その内容というのは主として「味覚の嗜好や嫌悪に影響を与える学習要因」という基礎心理学的な内容と、生活習慣病に関連する肥満、喫煙、飲酒などについてのセルフマネジメントに関する内容だった。しかし、過去3回にわたり聴講した結果、この内容では到底お年寄りのニーズを満たすことができないことが分かった。

 そこで、とりあえず次のような授業計画を考えてみた。
  1. 復習クイズ
  2. 今回の講座で参考になった点
  3. 「受動的な行動」vs「能動的な行動」/「消極的行動」vs「能動的行動」/「させられる行動」vs「したいからする行動」
  4. ビデオ上映
  5. 「受動的なおいしさ」を規定する要因
  6. 「消極的なおいしさ」と「積極的なおいしさ」
  7. 「食べたいから食べる」と「食べさせられる」
  8. まとめ:「食べる」ことと「生きがい」
 要するに、テーマとしての「おいしさの心理学」は変えないが、学習心理学の基礎的な話はとりやめ、高齢者の生きがい論に結びつける形で発展させてみようという内容である。上記の見出しのうち、
  • 「受動的な行動」vs「能動的な行動」というのは、レスポンデント行動とオペラント行動の話
  • 「消極的行動」vs「能動的行動」というのは、「刺激に身を晒す機会を選ぶだけ。刺激の量や質を選択」というオペラント行動と、「自力で働きかける機会を増やす。努力の量と質に応じて結果が伴う」というオペラント行動の区別の話
  • 「させられる行動」vs「したいからする行動」というのは、好子消失阻止の随伴性と好子出現随伴性、あるいは行動内在的強化に関する話
というように、食心理学というよりは行動分析の話を日常用語で置き換えたような内容となっている。これらを通じて、おいしさとは、単なる味のおいしさではなく、自分が能動的、積極的に働きかけ(栽培から調理まで)を行い、その結果として獲得された食物を口にするところにあるという結論に持っていければと考えているのだが、果たしてお年寄りの方々のお口に合う内容になるかどうか.....。