じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 岡大の南側に位置する運動公園の紅葉も今が見頃。この公園は前回及び次回の岡山国体の会場である。



11月19日(日)

【思ったこと】
_01119(日)[心理]介護・医療・高齢者福祉関連の研究発表会:「実証性」や「一般性」よりも両者の「批判的思考」養成こそが大切

 岡山市内のホテルで介護・医療関係者による研究発表会があり、私も出席した。会場にはざっと見渡して150人近い人々が集まり大盛況。

 発表の内容は、老人保健施設の環境整備問題、グループホームにおける取り組み紹介、入所者の外出や旅行補助など多岐にわたっていた。心理学関係の地方学会と異なり、現場のナマの声が聞けるという点で大いに参考になった。

 研究発表の中には、心理学の厳密な方法論から見ると、実証性、一般性、客観性、再現可能性などの点で甘いなあと思われるものが多々あった。しかし、もともと医療・福祉の現場で得られた実例というのは、それぞれのケースに著しい個体差がある。実証性を重んじるばかりに実験的方法を厳密に適用するというのは、体調不良を訴える患者を検査漬けにして何がなんでも病気の原因を探るようなもの。やっとのことで原因が癌であると実証したものの、患者は検査結果を待たずに死亡してしまった、ということになりかねない。それよりも、現場のスタッフが、現状の人的資源や設備を最大限に活かして最善の対応をとることのほうが大切であり、実証性や一般性は目的ではなく結果として追求されるべきものではないか、という印象を受けた。

 研究発表というのは、提供される情報が受け手に活用されるものでなければ意味がない。数学、物理学、化学などであれば、実証性や一般性のある発表こそに価値を見出すことができる。しかし、医療現場のようにあまりにも多様な要因が同時に関与する場面では、個別の事例から一般性を引き出そうとしても限界があるのは当然。また、仮に一般性が証明されたとしても、それを別の事例に機械的に当てはめることは殆ど不可能と言える。

 事例報告が他者に与える情報にもいくつかのステップがあるように思う。
  1. 「よかったです」型の報告。聞き手は、ああよかったねえ、と共感する。
  2. 「がんばっています」型の報告。聞き手は「あの人たちもがんばっているんだから私たちも頑張ろう」と元気づけられる。
  3. 報告に含まれている情報を一定の概念的枠組みに基づいて一般化し、「うちでも今度はそれを試してみよう」と活用する。
  4. ある理論や法則に一致する結果についての報告。
  5. ある理論や法則を否定する結果についての報告。
このうちの1.と2.は、ホームルームでボランティア活動の体験談を述べあうようなものであり、お互いを励ますことには繋がるが、発表内容自体にはあまり情報的価値はない。4.のケースはいわゆる追試というヤツで、法則の及ぶ範囲を拡大するか、確信の度合いを高めた時に価値がある。また、5.は最も重要な情報であり、これが確認された場合には理論の再構築を迫られることになる。今回のような現場からの報告の場合には3.あたりのレベルが要求されることになると思われた。

 3.のレベルでは、発表そのものの絶対的な実証性や一般性にこだわる必要は必ずしもない。それよりも聞き手側において、他者の経験から何が活用できるのかを汲み取る力が求められる。これは、成功あるいは失敗事例の原因についての思い込みや固定的な見方を捨て、すべてをクリティカルな目で受け止めていく姿勢であるとも言える。

 例えば、TVの健康情報提供番組では毎回のように「タマネギがいい」、「人参がいい」、「大根がいい」、「キャベツがいい」というように、あれもよいこれもよい型の情報提供をするが、それらを全部受け入れていたのでは胃袋がいくつあってもたまらない。また、それぞれの野菜の栄養効果が100%実証されるまではいっさい口にしないというわけにもいくまい。結局は適度に食べながら、自分自身にあった野菜の種類と量を調整していくしかあるまい。

 自然科学の世界では方法論の厳密性がしばしば強調されるが、ナマの体験を重視する世界にあっては、発表内容自体よりも、送り手(発表者)と受け手(聴衆)双方の批判的思考の目を養う教育に力を入れることのほうが大切ではないか、とふと思った。
【ちょっと思ったこと】

数が少ないと困るもの

 上記の研究発表会で行われた特別講演会の中で、下のような表が紹介された。尾道市在住の80歳以上の男女147人(男54人、女93人)についてのデータということだが、各コラムの数値は何を表すか分かりますか?
  20以上 10〜19 0〜9(A) 0〜9(B)
仕事 90% 79% 68% 18%
自立歩行 100% 92% 89% 46%
日常生活自立 95% 88% 89% 18%

正解は.......















残存する歯の数 だそうだ(「0〜9」のあとの「(A)」と「(B)」の違いは、総入れ歯の有無だったと思う)。因果関係をどう見るかは難しいところだが、とにかく、歯が丈夫であるということは健康のバロメーターである。

 講師の歯科医の先生は、口の役割として「摂食、咀嚼、燕下、呼吸、発音」の5つを挙げ、口から食べることが全身のリハビリになると強調しておられた。現状では、訪問歯科医療はきわめて限られており、介護保険により歯科衛生士が訪問できる回数も1回500円、月5回に限られているとか。それゆえ、被介護者は、歯科衛生よりも入浴など別のサービスを選ぶことになりがちだという。

 しかし、どんなに豪華な食べ物であっても、自分の歯で噛まなければ本当の美味しさは味わえない。歯科医の間では「8020」運動というのもあるそうだ。これは80歳の時点で自分の歯を20本残すという意味。スウェーデンではこれが達成されているのに対して、日本では8本程度だとか。平均寿命の長さだけでは長寿国日本を誇れないことが分かった。

「80歳でも20歳と同じようにおいしい食事を食べよう」という意味でも使われているとか。このほか岡山では「5525」運動(55歳で25本の歯を残そう)というのもあるとか。



20世紀最後の大相撲

 夕刻、「今世紀最後の大相撲」を見た。千秋楽結びの一番が「ハワイ・オアフ島出身」力士どうしの対戦というのは、大相撲500年?の歴史を語るのにふさわしい取り組みとも言えるが、ここはぜひともミッキーの出番が欲しかった。
【スクラップブック】