じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] フンザから中パ国境に至る道で見た、ルリタマアザミに似た花。数年前であれば「だんご三兄弟」を想像させたかも。こちらのアルバムにも同一の写真をアップしてあるが、愛らしさに惹かれて再掲させていただくことにした。



9月8日(金)

旅行中にちょっと思ったこと(3)】

パミール横断旅行で役に立った言語:コミュニケーションは、相手の分かる易しい言葉探しから

 パキスタンでは、フンザ出身のガイドさんと何度か個人的に話をしたことがあった。使う言葉は英語だが、NHKラジオ「英会話」などに出てくるような高級な会話表現は使わない。ネイティブスピーカー以外の人たちとしゃべる場合はどこでもそうであるように、お互いに相手の知っている単語を探しながらコミュニケーションをはかるということがカギになる。自分の言いたいことが伝わってないと感じたときは、すかさず、キーとなる単語を類義語に置き換えてみる。これを何度か繰り返すと「ああ、分かった」ということになる。

 パキスタンやインドの人は、いっぱんに「r」の音を強く発音する傾向があるようだ。仏教彫刻の説明を聞いているときに「この像はゴールドのスタイルだ」などと言っておられたので「You mean God? Or Gold?」と聞き返してみたら、じつは「Guard」であるということが分かった。同じく岩絵の説明のところで、「サンガ、サンガ」と言っていたが、こちらのほうは仏教用語らしく類義語が見つからず、ついに分からずじまいだった。「三行」のことなのだろうか。

 今回の旅行では中国語の旅行会話の本を持っていった。かつて中国シルクロードを旅した時に結構役立った本である。しかし、実際には、ガイドさんも、ホテルの土産物店の店員さんも、レストランのウェイトレスさんも、みな流暢に日本語を話したため、中国語を使う機会は殆どなかった。いつぞや、中国語で身を立てようと北京に留学した日本人学生が、現地では中国語よりも英語のほうが大切であると実感し、英国留学に切り替えたという話を聞いたことがあるが、それも頷けるところがある。もっともいずれ中国が日本以上の経済大国になれば、逆に日本人が中国語を学ばなければならない時代がくるだろう。

 同じ漢字文化の国なので、簡体字、それと日本語と中国語で意味の異なる熟語をある程度知っていれば、街角の表示はかなり意味が通じるものだ。記憶に頼っているので確かなことは言えないが、20年近く前に来たときと多少表現が変わった熟語もあるように感じた。例えば、入口を意味する言葉は「進口」というように書かれていたと思ったのだが、今回はそのまま「入口」と書いてある案内板を目にした。トイレは昔は「厩所」と書かれていたように思ったが、今回は「手洗処」というような表示を見かけたような気がする。いずれも記憶が不確かなので何ともいえない。
【ちょっと思ったこと】

「夕焼けこやけ」の疑問

9/9の朝6時直前にNHK総合で「夕焼けこやけ」の童謡(中村雨紅作詞 草川信作曲)をやっていた。作詞者がいまの東京八王子市ご出身であることを初めて知った。世田谷生まれの私の記憶にもあるが、秋から冬にかけて関東平野で見られる夕焼けには格別の郷愁が漂う。ふるさとへの思いを込めて作った歌詞の冒頭に「夕焼け」を持ってきたのも頷ける。

 この歌でふと思ったのだが、「夕焼けこやけ」の「こやけ」とは何を意味するのだろうか。太陽の沈んだあと暗くなる前に西の空に赤みが残るのが「小焼け」だろうか。それとも黄道光のことか。「モミジ」の童謡で「濃いも薄いも」を「小芋、うす芋」だと思いこんでいたという話を聞いたことがあるが、この「こやけ」についてもいろいろな思いこみがあるに違いない。正確な情報をお持ちの方は、掲示板に情報をいただければ幸いです。

 この歌のメロディはハ調で歌った時に「ファ」と「シ」が一度も現れない完璧な「ヨナヌキ音階」になっている。「ヨナヌキ音階」が演歌を含めて日本的な雰囲気をもたらすのかについては諸説があるが、「ヨナヌキだから日本的」なのではなく「子どもの時、ヨナヌキの童謡ばかり聞いて育ったから、そのように条件づけられた」というのも有力であったと思う。とすれば、この歌など条件づけのルーツの代表格というところか。

 ここからは不確かな話になるが、番組では二番の歌詞まで紹介していた。「子どもが帰ったあとには山に?大きな?円い?月が輝き、小鳥が夢を見ることにはそらにはキラキラと金の星がある」というような意味内容だったと思う。しかし、もし、出ていた月が満月であったとすると、その日は一晩中明るく照らされてしまい、キラキラ星が光る夜にはならないような気がする。そういう無粋なツッコミは郷愁をぶちこわすだけか。

今年の中秋の名月は満月の2日前

 月の話題をもうひとつ。今年の中秋の名月は9月12日となっている。興味深いのは、この日の月齢14.1であって満月ではないということだ。天文学上の満月は、9月14日の午前4時37分であるから、2日ほど早いお月見ということになる。

 こうした不一致は今年だけのことではない。昨年は9月24日が中秋の名月で、翌25日が満月。1998年は10月5日が中秋の名月、翌10月6日が満月となっていた。しかし今年のように2日もずれるというのは珍しいのではないかと思う。

 今年はまた、ずいぶん暑いうちの中秋の名月になりそうだ。1998年の2月13日や10月2日の日記に書いたように、中秋の名月は何が何でも太陰暦の8月15日であると定められている。旧暦では19年に7回の割合で「うるう月」が挿入されるため、毎年同じ季節にお月見をするとは限らない。じっさいには太陽暦の9/7から10/8までの範囲で変動するということなので、今年はかなり早いほうにずれ込んでいると言えよう。

 もとの「2日のズレ」の話題に戻るが、月の満ち欠けを基準にしているはずの旧暦で「15日」が満月とならない理由は、おそらく月の軌道が楕円であったり、地球の公転軌道との間に傾きがあるためにに起因していると思う。それゆえ、月齢(月と太陽との視黄経の差が0度になった瞬間からの日数)のほうも月の満ち欠けとは完全には対応しない。それどころか、満月から満月までの日数すら一定にはならないのである。ためしに手元の天文年鑑で、今年の3、6、9、7月、12月前後の日数を調べると
  • 【3月】新月3月6日14時17分、満月3月20日13時44分、次の新月4月5日3時12分。
  • 【6月】新月6月2日21時14分、満月6月17日7時27分、次の新月7月2日4時20分。
  • 【7月】新月7月2日4時20分、満月7月16日22時55分、次の新月7月31日11時25分。
  • 【9月】新月8月29日19時19分、満月9月14日4時37分、次の新月9月28日4時53分。
  • 【12月】新月11月26日8時11分、満月12月11日18時3分、次の新月12月26日2時22分。
以上のデータをもとに、新月〜満月(●○)、満月〜新月(○●)、および、新月から次の新月になるまで(●○●)の時間を計算してみると、
  • 【3月】(●○)13日23時間27分、(○●)15日13時間28分、(●○●)29日12時間55分。
  • 【6月】(●○)14日10時間13分、(○●)14日20時間53分、(●○●)29日7時間6分
  • 【7月】(●○)14日18時間35分、(○●)14日12時間30分、(●○●)29日7時間5分
  • 【9月】(●○)15日9時間18分、(○●)14日0時間16分、(●○●)29日9時間34分
  • 【12月】(●○)14日9時間52分、(○●)14日8時間19分、(●○●)29日18時間11分
となっておりこのことが裏付けられる。中秋の名月と満月の間に2日のズレが生じたのは、旧暦の誤差というより、新月から満月までの時間が特に長いことに起因しているようだ。それから上記で、3、6、9、12月に加えて7月のデータを入れたのは、ちょうど7月16日に皆既月食、7月2日と31日には部分日食があるので何か特徴ある数値になるかと思ったためであったが、特にピッタリの値が得られるというものでもなかった。

 余談が、最近では理科教育の中で地学・天文・気象のウェイトが低くなっていると聞く。しかしここに取り上げた話題などは小中学生が楽しみながら取り組めるのではないかと思う。物理化学の仮想の実験で公式を当てはめさせる訓練よりも、身近な月や足下の石ころや天気の変化なんかに目を向けさせたほうがイキイキとしてくると思うのだが。
【スクラップブック】