じぶん更新日記1997年5月6日開設Y.Hasegawa |
フンザのホーパル氷河近くの休憩所に植えられていた反魂草(ハンゴンソウ)。このあたりの民家の塀沿いでも見かけた。特別の用途があるのだろうか。 |
【思ったこと】 _00907(木)[心理]法律か道徳か宗教か? あるいはそれに代わりうるものか 9/6の各種報道によれば、自民、公明、保守の与党三党は多発する凶悪犯罪に歯止めをかけるため、刑罰対象年齢を現行の「16歳以上」から「14歳以上」に引き下げることで大筋合意したという。こうした法律による対処とは別に、道徳教育を強化することで非行や犯罪を防ごうという動きもある。 道徳や倫理の教育による対策も、法律による対策もそれぞれ議論のおこりやすい話題ではあるが、そもそも、それらはどういう特徴をもち、どう使い分けられていくべきものなのだろうか。また、道徳・倫理にも法律にも頼らずに世の中を改善していくことは不可能なのだろうか。 ウェスタン・ミシガン大学のマロット(R. W. Malott)教授は『Elementary principles of behavior』という共著書の第26章の中で次のように述べている。なお日本語の行動分析の教科書として知られる『行動分析学入門』(杉山ほか、1998)はこの本の第2版を元に日本語版として出版されたものである。原書のほうは現在第4版まで刊行されているが、ここでは第3版を参照してマロットの主張の一部を要約したいと思う。【 】内は長谷川によるコメント。
マロットの本では、道徳・倫理による制御は大部分、宗教による制御と同じ意味で論じられている。欧米ではそれだけキリスト教が生活に密着したものになっているためであろう。 昨年日食見物のために訪れたイランは厳格なイスラム教の国であったが、都市部では交通事故や無理な割り込みの場面を何度も見た。宗教的制御は交通安全にはかならずしも有効に働いていないような印象を受けた。今回パミール横断で訪れたパキスタンもまた「イスラム共和国」の代表格であった。パキスタンは私が訪れた地域に限っては治安がよかったという印象を受けているが、今年3/17の朝日新聞では「ラホール地裁は子ども100人を殺して遺体を酸で溶かしたとされる被告に死刑を言い渡した。被告は被害者の前で絞首刑になり、その遺体は100に切り刻んで酸で溶かされる。」などという凶悪事件のニュースも伝えられているので、必ずしも宗教が平穏をもたらしているとは言えないように思う。 いまの日本では、神や仏の罰はほとんど無力化しているように思う。正確な文言は忘れたが、東京・世田谷のある神社の入口に、 境内で起こったトラブルや事故については、当神社はいっさい責任を負いません。というような立て札があった。境内の様子から判断すると、この場合の「トラブルや事故」というのは、夜間境内で起こりうる痴漢、恐喝、その他非行一般を意味するようだが、神社が自分の境内の中のことに責任を負えないというのはちょっと情けない気がする。ホンマに神の力を信じるのであれば、ここはひとつ、 当神社の神聖な境内で痴漢、恐喝、その他、犯罪や非行と見なされる行為をした者は必ず、口には出して言えないような恐ろしいバチがあたります。ぐらいの宣言を出してもよいのでは無いかと思う。 宗教に頼らない道徳・倫理的制御の例としてマロットは「secular humanism」を挙げているが、人類の滅亡を「地獄」に見立てて地球環境の保護や核兵器廃絶を訴えるのも同様ではないかと思う。この場合、本当に人類が滅亡するのかどうかという科学的議論は必要ではない。そういう地獄の存在を「信じる」ことで、身近な問題に取り組む行動を動機づけることが重要なのである。 法律、道徳、宗教といったルールに頼らない方策としては、「憎しみ」や「嫌悪」をもたらす条件づけという手段も考えられる。例えば、ゴミのポイ捨て、いじめ、恐喝、暴走などの行為を目撃した時に憎しみや嫌悪がわき上がってくるような条件づけを試みることである。こうすればルールが守られなくてもそういう行動は忌避されるようになる。 こうした情動的な条件づけは、戦争の時に支配者がよく使う方法である、敵国の民族自体に憎しみをいだくよう、あらゆるメディアを使って条件づけるというもので、ナチスがユダヤ人に対して行ったのがまさにそれにあたる。それが徹底されると、ドイツ兵士は、命令に従うという理由ばかりでなく、憎しみをいだきながらユダヤ人を虐殺するようになる。このように使い方を間違えば恐ろしい方法であるが、絶対にあってはならない行為を抑止するためにはある程度有効であるかもしれない。 もっとも、月並みな言葉になるが「憎しみからは憎しみしか生まれない」という可能性もある。やはり、時間はかかっても、社会的に望ましい行為にあこがれるような条件づけを主体とし、憎しみを生まない人間を作っていくことのほうが結果的に大きな前進につながると考えるべきかもしれない。 |
【ちょっと思ったこと】
|
【旅行中にちょっと思ったこと(2)】
パミール横断旅行で役に立ったもの、立たなかったもの 今回は、旅行に役立ったものと、持ってこなくてもよかったと思ったものをリストアップしてみたい。
|
【スクラップブック】
|