じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] 病室のヒマワリ。妻が畑の隅に咲いていたものをいけてくれた。そういえば入院以来、太陽にあたっていない。



8月27日(日)

【思ったこと】
_00827(日)[_008PC]通るだけで価値のある峠


下記の内容を加筆修正して、こちらのエッセイに再掲しております。そちらのほうでお読みいただければ幸いです。

 パミール横断旅行のうち、フンザから中パ国境のクンジェラブ峠を越えて中国側の最初の町タシクルガンに至るまでの景色をこちらにアップした。

 この部分は景色の美しさもさることながら、国境を越えるということ自体に相当の価値がある。かつて外国人に通過が認められていなかった時代には、新聞やテレビの取材チームは、中国側は北京経由、パキスタン側はイスラマバード経由で別々に入国してつなぎ合わせて報告したものであった。また、観光客が自由に行き来できるようになった最近でも、夏になると集中豪雨、それに伴う雪解けの洪水によってタシクルガン〜カシュガルの道路が崩壊することがある。となると、カシュガル方面からの峠越えはストップ。パキスタン方面からも、中国側ガイドが到着しないために引き返す羽目になる。昨年催行された同じコースのツアーは、タシクルガンで3泊したのちやむを得ずにパキスタンに引き返して帰国したという。実は今回の場合も、7月下旬の洪水により道路が不通状態であるとの知らせを受けた状態で出発。パキスタンのガイドさんから「Good news! China road opened.」という第一報を受け取ったのは、峠越えの2日前、ギルギットのホテルで昼食をとっている時であった。もっとも、道路が開通してもガイドが来られなければ旅行は続行できない。最終的にカシュガルまで行かれると確信したのは、前日夜、中国側からのツアーがフンザに到着したという事実が伝えられてからであった。

 フンザ(カリマバード)から峠までは、切り立った峡谷や道路の間近に迫る氷河もあれば、上フンザの小さな村なども転々としていてめまぐるしく景色が変わる。そんななか、ルリタマアザミ風の花(アルバム写真の1、3、4、8)や、野生のラベンダー(アルバム写真の9)が目をひいた。アルバムの説明にも書いたが、ルリタマアザミ風の花はイラン南部でもよく見かけた。どなたか名前をご存じでしたらお教えください。

 パキスタン側の出国事務所があるソストには現地時間の朝10時頃到着。ここで、イスラマバードから乗ってきたバスから、国境通過専用のバスに乗り換える。ガイドさんともここでお別れとなった。また、ここから中国側のタシクルガンまでは、パスポート上は、「パキスタン出国済み、中国側未入国」の状態で移動することになる。

 ソストからクンジェラブ峠に至る途中で、ランチボックスを開けて昼食をとった。かつてインドヒマラヤ・ザンスカールのトレッキングをした時に訪れた場所(写真11)とよく似ていて驚く。標高もどちらも富士山頂上程度で同じぐらいではなかったかと思う。

 ゲリラの襲撃を受ければひとたまりもないような高い崖に挟まれた峡谷をしばらく通過すると、急に山肌が開け尾根筋に出る(写真12〜14)。ジグザグの道を上り詰めたところに峠があった。

 国境には、パキスタンと中国の国章の入った白い石碑が立っていた(写真15、22)。「パキスタン」と書いてある手前がパキスタン、「中国」と書いてある手前が中国領内ということになる。このあたり、日本の道路案内板とは逆になっているところが面白い。日本の高速道路であれば、例えば、山陽道を西に進んで「岡山県」という看板があれば、そこから先が岡山県。手前は兵庫県だからだ。

 石碑の周辺には両国の警備員の姿は全く見かけなかった。世界中の国境がこうであったら戦争など起こらないのに.....。

 この石碑から中国方面数十メートル先のところで青色の面白い標識を見かけた(写真24)。「車は右側へ」と指示したもののようだ。かつてイギリスの統治下にあったパキスタンでは、車は日本と同じように左側通行になっている。右側通行の中国の道路とと交差する時に危険はないものかと思ったが、これだけ交通量が少なければ正面衝突など起こるまい。

 国境から数100m進んだ所には中国人民解放軍の検問所があり、「ミスター中国」と呼べそうな、ぱりっとした風采の背の高い兵士が車内に入ってきて「Welcome to China!」と挨拶し、個人ごとにパスポートをチェックした。入国手続が済んでいないため、ここからタシクルガンまではノンストップ。写真撮影はOKという話だったが、車が揺れている上に雨模様であまりよい写真は撮れなかった。険しい峡谷の続くパキスタン側とは対照的な高原風景が続く(写真25)。写真には撮れなかったが、プレーリードッグのような動物が各所で巣穴から這いだして様子をうかがっていた。
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