じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] サルスベリが見頃になってきた。




7月30日(日)

【思ったこと】
_00730(日)[教育]最近の大学教育論議でおもふこと(31):多元的で厳格な成績評価(前編)

 岡大では「7月31日まで授業、8〜9月を夏期休業」とする完全セメスター制が昨年度から実施されている。テレビでは「夏休み真っ最中」などと言っていたが、岡大では8/1からやっと正規の夏休みに入るわけだ。

 ただし、暇になるのは学生だけ。教員はこれから8月中旬(成績をオンライン入力する場合は8月末まで)のあいだに、試験やリポートの採点に追われることになる。

 そんななか、このところ全学レベルで「多元的で厳格な成績評価」が強調されるようになった。その骨子は
  • 「期末試験や期末リポートだけ」というような1回の試験だけで成績を評価することはしない。小テスト、授業中の発表、口答による解答、出欠など多様な方法を組み合わせることとし、これらの評価と期末試験成績の比率を例えば4:6というように一定の基準を定めてシラバスに明示する。
  • 学生に対しては、評価基準、模範解答、得点分布、評価講評などを示す。
となっており、すでに一部の学部では教授会決定により実施されている。

 このほか
  1. 採点した答案、リポートは必ず学生に返却するべきだ。
  2. 追試験や再試験が教員の個人判断で実施されたりされなかったりすることが無いように、統一基準を厳格に定めるべきだ。
  3. 初級外国語の場合は担当教員によって不公平が生じないよう、得点分布を比較すべきだ。
  4. 具体的な到達基準が明確でない科目(人文系など)では、相対比較による採点もやむを得ない。
  5. 「60点で合格」はそれでよいのか。絶対に学ぶべきことが明確であるような科目は、運転免許試験と同じように「90点で合格」としてもよいのではないか。
  6. 現在の議論は履修登録の上限を定めて平均点を上げさせるように指導する方向に進んでいるが、
    1. レベルの異なる科目を多様に用意し、評価は「合」または「否」だけとする。
    2. 学生は、できるだけ上レベルの単位を取得する。
    3. GPAのような平均点ではなく、どれだけたくさんの単位を取得したかを評価する。
    という方式も比較軸として検討したほうがよい。
といった意見もよく耳にする。

 こうした議論が高まってきたのは、直接的には、大学審議会98年10月答申「―競争的環境の中で個性が輝く大学―」の第1章2の「高等教育改革進展の現状と課題」の中で
.....一般に教員は研究重視の意識は強いが教育活動に対する責任意識が十分でない,授業では教員から学生への一方通行型の講義が行われている,授業時間外の学習指導を行っていない,学期末の試験のみで成績評価が行われている,成績評価が甘く安易な進級・卒業認定が行われている,教養教育が軽視されているのではないかとの危惧がある,専門分野の教育が狭い領域に限定されてしまう傾向があるなど,教育内容と教育方法の両面にわたり多くの問題点が厳しく指摘されている。また,学生によっては,授業に出席しない,授業中に質問をしない,授業時間外の学習が不十分である,議論ができないなど,学習態度とその成果の両面について問題点が指摘されている。
とされ、その改善策の一環として第1章3の「21世紀初頭の大学像」の中で
学生の卒業時における質の確保を図るため,教員は学生に対してあらかじめ各授業における学習目標や目標達成のための授業の方法及び計画とともに,成績評価基準をシラバスなどに明示した上で,厳格な成績評価を実施すべきである。成績評価基準は各授業科目を担当する教員が授業の目的等に沿って適切に定めるべきものであり,学期末の試験のみでなく学生の授業への出席状況,宿題への対応状況,レポート等の提出状況等,日常の学生の授業への取組と成果を考慮して多元的な基準を設定することが望ましい。
と指摘されたことを受けたものであるが、根本的には、これまで「単位認定権は担当教員の不可侵の権利である」として踏み込めなかった領域にFDのメスを入れることをめざした自己改革の流れの中で進められていくべきものである。それゆえ、
  • そもそも何のために成績評価するのか
  • どのような評価システムが勉学の向上に有効と言えるのか
といった根源的な議論から出発する必要がある。時間が無くなったので次回以降に続く。
【ちょっと思ったこと】
【今日の畑仕事】

ミニトマトを収穫。雑草取り。水撒き。
【スクラップブック】