じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] ザクロ三兄弟(←ちょっと古い?)。今年は豊作の年にあたる。




7月19日(水)

【思ったこと】
_00719(水)[教育]最近の大学教育論議でおもふこと(29)目標見えぬ大学教育?(その7):「教養教育再建」や「早期卒業」よりも多様な副専攻制の導入を

 7月8日〜9日に行われた第37回大学教員懇談会から10日余りが過ぎた。有馬朗人・参院議員(元東大総長、元文部大臣)による基調講演のテーマが「教養教育の再建」であったことにも表れているように、この懇談会では今後の教養教育のあり方が重要な課題の1つになっていた。

 そのいっぽう、岡大の一部の学部を含め、4年制大学を3年間で卒業するという「早期卒業制度」をすでに実施もしくは導入を検討する動きが出てきている。19日に行われた教育改革国民会議第三分科会においても、「大学院の定員を大幅に増やし、原則として大学三年終了時に進学するようにする」ことを今後の提言の骨格の1つとしてまとめられているという。

 このように、「教養教育」と「早期卒業」は今後の大学改革の合い言葉としてもてはやされるようになってきたが、私はいずれに対しても今ひとつ納得できないところがある。
  • 教養部が廃止された今、それを充実させるにしても人的資源に限りがある。講座費の削減によって科研費を得るためにますます教育活動より研究活動を重視せざるをえない教員は、「全学出動」というノルマを課せられただけで、果たして教養教育の充実のエネルギーを注ぐことができるだろうか。
  • 教養科目の受講が卒業要件を満たす単位数として規定されている限りにおいては、学生としてはそれをパスすることが最大の関心事になりがちだ。TVゲーム風に言えば、「教養科目ダンジョン」として「単にクリアすべきもの」にすぎない存在になってしまう。早期卒業制が導入されればなおさらのこと。早期卒業制の場合には、必要単位を3/4の期間で優秀な成績でクリアしていかなければならないため、最小のエネルギーで効率的に「優」がとれる科目に関心が向けられる恐れがある。
  • 大学院進学を前提とした早期卒業ならともかく、学部卒だけで社会に出る者にとって1年早く卒業することにどういうメリットがあるの今ひとつ分からない。3年で卒業させてしまうことは在籍者を減らすことにも繋がるが、少子化が進む中でそれが大学の経営上のメリットをもたらすようにも思えない。


 こうした「合い言葉」に代えて、最近ますます重要性を感じるようになったのが「副専攻制」の導入である。ここでいう副専攻とは、例えば「心理学主専攻、英文学副専攻」というように、3年進学時に一定基準以上の成績をおさめている優秀な学生に、所属している履修コース内の必修科目のほか、別コースの所定の科目を16〜20単位程度履修させ、要件を満たした者を副専攻履修者として認定し、卒業証書にもそのことを明記するというものだ。従来、外国語科目などは教養部の必修単位として課せられてきたが、そういう必修要件は「TOEIC○○○点以上」という程度にスリム化し、代わりに意欲と能力のある学生に限って「実践○○語学副専攻」という形で4年間かけて教育を行う。これなら就職先からも広く歓迎されるはずだ。このほか、副専攻の特徴としては
  • 例えば「理学部生物学専攻、文学部倫理学副専攻」というように、別の学部からも副専攻も受け入れる。もちろん受け入れにあたっては、3年進学時に一定基準以上の成績をおさめていることが前提。
  • 総合大学では学部間のバリアフリー化が求められているが、副専攻の受け入れ基準をきっちりすれば、文学部等の教養部化は避けられるし、副専攻受け入れ学生数が示されることで全学への貢献も明確になる。また、これまで、自由科目の卒業要件を満たすためだけに他学部の開講科目を無節操に受講するという風潮が見受けられたが、副専攻の受講科目を体系化し、受け入れ基準を明確にすることでそうした風潮に歯止めをかけることができる。
  • 単に主専攻の簡略版としての副専攻ではなく、履修コースとは別の多様で魅力ある内容を設定する。例えば「創作学」とか「実践統計解析学」、「実践情報科学」など。
  • クォーター制が実現した場合には、このうちの2クォーター(3、4年それぞれで1クォーターずつとすることが望ましい)を使って短期留学を認める。指導教員の指導を受けつつ、留学先の受講内容が一定の要件を満たした場合には副専攻として認定する。
  • 福祉関連の科目を履修し、一定期間ボランティア活動に積極的に参加した場合も、「実践福祉学」といった形で副専攻として認定する。
 概略はそんなところだ。副専攻制導入のメリットは、
  • 従来の教養科目は卒業要件として義務的に課せられていた。これに対して副専攻は、学生が能動的、主体的に選べるので学習意欲が高まる。
  • 単一の学問分野に専念することに迷いを感じている「シゾフレ」型の学生に対して、全く別の分野で可能性を開くことができる。
  • 社会的にも、専門以外何も知らない学生よりも、複数分野に強いマルチ人間型の学生のほうが求められている。マルチ人間型であれば、反社会的宗教団体にマインドコントロールされる恐れも少ない。
  • 副専攻の指導教員は同時に大学院生も受け入れられる。「教養部再建」となれば一定の「教養部専任教員」ポストを作る必要があるが、副専攻を担当する教員は大学院や主専攻の学生も指導できるので、そういう心配がいらない。
 時間が無くなったので、書き足りない点は後日補足することにしたい。
【ちょっと思ったこと】


【今日の畑仕事】

ミニトマト、ジャガイモ、スイートコーン、イチゴを収穫。サツマイモの刺し芽。
【スクラップブック】

  • 岡山地方は連日36度を超える猛暑。15時までの最高気温は、7月19日が36.2度、20日が36.4度(但し、15時以降に36.5度まで上がった)。20日には、高松で観測史上2番目にあたる37.6度を記録している。夕刻に激しい雷雨があり、カラカラの花壇や畑には恵みの雨となった。