じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] ネジバナ。時計台前の芝地で、今年もまたネジバナがたくさん咲く季節になった。




6月30日(金)


【思ったこと】
_00630(金)[教育]最近の大学教育論議でおもふこと(18):「教育能力」重視の採用・昇格人事

 文部省の大学審議会は30日、日本の大学の運営を改善し、「世界標準」に近づけるための方策を盛り込んだ中間報告をまとめ、文部省に提出した。7/1の朝日新聞記事によれば、その中で、「学生を教育する能力」を採用や昇格の重要な判断基準にすることが強く求められているという。

 研究所と異なり、入学者から授業料をいただき、ちゃんと教育して社会に送り出すという使命を担っている以上、教員の教育能力が問われることは当然のことと言えよう。今後、教育業績を考慮するにあたって、公正さをどう保つかが課題になるものと思う。

 これまでの大学教員の採用・昇格人事ではほぼ研究業績一本槍と言ってもよい形で評価が行われてきた。もっともこれは教育業績を軽視してきたためではない。教育業績が公平に評価されにくく、ヘタをすれば、研究業績のすぐれた候補者の代わりに研究業績が少ない候補者のほうを採用する口実に用いられる恐れがあることが危惧されたためであったと言ってもよいかと思う。

 しかし今回の報告で重視されている教育能力というのは、単純に教歴というような年数の経過を重視せよということではない。むしろ、毎年同じ教科書、同じ板書で工夫もなく授業を進めるような教員はふさわしくないと見なしている。では、教育能力はどうすれば公正に評価できるのだろうか。
  • 毎年、同種の教育分野の中で、学生の履修希望が多い授業を開講している教員は、とりあえず「教育能力が高い」ことの必要条件を満たしていると考えてよいだろう。但し、それだけでは、何でも「優」を与える教員、出席をとらずリポートだけで成績評価するような授業に希望が集中する恐れがある。人事委員会として評価する場合には、受講学生へのインタビューや、抜き打ちの授業参観などを実施する必要があるだろう。
  • 同じ講座の中で、卒論生や修論生がたくさん集まる教員も、「教育能力が高い」ことの必要条件を満たしていると言える。もっとも、この場合も、完成した卒論や修論のレベルが第三者から高い評価を受けることが前提となる。
  • 研究論文や専門書のほか、教科書や一般向け啓蒙書も評価の対象となるべきだ。この場合、単なる発行部数とか著書数ではなく、第三者からどういう書評を得ているか、内容にどういうオリジナリティがあるのかが評価されなければならない。
  • テストの採点内容、リポートへのコメントなどをちゃんとフィードバックしているかどうか、学生の質問に答える機会を設けているか、授業時間外の予習・復習への指導、さらに詳しく学びたい学生への参考文献の紹介などが適切に行われているのかなども重要。
 このほか、プリゼンテーション、発音の明解さ、声の大きさ、板書の字の読みやすさ、(少人数の場合は)受講生への問いかけと応答の活発さ、私語の制止、居眠り防止などで適切な工夫が行われているのかということも1つのポイントになるとは思う。ただ、小学生相手の授業ではないのだから、アニメを多用するとか、時々ジョークを飛ばして場の雰囲気を和らげるといった技巧面に凝りすぎることはどうかと思う。単調な講義であっても、価値のある内容が伝授されているならば大学の授業としてはそれで構わないと思う。

 大学では、学生が主体的・自主的に学ぶことが前提。授業は、学生が能動的に学ぶために利用する場でなければならない。前にも書いたが、いくら少子化とか経営難とか言っても、手取り足取り世話をしなければ勉学意欲が湧いてこないような学生まで教育する必要がない(本来学ぶ意欲はあっても、精神的な問題によって一時的に学習が困難になっている学生に対するケアは必要。念のため)。そういう学生しか集まらない大学だったら、社会的に有用な技能の修得だけを目的とした専門学校への転換をめざすべきである。

 研究業績という努力に対しては、これまでも、採用・昇格という随伴結果が用意されてきた。このほか、最近では、科研費の獲得実績に応じた研究費の重点配分などの優遇措置が話題になっている。その一方、これまでのところ、教育活動に対する努力に対しては、明確な結果が用意されてこなかった。例えば、大学院担当教員には俸給加算があるが、教養科目を何科目担当しても、いくら受講生が集まっても外部的に評価されることがなかった。もちろん、教育活動に対して与えられる最高の好子は、学生による理解、学生の成長という行動内在的な随伴性に求められるべきであろうとは思うが、一日24時間という限られた時間の中で研究活動のみが採用・昇格や予算配分に有利に働くような随伴環境が与えられてしまえば、教育活動が片手間的でノルマ的な作業に陥ってしまうことは必至。そういう意味では、今回の提言をふまえて、教育活動に対する努力の量と質が正当に評価されるような環境づくりをめざすことは非常に意義深いものであると思う。
【ちょっと思ったこと】

パミール高原オフミはいかが?
[Image]

 今年の夏休みは、当初、青蔵高原縦断ツアー(右側の地図の青海湖からラサへ抜けるコース)への参加を予定していたが、どの旅行会社も参加希望者が集まらず断念。代わりに、ラサからチョモランマ・ベースキャンプに立ち寄ってカドマンズに抜けるツアー(地図の赤線)への参加を検討していたところ、青蔵高原を申し込んでいた旅行会社より、パミール横断ツアー(地図の黄緑)が私以外にあと1名程度の参加確認がとれれば催行可能かもしれないとの電話連絡があった。

 このツアーは8/4発。北京経由の航空機でパキスタンの首都イスラマバードに入ったあと、フンザ、カラコルムハイウェー、中国との国境であるクンジェラブ峠(4733m)を超えて、中国側のタシクルガンへ。さらに有名なカラクリ湖、ムスターグ・アタ峰、コングール峰などを眺望してカシュガルに達するというツアーだ。インドとの国境紛争に絡む銃撃、イスラム過激派による誘拐の恐れが皆無とは言えないが、私としては一生に一度は言ってみたい別天地の1つになっている。このツアーの案内パンフによれば
  • 雪解け水により車の通行が不能になった場合は、その区間は歩いていただく
  • その場合、荷物は地元の人に担いでもらうか、自分で運ばなければならないので、スーツケースではなくザックを持参
  • 昨年はタシクルガン以降が通行不能であったためパキスタンに引き返した。今年も同じようなケースが考えられるが、その場合は旅費の追加請求もありうる
という但し書きがついている。それでもぜひ参加したいという方は至急長谷川までご連絡ください。

 ちなみに、私の妻は保険金さえ目一杯かけてくれればどうぞ行ってらっしゃいと言っている。
【今日の畑仕事】

 小松菜、ミニトマト、タマネギ、キュウリを収穫。
【スクラップブック】