じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] ザクロの花。昨年は裏年にあたり5〜6個しか実がならなかった。今年は花もいっぱい。



6月20日(火)

【思ったこと】
_00620(火)[一般]「拡大系経済」は回復するだろうか

 経済企画庁は19日、景気は1999年4月に底入れし、その後は回復局面に入ったと認定したという。今回の不況は、1997年4月の消費税率引き上げに端を発し、金融危機なども経て25カ月に及び、戦後3番目の長さになったという認識のようだ。

 私は経済の知識は皆無に近く、いろいろな数値を見せられたところで、何が景気の底入れの根拠になるのか、今後の見通しがどうなるのか、について正確な判断をくだすことができない。しかし、あくまで直感的にとらえてみるなら、今後は、戦後と同じような右上がりの経済成長はもはや望めないようにも思える。短期的には好景気はあっても、少子化、高齢化社会、環境問題を考えた時、少なくとも先進国にあっては拡大系の経済はすでに限界に達していると思わざるを得ないからだ。

 「景気回復」というときの「回復」という言葉の意味を『新明解』で調べてみると、
回復:(2)元の、よかった状態を取り返すこと。
となっており、それを使う前提としては、
  • 「よかった状態」が長期間継続する状態として存在し
  • それが何らかの異変によって短期的にかみ合わなくなり
  • 何らかの施策を施すことによって、元の「ノーマル」な状態に復帰する
という変化を想定していることが分かる。では、その場合の「よかった状態」とは何を意味するのだろうか。先日来連載で取り上げている内山節氏の言葉を借りるならば、これは依然として「拡大系」の経済。それに何とかしてしがみついているように思えてならない。

 さいきんでは「循環型社会」という言葉がよく使われるけれども、上記の「拡大系経済」に対峙する形の循環型社会は、単なるリサイクル運動とは本質的に意味が異なる。「拡大系」のもとでのリサイクルの基本は、「たくさん消費し、ゴミをリサイクルしてさらに消費」という形。これならば、種々のリサイクル産業も「拡大系」の一翼を担って利潤をあげることができる。

 これに対して本当の意味での「循環系」はもっと別のところにあるはずだ。それは、ものの使用価値を交換価値以上に優先し、「使う」ということや「消費する」ということの意味を問い直すことを前提とした社会ということになる。

 ある会議でたまたま聞いた話だが、ここ数年、大学生協が新入生向けに売り出す「新生活用品」の売り上げが不振を続けているという。以前ならば、この時期に得た利益で生協食堂の赤字分を補うこともできたそうだが、今はそれどころではないという。その一方、卒業生が不要となった家具類や電化製品を新入生向けにリサイクルしようという声も強いのだが、これが活発になると新生活用品の売り上げはますます落ちる。こういうジレンマの背景にも、「拡大系消費」か「循環系消費」かの問題が横たわっているように見えた。

 もちろん世界規模で見れば、まだまだ貧しい国も多い。6/21の朝日新聞「特派員メモ」には、ジャンボ鶴田さんの肝臓移植手術に肝臓を提供した男性の話があった。病院側は20歳と説明していたが、実際は17歳の少年で、マニラ北部の野菜市場で約4000円の月給で働いていて銃に撃たれたという。その経緯は今ひとつ不明であるし、ちゃんとした脳死判定が行われたのかどうかも分からないが、とにかく、移植の同意によって遺族が得たお金は、その少年が一生に稼ぐことのできる額の何倍、何十倍にものぼっていたのではないかと推察される。こういう社会では、(本当にそれが望ましいかどうかは別の議論として)依然として「拡大系」の経済が発展する要素があり、そういうところに投資したり援助する産業を育成すれば、まだまだ日本国内でも拡大系の経済が発展していく可能性は残っている。

 とはいえ、食物、水、衣類など生活に必要な最低限の物資の生産システムが確保された段階で、プレミアム的な価値を追い求めながら拡大系の経済を維持し続けることにはやはり限界がある。また、そもそも、自然資源が無限でない以上、それを無限に利用することを前提とした拡大系経済はいつかは破綻をきたすことになるだろう。

 総選挙を前に「IT革命」とか「インターネット利用促進のための施策」などがいろいろと云々されているようだが、これは裏を返せば、(プレミアムつきを含む)製造部門だけのシステムではもはや拡大系経済を維持できなくなったことを認めていると言うこともできる。しかし、それではネットで何を利用するのか。もしそれが、消費促進を目当てにしているというならばあまり進展は望めない。むしろ、ネット利用によって直接的な対人交流の機会が減り、一部のサービス産業が衰退していく可能性だってある。

 「拡大系」に対峙する形の「循環系」の中身についてはもうすこし細かく詰めていく必要があるけれど、少なくとも、拡大系でなければ雇用が確保できないということは無いと思う。むしろ、コスト削減目的で導入された機械によって奪われた労働機会を人間に取り戻すことによって働きがいのある雇用機会が増えていくようにも思える。

 これまで「循環系」というと、山奥に籠もって自給自足の隠遁生活を送る人の主張のように見られてきたが、いずれは地球規模での真の「循環系」を考えなければならない時代が来る。金の力で得た景気はいつか金で償わなければならない。いますぐなのか、それとも10年先か50年先になるのか分からないけれど、好むと好まざるとにかかわらず「拡大系」はいつか限界に達し、循環系への構造的な変革が迫られるようになるだろう。
【ちょっと思ったこと】

青蔵高原オフミはいかが?

 今年の夏休みはS旅行社主催の「青蔵高原バスの旅」(8/1発、13日間、418000円)に参加する予定であったが、本日S社より、現時点では最少人員に達しておらず、催行は微妙な段階にあるとの電話連絡が入った。このツアーは、東京または大阪から、北京、西寧を経由して青海湖畔に1泊、そこから青蔵公路ぞいに、コルムド、トトフ、さらには標高5320mの唐古拉山口を通ってチベットのラサに達するという、山好きの私としては一生に一度は通ってみたい大パノラマコースである。こんなに素晴らしいコースになぜ申し込みが少ないのか。やはり、あのグァテマラの事件の影響なのか。いずれにせよ、年齢的にそろそろ限界が近づいている私としては、催行中止の事態だけは避けて貰いたいものだと願っている。

 ということで、もしこの旅行に興味のある方は、S社のほうに至急連絡をお願いします。標高5320mでオフミをやれば世界最高記録となることは確実。それとこの時期は上弦の月前後となるため、夜半からは満天の星が見えることも請け合いです。


迷彩色の蛾
[今日の写真]  文学部の建物内で迷彩色の蛾をみつけた。相当珍しいと思ってシャッターを押したが、あとで図鑑で調べたところではウンモンスズメという蛾で、ケヤキやニレなどを食べるスズメガの仲間で、比較的ありふれた種類であることが分かった。とはいえ蝶にまさるとも劣らぬ美しさ。蛾を嫌う人が多いのが不思議だ。
【今日の畑仕事】

多忙につき一度も立ち寄れず。
【スクラップブック】