じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] 櫂の木の花。左が雌の木、右が雄の木。いずれも連休中に撮影したもの。


5月10日(水)

【思ったこと】
_00510(水)[心理]バスジャック事件についてもクリティカルな視点が必要(その2):「坊ちゃん」も2階から飛び降りた

 はじめに、さいきん朝日新聞に掲載された『週刊文春』と『週刊新潮』(いずれも5/18号)の新聞広告の中からこの事件に関連する見出しを拾ってみたいと思う。1つは犯人を狙撃することに関する見出し:
  • 「狙撃」の決断なぜできない(週刊文春)
  • なぜ射殺しなかった「バスジャック」(週刊新潮)
 もう1つ、これは同時期に起こった別の凶悪犯罪を含めてのことだと思うが
  • 少年法改正を邪魔する意外なメンバー(週刊文春)
  • これでも少年法改正に反対する国会議員「落選」のすすめ(週刊新潮)
というもの。少年法改正については、今回の事件をきっかけに早期の成立をめざす動きが出ているようだ。

 私個人、人質の救出の一方法として犯人狙撃は否定しないし、容疑者の実名と顔写真を公表し、成人と同じように裁判を受けさせるように法改正を進めることに何ら異論を唱えるものではない。ただ、仮に犯人が射殺されていたとしても、あるいは、現容疑者が死刑になったとしても、同種の事件の再発防止には必ずしも役立たないようには思える。事件の原因を「いじめ」や学校教育、家庭問題に短絡的に結びつけることなく、可能な限り、多面的な防止策を検討していく必要があると思っている。

 さて、本日は時間の関係で、夏目漱石の「坊ちゃん」の一節を引用しておきたい。
親ゆずりの無鉄砲で子どものときから損ばかりしている。小学校にいるじぶん学校の二階からとびおりて一週間ほど腰をぬかしたことがある。なぜそんなむやみをしたと聞く人があるかもしれぬ。べつだん深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人がじょうだんに、いくらいばっても、そこからとびおりることはできまい。弱虫やあい。とはやしたからである。.....
この一節は、バスジャック事件後の新聞報道で
中3の時に、同級生に筆箱を取り上げられ「返してほしかったら飛び降りろ」と言われ校舎2階から飛び降り、重傷を負った。
という話を聞いた時にすぐ思い浮かべた一節であった。飛び降りた原因が「いじめ」にあるのか、上記の坊ちゃんのようにからかわれたためであるのかは確認できないが比較に値すると思う。ちなみに、『坊ちゃん』では、そのすぐあとに次のようなエピソードも記されている。
親類のものから西洋製のナイフをもらってきれいな刃を日にかざして、友だちに見せていたら、一人が光ることは光るが切れそうもないと言った。切れぬことがあるか、なんでも切ってみせるとうけ合った。そんならきみの指を切ってみろと注文したから、なんだ指ぐらいこのとおりだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。
 もちろん『坊ちゃん』はフィクション。しかし、小説と言えども、あまりにも現実ばなれしたエピソードばかりを並べたのでは主人公のキャラクターが不安定となり読者を納得させることはできない。少なくとも、『坊ちゃん』の読者は、冒頭の諸事例から、この主人公が将来凶悪犯を起こすであろうとは想定しない。そして、この坊ちゃん、松山の中学では結局暴力沙汰を起こし辞表を出して東京に戻ってしまったが、その後、ある人の周旋で街鉄の技手になったとある。

 何かの凶悪事件が起こると、その容疑者の過去のエピソードの中で異常と思われるものだけを拾い出してきてあたかも事件の遠因であるかのように事後的にこじつける評論家が多い。過去の似たようなエピソードであっても、その人がまともな社会人に育てば「これも経験の1つ」としてポジティブに評価される一方、何か事件を起こせば、異常な行動の原因を形作っているかのように利用される。もっとクリティカルな目で物事をとらえたいものだ。
【ちょっと思ったこと】
  • 耳の聞こえない医師

     5/8の日記で手話の話をとりあげたが、5/10夜22時からののNHKニュース10で、欠格条項に関連して耳の聞こえない医師のことが紹介されていた。滋賀県の病院に勤務するこの男性は、医師になったあと耳が聞こえなくなった。本来、その時点で欠格条項に抵触するが、黙認状態になっているとか。医師自身は声を出せるけれど、患者、看護婦、その他の職員との双方向のコミュニケーションは手話でやりとりされているようだ。

     この病院には全国の聴覚障害者からの受診の申し込みがあるという。患者の話をちゃんと聞いてくれる、患者の気持ちが分かってくれるためだと言う。そう言えば、患者の質問には一切耳を貸さず、むっつりとしたままでカルテに何かを書き込み、処方を出すだけの健聴の医師も居る。手話を媒介とすることで音声以上に気持ちが伝わる可能性もありそうだ。なお、手話についてはIsland Lifeさんからも詳しい情報をいただいた(5/8)。ありがとうございました。

  • ストーカー規制法と「卒業」

     参院の与党三党と民主、共産、参院クラブは10日、「ストーカー」を初めて本格的に規制する法案を共同で提出することに合意したという。
    • 警察に申し出れば告訴をしなくても警告が出せること
    • 恋愛・好意の感情やそれに派生する怨恨の感情を満たす目的に限ること
    • つきまとい、待ち伏せ、見張り、監視の告知、面接・交際要求、無言電話など
    • インターネットを使った嫌がらせ行為については今回は除外
    といった内容になっているらしい。このことで思い出すのが、私が高校生の頃に人気を博した「卒業」(ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、アン・バンクロフト、1967年当時は私は中学3年生)という映画。フィクションとはいえ、女性の通学先の町に寄宿してつきまとい、最後は教会まで押し掛けて結婚式を阻止するという行為は間違いなくストーカー規制法違反になる。ラストで女性が心変わりして教会から一緒に逃げ出したからよいものの、あのまま逮捕されていたら6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科せられたことであろう。
【今日の畑仕事】

長時間の「会議×3」につき、何もできず。
【スクラップブック】