じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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 解体の朝を迎えた二軒の古家。大学周辺にはもともと、平屋一戸建て庭付きの公務員宿舎がたくさん建てられていたということだが、現在では殆どすべてが5階程度の鉄筋アパートに建て替えられている。そんななか、長いこと空き家状態になっていた2戸が3月7日に取り壊された。
 多少気になったのは、この空き家の屋根裏にはコウモリがたくさん生息していたこと。まだ冬眠中ではないかと思うのだが、どうなったのだろうか。それと、正面に高くそびえるセンダンの木。夕刻には、重機によって無惨にもへし折られていた。国有地の有効活用とは言え、人間の身勝手さを目の当たりにした一瞬だった。


3月7日(火)

【思ったこと】
_00307(火)[教育]最近の大学教育論議でおもふこと(14):飲酒、エイズ、喫煙と言えば...

 昨日、来年度新入生ガイダンスを円滑に実施するための教員研修会があり、教務委員とFD委員をつとめている私も参加した。会場では、来年度新入生に配布される予定の冊子類が披露された。印刷中のシラバスを除いてもその総数は10数点にのぼる。大学マークつきの特製紙バッグに入れられており至れり尽くせりだ。

 配布書類は、「君が大学に求めるものは?」といった理念的なものから、入学案内、履修登録の手引きなど。いずれもカラフルな表紙のほか、殆ど漫画と言ってよいようなイラスト入りの説明もふんだんに取り入れられている。文字onlyの注意書きでは読んで貰えないとの配慮なのだろう。

 そんななか、新入生の勉学指導とは別に、学生生活上の諸注意を促す面白い冊子を何冊か見つけた。

 まず、「お酒とつきあうためのガイドブック」。いきなり、「体に入ったアルコールはこんなに長い道をたどる。」というストーリ漫画から始まる。そのあと、8つの「LIFE STAGE」、途中に「適正飲酒の10か条」、巻末には「人がお酒とともにつちかった文化がある」というストーリ漫画がそれぞれ配置され、「いかに読ませるか」に最大の配慮がなされているように見受けられた。

 よく見ると、この冊子を編集したのは某ビール会社。そのせいか、漫画やイラストではビール瓶や缶ビールの絵が多いような気がする。ウィスキーが出てくるのは「理性を呼びさませ! アルコール依存症は悲劇的な病だ。」という依存症を警告する部分のみ。そういや、このビール会社、ウィスキーは造っていなかったような。

 多少揚げ足取りになってしまったが、冊子自体は飲酒の問題点を分かりやすく解説しており、価値の高い冊子であると思った。

 もっとも、よく考えると、新入生に「お酒とつきあうためのガイドブック」を配布することには別の問題が無いわけではない。現役受験生が大学に入学する年齢は18歳。ところが法律では「未成年者飲酒禁止法」(1922年公布・施行、1947年改正)により20歳未満の飲酒は禁止されているはずなのだ。もちろんこの冊子でも2ページを割いて、「20歳までは、お酒のデンジャラス・ゾーンに踏み込むな!」と警告をしているが、法律をタテに禁酒を呼びかけるならば、他のアドバイスは2回生になってからでよい。

 このあたり、どう考えるべきなのか。現実にそぐわない法律なら変えるべきであるし、法律を厳守させる意義があるなら罰則を設けて取り締まらなければならない。道路交通法でもそうだが、違反が当たり前と見なされるような決まりが多すぎることが逆に守るべき部分まで軽んじられる弊害をもたらしているようにも思う。

 次にエイズ対策の資料が目をひいた。保健管理センターからの配布書類の中には『打ち明けてくれてありがとう』というエイズ教育研究会発行のISBNつきの書籍が入っていた。最近話題の結核などに比べると、大学内でエイズが深刻な病気として蔓延しているわけでもない()のになぜそこまで、...と常々思っていたところだが、最近、どうもエイズ教育の目的は、エイズ防止以外のところにあるのではという気がしてきた。
もちろん、日本国内で薬害エイズについて十分な理解が得られていない現状、世界的に見てエイズが深刻な病気であること、エイズ患者に対する人権侵害があるという事実は十分に承知している。
 現在、私の知る限りでは、岡大生についての性体験の実態を調べた公的資料は何もない。しかし、卒論研究などで男女交際についてのアンケート調査を行った結果を見ると、現実に何の性体験も無しに卒業する学生はむしろ珍しい。また、これはあくまで妻から聞いた噂話にすぎないが、県立高校のレベルでも、「彼(彼女)とつき合ってる」というのは、現実には肉体関係をもっているという意味と殆ど同義になっているそうだ。

 こうなると、もはや綺麗事だけでは済まされない。といって、性交渉を大学の公的な場で直に語るのは生々しすぎる。そこで、すでに社会問題化していて口に出しやすいエイズを語ることで、併せて、性的交渉から派生する様々な健康問題を考えさせようということでは無いかと深読みしてしまう次第。もっともこれはあくまで私個人の勝手な推測。大学の公的見解とは一切無関係なので、念のためお断りしておく。

 さて、今回披露された配布書類の中でちょっと欠けているのではないかと思われるのが、喫煙についての資料。ざっと目を通した限りでは、定期健康診断問診票の中に「タバコが心筋梗塞(動脈硬化)、癌(肺癌、その他種々の癌)、高血圧などの発生を促進する危険因子であることを知っていますか」という質問項目があるだけで、特別の啓発資料は含められていなかった。

 喫煙は、個人の生活習慣病に至るきっかけとして深刻であるばかりか、大学構内のような公共の場では、周囲の非喫煙者にも迷惑を及ぼす。また、構内の歩道や建物出入口付近でいちばん多く見かけるのが吸い殻のポイ捨てだ。実際には、喫煙の場合も、飲酒同様に「未成年者は法律で禁止されている」という建前と、新入生がかなりの比率で喫煙している現実がある。人生を長期的に見れば、大学入学時の時点で生活習慣病の観点から喫煙の弊害をきっちり考えさせる資料を与えることはきわめて重要ではないかと思った。
【ちょっと思ったこと】
【今日の畑仕事】
ジャガイモの植え付け。
【スクラップブック】
  • 文部省は、HPを教育目的でコピーする権利を生徒にも認めさせるよう法律を改正する検討に入った。従来は教員だけに認められていたもの。これにより、生徒が新聞記事などをコピーし、資料集を作ることが可能になる。