じぶん更新日記

1999年5月6日開設
Y.Hasegawa
[今日の写真] アリッサム(赤花)。花の少ないこの季節、ベランダのプランターで咲いている唯一の花。

1月24日(月)

【思ったこと】
_00124(日)[教育]最近の大学教育論議でおもふこと(11)授業評価の効用

 1/21の日記の続き。21日に出席した全学教務委員会主催の「FDに関する連絡協議会」の後半に行われた
学生からのフィードバック情報による授業改善
というテーマでの他大学教授による基調講演を拝聴して思ったことを述べてみたいと思う。なお、前回もお断りしたように、この会議は不特定多数に開かれたものではなかったので、ここに詳細を記すことはできない。あくまで、そこで論じられた一般性のある問題に限って、私なりの感想を述べてみたいと思う。

 講演の最初は、「学生による授業評価」によって授業がどう改善されたかという話題だった。配布された資料では学生による23の評価項目が紹介されていた。実施1年目と2年目の肯定率(「ハイ」または「ヤヤハイ」)を比較してみると、
  • 「黒板OHPの字は読みやすい」が1年目の34%から92%に増加
  • ほかに「学生が意見表明することを奨めている」、「学生を討論に参加させようと努力している」、「クラスのペースに授業をうまく合わせている」などで、肯定率が飛躍的に増加
そのいっぽう
  • 「常に授業の準備をよくしている」は1年目が97%、2年目が98%と最初から高い比率であった(=天井効果)ためにほぼ同率
  • 「授業に情熱をもっている」、「休講がなく、時間も厳守する」、「説明は明快で理解しやすい」なども、もともと80%以上の肯定率があったために顕著な変化は認められない
  • 「ユーモアのセンスを持ち合わせている」は24%から32%、「授業を実験・教育実習・教育実践等と関連づけようとしている」は35%から47%というように、改善は認められたものの依然として低率
というような結果があったという。

 このほか、2年目から3年目、3年目から4年目というように実施を重ねるとあまり増加が見られなくなり、授業評価を受けることによる教官側のモチベーションが必ずしも高まらなくなることが指摘されていた。

 以上の結果を拝見したところ、学生による授業評価によって改善されるのはいわば授業の欠陥部分。それが補われた段階でさらに
  • テーマそのものへの理解度を増すためのヒントが得られるのか
  • あるいは学生が主体的に問題をみつけたりそれを解決するために必要な方法を確立する力を養うにはどうしたらよいか
  • 学生がグループに分かれて協力しあって問題解決をするにはどうしたらよいか、
という点で、授業評価結果から改善に役立つ有用な情報が得られるかどうかはかなり疑問であるように思った。また、評価項目の設定のしかたにもよるだろうが、評価結果をあげることばかりを気にしていると、
プリゼンテーションが上手で適度にユーモアのセンスがあり、物分かりがよい先生
になることはできるが、
学生にハードな課題を与え、嫌われながらも徹底的にしごく
というような教授法は廃れていく可能性がある。

 上にも述べたように、とりあえず自分の授業の欠陥や問題点を知る手段として授業評価を受けることには意義があるが、それをもって大学教育の根幹を改善しようとすると、予想外の種々の問題が起こってくる恐れもあると感じた。

 講演の後半では、毎回の授業において学生からのフィードバック情報を取り入れる工夫についての紹介があった。これについての感想は次回以降に述べさせていただくことにしたい。
【ちょっと思ったこと】
  • ベンチャービジネスをうたい文句にリストラにあった人達から多額の資金を巻き上げる、という再就職詐欺の疑いで65歳の男が逮捕されたという。この事件で興味深いのは、「設立資金」の額に応じて、部長や課長などの役職が与えられるという誘い。年功序列や終身雇用が崩れた今どき、金さえ出せば役職に就けるなどいうウマイ話があるはずがない。リストラで疲れ切って「もはや実力第一の競争社会は御免、名誉職でもよいから一度役職についてみたい」という心の隙をついた犯罪だったのだろうか。

【スクラップブック】
【今日の畑仕事】
多忙のため立ち寄れず。