じぶん更新日記

1999年5月6日開設
Y.Hasegawa
[今日の写真] カランコエ。室内に移していたカランコエの花が咲き始めた。朝日が綺麗だったのでベランダに鉢を出して撮影。ラウイ(Laui)と呼ばれる品種で、葉が細く茎がまっすぐに伸びるタイプ。

1月21日(金)

【思ったこと】
_00121(金)[教育]最近の大学教育論議でおもふこと(10):FDについての本格的な議論始まる

 金曜日の夕刻から、全学教務委員会主催の「FDに関する連絡協議会」が開催され、文学部のFD委員をつとめる私も出席した。会議では各学部のFDの現状報告のほか、「学生からのフィードバック情報による授業改善..」というテーマで、他大学教授による基調講演が行われた。あくまで大学内部の会議であり、講演も不特定多数に開かれたものではなかったのでここに詳細を記すことはできないが、そこで提起された一般性のある問題に限って、私なりの感想を述べてみたいと思う。

 まずFD(ファカルティ・ディベロップメント)とは何かということだが、これにはいろいろなレベルがある。狭い話題から広い話題に列挙してみると...
  1. 個別の授業における指導方法の改善。講義の進め方、プリゼンテーションの仕方、受講生からの質問への対応、学生による授業評価の活用など。
  2. それぞれの大学、学部における教育理念を明確にした上で、履修させるべき授業の種類や量を検討すること。例えば教養教育や外国語教育をどうするか、履修登録科目数に上限を設定すべきかどうかといった問題がこれに含まれる。
  3. 履修コース、学科、学部、大学院など改組、あるいは教育センター設置などの組織改革にも踏み込むような議論
  4. 教育に熱心に取り組む行動を積極的に評価するシステムの確立。研究と教育のバランス。教官個々人の研究業績と同様に教育業績をいかに評価するか。「講座費より科研費」とか「研究費の重点配分」に対して教育予算をどう配分していくべきかといった問題。
といったことになるかと思う。私の学部のFD委員会では少なくとも上記3.までは検討項目に含まれているけれど、大学によってはいろいろなしがらみもあり、建設的な方向で議論が進まない所もあると聞いている。

 さて、今回の会議の後半では、「学生からのフィードバック情報による授業改善」という内容の基調講演が行われた。これは上記の検討項目で言えば1.に該当するもの。組織や予算に絡む議論がどうあれ、教官個人がその気になればいつでも導入できるような話題であった。

 講演ではまず、学生による大学授業への評価を国別の比較した調査データ(出典は聞き逃してしまった)が紹介された。それによれば、授業を「満足」、「不満」、「【授業内容が】分からない」と答えた学生の比率(「分からない」の比率は長谷川が100%からの残りとして算出)は、
  • 米国   80.9 : 13.2 :  5.9
  • フランス 71.6 : 16.4 : 12.0
  • 中国   32.6 : 49.2 : 18.2
  • 日本   19.0 : 59.5 : 21.5
  • 韓国   12.3 : 80.8 :  6.9
となっており、儒教型のトップダウン教育を行う韓国がいちばん評判が悪いこと、日本の場合は、おなじく不満度が高い上に、「【授業内容が】分からない」と答えた比率がいちばん多いという特徴をもつことが指摘された。もちろん、この種の比率は、どういうレベルの大学のどの授業について調査したかによって著しく変わるものであるし、「満足」の質的内容についても検討を加える必要があるが、きわめて大ざっぱとは言え、日本の大学の授業に何らかの改善が必要であることを示唆するものとなっている。

 講演では引き続いて、学生から授業評価を受けることによってどういう改善がなされたのか、「大福帳」と呼ばれる教官・学生間のコミュニケーションがどういう効果をもたらしたのかについて貴重な体験が紹介されたが、時間が無くなってしまったので、そのことについての感想は次回以降(月曜日朝にアップの日記に執筆の予定)に記すことにしたい。
【ちょっと思ったこと】
  •  このところ、卒論指導や長時間の会議のため夕食が21時すぎになることが多くなってしまった。それに伴って今までと違うTV番組を見る機会が増えた。この日はテレビせとうち系の「たけしの誰でもピカソ」、「勝新太郎の全生涯」という話題だった。私個人は「座頭市」のTVものをいくつか見たことを除けば勝新出演の作品は殆ど知らないが、とにかく20世紀を代表する役者の一人であることは間違いない。あの中村玉緒が長年連れ添い、北野たけしが頭が上がらないというだけでも大人物であることが分かる。勝新太郎関連の番組はこれからも何度も企画されるだろうが、たけし・玉緒の豪華メンバーによる回想番組というのはそう滅多にあるものではない。よい番組を見た。

     番組でも伝えられていたように、勝新と玉緒が共演した舞台というのは、勝新が亡くなる少し前の公演が最初で最後であったとか。結婚前に共演した映画は3日間程度の早撮りであって必ずしもきっかけにはなっていなかったらしい。

     このほか、2歳ちがいの若山富三郎が良きライバルであったという話も面白かった。そういや、兄弟で活躍しているタレントって結構多いよな。先日NHKの大河ドラマをチラッと見た時、おや長門裕之が徳川家康をやっているのかと思ったが、これは津川雅彦だったようだ。タレントではないが、北野たけしや石原裕次郎の兄弟もそれぞれ活躍しておられる。

     もとの話に戻るが、京都での学生時代、私はいまの地下鉄北大路駅の近くに12年以上にわたって下宿していた。通学には自転車を使っていたが、帰り道、一度だけ下鴨神社境内の林の中で座頭市のロケ風景に出くわしたことがあった。これがナマ勝新にお目にかかった最初で最後の機会だった。

  •  このところ朝日新聞で憲法調査会関連の話題を連載でとりあげている。憲法改正論議と言えば、かつては「9条改正」、「天皇元首規定」に関する主張が目立っていたけれど、最近では「改正の必要がある」と答えた46%(97年4月の朝日新聞世論調査)の内訳をみても「国際紛争解決での軍事的役割」10%、「首相公選制や国民投票」8%、「情報公開」7%など多彩。なかには「私立校への公費助成」など政策として論議すべきような要望まで含まれているようだ。そんななか、改憲を推進しようと言う人々の一部で「環境権」が強調されているとか。ところが、「環境権」を口にする人の中には、これまで環境問題に熱心に取り組んできた人は殆どいないという指摘もあるという。「護憲か改憲か」という包括的・二者択一型の議論を改憲の方向に有利に動かすためのケーキの飾りとして「環境権」が利用されている恐れがあるということだ。

     今後、憲法調査会で議論が進むなかでも、この「環境権」がどういう立場の人によって口にされるか、そういう人達が例えば産廃処理の問題、諫早湾や中海の干拓事業の問題、その他諸々の環境問題に対して具体的にどういう活動を続けてきたのか、厳しく監視していく必要があるだろう。

     いずれにせよ、「あなたは改憲に賛成ですか」というような包括的・二者択一型の議論は全くナンセンス。9条、天皇、公選制、環境権など個別的具体的な問題について独立して議論していかなければ、いつまでたっても焦点は定まらない。ケーキの飾りだけにつられて知らぬ間に不本意な改訂がセットで行われてしまう恐れがないように注意していきたいものだ。
【スクラップブック】
【今日の畑仕事】
レタスと小松菜を収穫。