じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 夕日を浴びる死海とヨルダンの山並み(1982年1月撮影)

2月8日(月)

【思ったこと】
990208(月)[心理]卒論を読み終えたわたし(1)被験者をぶん殴ったら...

 うちの学部は例年、卒論提出締め切りが1月末(今年は日曜日だったので翌2月1日)で試問が2月の中旬という日程となっている。卒業に必要な単位が不足している学生を除けば、たいがいの4回生は卒論を提出した瞬間からのんびりとできる。これに対して教官のほうは、この卒論読みに加えて期末試験の採点、リポート採点などが重なり非常に忙しい時期を迎えている。

 うちの教室には卒論生が17名。全部は読み切れないので、1篇の卒論に対して教官3人ずつを割り振る。結果的に10篇の卒論を読まなければならなくなる。

 私のばあい今年度は4名の学生を指導したので、それ以外に6名分が割り振られる。今日になってやっと、この6名分の卒論を読み終えることができた。そこで感想を少々。

 まず全般的に言えることだが、序論の構成がちぐはぐで突然話題が変わってしまうものまである。他学科の教官に会う機会があったのでこの話をしてみたが、ワープロで文章を切り貼りしていくうちに起こったミスではないか、ということで見解が一致した。

 次に各論文についての感想。但し時間が無いので今日はその1回目。

 卒論研究ではしばしば、
  1. ある実験操作を行う。
  2. 実験的操作が正しく機能したか、を確認する。
  3. 実験操作を行った条件と行わなかった統制条件でターゲットとする課題のスコアに有意差があることを確認。
  4. この有意差は上記の実験操作が原因であると結論する。
というロジックが使われる。これは、日本心理学会『心理学研究』誌掲載論文でも見られるもので、卒論研究に特有というわけではない。
 このロジックの問題は、実験操作が想定外の効果を及ぼす可能性を排除できない点にある。

 あくまで話を面白くするための仮想の実験であるが、たとえば、記憶の保持に「怒り」がどういう影響を及ぼすかを実験したとする。
  1. 被験者全員にある記憶課題を実施したあとランダムに2群に分ける
  2. 実験群については「怒りを引き起こす操作」として被験者をぶん殴った。
  3. ぶん殴ったことで被験者が怒りを発生させたかどうかを質問紙で調査する。
  4. ぶん殴られた実験群とぶん殴られなかった統制群で、記憶テストのスコアに有意差があることを確認する。
  5. 有意差は、怒りの発生が原因であると結論する。
というようなものだ。このばあい確かに怒りは起きるだろうが、それ以外の変化(恐怖、悲しみ、物理的な傷害..)も同時に起こっており、そちらが原因となっている可能性もある。たとえば、ぶん殴ったために被験者が脳震とうを起こし、短期的な記憶喪失に陥るということもありうるだろう。

 上記の仮想実験では、より正確な結論を導くために、怒りの程度と記憶テスト成績の相関を調べるという手もある。つまり怒りが高かった人ほど記憶テストの成績が悪ければ怒りが影響を及ぼした可能性が高まる。とはいえ、相関だけでは因果関係の同定にはつながらない。怒りが直接の原因となって記憶テストスコアを悪くした可能性もあるが、同時に、ぶん殴る操作が、怒りの発生と記憶喪失の共通原因担っている可能性(つまり「怒りの発生」は原因ではなくて結果)も否定できない。

 時間が無いので明日以降に続く。
【ちょっと思ったこと】
【新しく知ったこと】
【生活記録】
【スクラップブック(翌日朝まで、“ ”部分は原文そのまま。他は長谷川による要約。【 】部分は簡単なコメント。)】
  • 臨時徳島市議会は8日、本会議を開き、吉野川可動堰建設の是非を問う住民投票条例案を反対22、賛成16、退席1で否決。