じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] サイネリア。「シネラリア」とも呼ばれるが「死ね」を連想するのか、花屋では「サイネリア」と呼ばれることが多いように思う。行きつけの花屋で100円で購入。キク科に属し和名は「富貴菊」というそうだが、黄色の花は見かけず、代わりに空色と赤色系で美しいものが多い。

2月2日(火)

【思ったこと】
990202(火)[心理]ストーブに火をつけるのは何故か(4)随伴性のパズル?

 今年の一般教育の授業では、ネット上に受講生専用の掲示板を開設したこともあって、受講生からいろいろな質問が寄せられた。そのなかでも、この連載(前回は昨年12月10日)で話題にした随伴性の分類をめぐる質問がかなりの数にのぼった。補講を前にとくに一般性のある問題について考えてみたい。

 そのまえに、もういちど随伴性についてまとめておくが、「行動随伴性」(ここでは基本的な随伴性)というのは、「ある条件の下である行動をするとある環境の変化が起こる、という行動と環境との関係」(杉山ほか、『行動分析学入門』、1998)であると定義されている。いっぽう「阻止の随伴性」は、「ある条件の下である行動をしなければある環境の変化が起こるが、ある行動をすれば、環境の変化が阻止され同じ状態が保たれるという行動と環境との関係」というように定義できるだろう。

 いずれの場合にも注意すべきなのは、ここで示される随伴性は、行動およびその直前と直後の関係を時間的に配置したものにすぎないということ。あくまで、行動の必要原因に言及したにすぎないという点に留意していただきたい。

 特に人間行動の場合は、行動随伴性と言っても、行動の影響を及ぼす随伴性の大部分は「間接効果的随伴性」であって、それを有効たらしめるために、種々のルール支配、刺激反応連鎖、条件性強化などが関与しているという点である。いくら随伴性を正確に分類記述したとしても、間接効果的な強化(モドキ)をもたらしているプロセスを的確に指し示すことができなければ、行動の原因を指摘したとは言えないし、必要に応じてそれを変えることもできない。

 そのことを念頭においた上でいくつかの事例を挙げると...
  • 籠の中の小鳥が死なないよう、毎日餌と水を与える→好子消失阻止の随伴性
    ペットを飼うということは、ほんらい飼育行動に好子(ペットのしぐさ、可愛らしさ)が出現することによって強化・維持されるもの。しかし、もし本当に好子出現だけで強化されているのであれば、餌やりを義務的で煩わしく感じることは無いはずだ。そのように感じることがあるのは、長年の習慣化のなかで、ペットが好子として最初から存在しており、それを死なせまい(=消失させまい)という随伴性が関与するためと考えられる。
    これに関連して、小鳥の死が嫌子の出現となるので、「嫌子出現阻止」によって飼育行動が強化・維持されているのではないかとの質問があった。しかし、もし死なせるのがイヤで餌や水をやり続けているぐらいだったら、それを誰かに譲ることもできるはず。また、いったん死なせてしまったら、嫌子出現によって飼育行動が弱化され、二度と小鳥を飼わなくなるという可能性もある。もちろん、人によっては可愛がっていたペット(たまごっちも含まれる)の死を体験し、その後二度とペットを飼わなくなるというケースもあるが、それはあくまで現実にペットが死んだあとで形成される条件づけとして考えるべき。

  • 崖から転落しないよう、慎重に運転する→嫌子出現阻止
    ここでの具体的な行動は、カーブで正確にハンドルを切る、早めにブレーキを踏む、エンジンブレーキをかける、といった能動的な(死人にはできない)行動。崖が目前にある状況では、転落による死傷事故が具体的な嫌子となる。
    ネット掲示板に「命、車、医療費、修理費と言った様々の好子の消失も同時に阻止しているのではないか」との質問があったが、もちろんそれらが皆無であるとは言えない。とはいえ「最も関連が深い」と思われるものを1つあげるということであれば、死傷事故という嫌子を軽んじるわけにはいかないだろう。
    もちろん、同じ「慎重に運転する」ケースであっても、明らかに運転者は無事であるが新車を擦ってしまうような状況(例えば時速20kmで、狭い角を曲がるような場合)であれば、好子消失阻止が第一義的な随伴性として働く場合もありうる。

  • 自動車税を納めるのを怠っていたら追徴金をとられる→好子消失阻止
    ここでの具体的な行動は、期限までに銀行などに出向いてきっちりと税金を納めるという行動。「怠る」のは死人でもできるので行動とは言えない。追徴金をとられるとは、自分が保持しているお金(=好子)が消失するという現象。それを避けるために期限を守るというしくみ。自動車税が道路の整備に役立つということを自覚していて、「納税→道路整備」という随伴性で納税が強化されている人だったら話は別だが。
 いずれの場合も、具体的な行動は何か、行動した場合としなかった場合に具体的にどういう変化が生じるのかというのが判断の決め手となる。これらはいっけん、言葉の遊びのように思えるけれど、
  • その行動現象を変える必要があった場合に操作できる強化因は何か
  • どういう確立操作が可能か
ということを確実にするためには重要だ。例えば、子供がペットの世話をちゃんとしない時、もし「嫌子の出現阻止」の随伴性で行動を維持しようとするならば、ペットの死が如何に悲しいものであるかを強調し不安を高める確立操作が有効ということになる。でなくて、ここに記したように「好子出現」もしくは「好子の消失阻止」の随伴性で維持しようとするのであれば、子供がもっとペットにふれあう時間を増やして、ペットが如何に可愛いしぐさを見せるものであるかを体得させるという確立操作が有効ということになる。
【ちょっと思ったこと】

  • 夕食後の夫婦の散歩の時、東の空に月齢15.8の丸い月を見た。雪雲のせいか、ちょっと暗い。今日の朝刊に、月より小さい冥王星を小惑星天体に分類すべきだとの主張のあることが紹介されていたが、将来宇宙船が冥王星を訪れることがあれば、ああいう暗い月のような天体を太陽系の果てで眺めることになるかもしれないとふと思った。冥王星には、半径が冥王星本体の半分以上にも達するような衛星カロンがある。地球と月以上に連星っぽい異様な眺めになることだろう。以下に、冥王星より大きい衛星の一覧を示す。なお小惑星と言えば、ベスタが2/6に衝を迎え、6.2等星まで明るくなる。さらに2月9日には、冥王星のほうが海王星より太陽から遠くなり、1979年1月以来20年ぶりに「水金地火木土天海冥」が復活。私たちが生きている時代に海王星が冥王星よりも遠くになることはもはや無い。
    • ガニメデ(木星衛星):2631km
    • タイタン(土星衛星):2575km
    • 水星:2440km
    • カリスト(木星衛星):2400km
    • イオ(木星衛星):1815km
    • 月:1738km
    • エウロパ(木星衛星):1569km
    • トリトン(海王星衛星):1350km
    • 冥王星:1195km

  • 2/3の朝日新聞によると、不用となった携帯電話約7万台から1キロの金が回収できるという。金鉱石が1トンあたり10-50グラムの金しか含んでいないのに、携帯電話を焼却した原料からは1トンあたり200グラムの金が含まれるというから、確かに貴重な資源である。
    金と言えば、97年6月の日記で、当時のTV番組「平成教育委員会」に関連してこんなことを書いたことがあった。
    有史以来の採掘量は、オリンピックプール2杯分にすぎない、.【略】...。国内での用途Top10は、1.装身具、2.私的所有、3.電気・通信機械、4.金メッキ、5.歯科医療、6.陶磁器、7.美術工芸品、8.時計、9.万年筆、10.勲章・記章。この大部分は、リサイクルがきくので、無駄にはならないだろう。私がいちばん無駄な使い方だと思うのは、金粉入りの日本酒、あるいは金粉をふりかけたケーキなど。いくら理由をつけたところで、結局は、排泄されて、二度と回収されない。あれほど無駄なものはない。
    最近でも、金粉をふりかけたチョコレート菓子を見たが、どうにも無駄であるような気がする。その時には書かなかったけれど、ハードカバーの本の背表紙に金箔で文字を打ち込むのも不必要ではないかなあ。金はあくまで回収を保証するかたちで利用されるべきだと思う。

  •  同じく2/3の朝日新聞家庭欄に「車内や駅の放送、あんなに必要?」という記事があった。私はふだん電車やバスを利用していないのでその実態は分からないけれど、たまに東京でJRや私鉄に乗った時にはずいぶんいろいろなことをしゃべるものだと驚いたことがある。
     だいぶ昔の話になるが、京都で市バスに乗ろうとすると「危険物の持ち込みはお断りします」というアナウンスがけたたましく叫んだ。わざわざバスに危険物を持ち込むような人はそんなに居ないと思うのだが、あの乗車時のアナウンスは今でも続いているのだろうか。
     行動分析学的に見れば、弁別刺激として機能しない車内放送は単なる雑音に過ぎない。弁別刺激とは、その刺激がある時にはオペラント行動が強化または弱化、その刺激が無い時には強化も弱化もされないような刺激のこと。弁別学習が進むと、生活体は弁別刺激を手がかりとして反応の自発頻度を変えるようになる。
     上述の「危険物の持ち込み」云々は、危険物を持たない人々にとっては弁別刺激として何の価値もない。記事にもあったが「忘れ物にご注意ください」のような放送も、過剰に反復されれば防止にはつながらない。「本日は雨上がりのため、傘の忘れ物には特にご注意ください」というようにその状況に特定的な情報を流せばいくらか効果はあるだろうが。
     車内放送とは全く関係ないが、NHK総合で衛星放送の案内やCMを流すのはヤメテてもらいたいものだ。あれは、衛星放送を受信していない者には何の情報的価値も無い。受信料を払って見ている中で、見たくもないCMを見せられるのは不愉快きわまりない。
【新しく知ったこと】
【生活記録】
【スクラップブック(翌日朝まで、“ ”部分は原文そのまま。他は長谷川による要約。【 】部分は簡単なコメント。)】