じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 白梅。こちらもインフルエンザで寝込んでいるあいだに見頃になってしまった。全般的に去年より蕾がたくさん着いているように思う。夜に散歩した気づいたが、この株の真上には防犯灯がついていた。これが開花を早めた可能性が高い。

1月31日(日)

【思ったこと】
990131(日)[心理]生きがい本の行動分析(1)

 某学会のニュースレターで、「生きがい本の行動分析」という連載を執筆することになった。毎回、「生きがい本」を1冊ずつとりあげ、行動分析的視点でその内容を考察していくという企画である。ここでとりあげる「生きがい本」とは、「生きがいの創造」、「自分が強くなる生き方」、「人生をいかに楽しむか」といった一般読者向けに書かれた書籍類。「元気づけ本」、「やる気を出す本」などもこれに含める予定である。

 ちなみに、大学生協の「和書検索発注サービス 書籍検索」を用いて、「生きがい」をキーワードにあててみると188冊が、また「心理学」をキーワードにあててみると2257冊がマッチする。ところが、「生きがい」と「心理学」をAND条件で結んで検索してみると、わずか7冊だけに絞り込まれてしまう。ほんらい「生きがい」は心理学の根本問題であるはずなのだが、心理学者が正面から取り組んだような本は意外に少ないことが分かる。

 「元気」についても同じようなことが言える。『「ほめ言葉」の事典』の著者である広野穣氏は、その書のまえがきで、“「元気」も「勇気」も心理学の用語ではない。なぜ、人間にとってこれほど大切な言葉が専門の心理学の世界では研究されないのか、わたしたちにとっては不思議だが、...”と疑問を投げかけている。

 もちろん、心理学でも、「生きがい尺度」、「やる気尺度」、「元気尺度」なんていうものを作れば、その程度を測ったり、他の尺度との相関を調べることで個体差の原因をある程度は把握することができるであろう。しかし、いくら個体差を説明したとしても、それだけでは生きがいを作ったり、やる気や元気を増やしたりする方法は見いだせない。

 では、行動分析学の伝統的な研究スタイルが「生きがい」問題をダイレクトに扱えるかどうか、となるとこれにもやや疑問がある。というのは、ほんらい行動分析学は「死人テスト」をパスした具体的な行動を対象としているからである。それゆえ、特定個人の中で問題行動があったり、望ましい行動がなかなか持続しない場合にそれを改善することは大の得意種目ということになるが、個人全体の中で、種々の行動がどのような階層をつくり全体としてどのような生きがいを与えているかというような問題はダイレクトには扱いにくいだろう。

 また、複数の行動やそれをとりまく環境を問題にする場合でも、ダイレクトに「生きがい」と関連づけるのではなく、どちらかと言えば、適応や自立に有用な諸行動の形成に目が向けられることが多いように思う。たとえば上に述べた高齢者の話題でも、高齢者の問題行動をどう改善するかとか、自立に役立つ行動をどう形成していくかというところに関心が向けられる反面、そもそもどうすれば「生きがいづくり」につながるのかといった問題は、なかなか話題として取り上げられにくいところがあった。

 では、行動分析学的な視点が全く無力かと言えば、私はむしろ、諸々の心理学の中では、「生きがい」問題に最も有効に対処できる部分があると考える。スキナーが1979年の日本での講演でも指摘したように、人間の幸福が、「Happiness does not lie in the possession of positive reinforcers; it lies in behaving because positive reinforcers have then followed. 正の強化子を手にしていることではなく、それが結果としてもたらされたがゆえに行動すること」(訳は佐藤方哉訳、行動分析学研究、1990, 5, p.96)という視点から、この社会をとらえ直すことができるからである。

 さて、元の「生きがい本」の話題に戻るが、次々と登場してくる「生きがい本」が、一定の人気を博し、数ヶ月から数年のうちに忘れ去られていくのは何故か。常に流行の域を出ず、究極の生きがい本とならないのは何故だろうか。私はこれは、本というものの限界であろうと考えている。仮に究極の生きがいのようなものがあったとしても、それは個々人が実際に行動しなければ獲得されない。本が与えられるものは、「こうすればこうなる」という随伴性のルール、あるいは「こういうものは素晴らしい」という条件性強化、「こういうものを気にするのはやめよう」という消去の教示にすぎない。とはいえ、そういう本を比較していけばそこに共通する言語的強化やルール支配行動が浮かび上がってくるものと期待される。そんな視点から連載を始めてみたいと考えている。
【ちょっと思ったこと】

  • 「ニキーチンの知育遊び』(暮らしの手帖社)で有名なポリス・ニキーチン氏が1/30未明にモスクワ市内ので死去。1916年生まれというから82歳か。息子が2歳から幼稚園入園児の頃に、この「知育遊び」にヒントを得て、木製立方体を張り合わせたいろんなパズルを作ったことがあった。知育というよりも、だんだん大人が楽しむための立体パズルづくりにハマってしまったが。
【新しく知ったこと】
  • 1/31朝の「所さんの目がテン」でカルメ焼きの上手な作り方を紹介していた。ザラメシロップを130度で沸騰するように煮詰め、これに重曹と泡固定用の卵白を少々入れて手早く混ぜる。ちなみに綿菓子のほうは、ザラメそのものを185度で溶かし、空気中に噴射して瞬間?冷却して作るという原理。そういえばカルメ焼きは久しく食べていないなあ。
【生活記録】
【スクラップブック(翌日朝まで、“ ”部分は原文そのまま。他は長谷川による要約。【 】部分は簡単なコメント。)】
  • 1/31投票の岡山市長選挙は、萩原誠司氏が当選、13万6638票。現職の安宅敬祐氏は10万8368票、新人の宇野武夫氏は1万6043票。投票率は54.55%。