じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

1月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

1月5日(火)

【思ったこと】
990105(火)[心理]今年のテーマ:がくもん編

 仕事始めにあたって今年取り組みたいテーマをいくつか。あっ、これらはもちろん、出版関係の仕事を片づけてからの話。
  1.  個々の行動の分析や改善ではなく、一個体全体における諸行動を包括的にとらえ、高齢者や若者の生きがいを行動随伴性の観点からとらえ直してみたい。具体的には学部生の卒論研究と連携する形でのインタビュー活動、観察、一定の要因操作による分析。また、その一方で、よく売れている「生きがい本」や「やる気本」で共通に使われている言語的強化のしくみを分類検討していきたい。

     正月に読んだ本のひとつ『「ほめ言葉」の辞典』(広野穣、ソーテック社)の冒頭には
    「元気」も「勇気」も、心理学の用語ではない。なぜ、人間にとってこれほど大切な言葉が専門の心理学の世界では研究されていないのか、わたしたちにとっては不思議だが、その代わりに、そのような精神が人の心から失われていくプロセスやメカニズムについては、貴重な研究を積み重ねている。
    と書かれてあった。確かに、「元気」や「勇気」や心理学の説明概念としては不適切であるが、必ずしも失われていくところだけが研究対象であるとは私は思わない。「元気づける」とか「勇気づける」いうことがどういう働きかけに相当しているのかを具体的に明らかにすることはできるだろうし、そういう言葉がどういう場面で言語的な強化子として有効に働いているのかを検討することもできる。このあたりを大いにさぐっていたいと思う。
     余談だが、この本の第一章のタイトルは“満たされない「受容欲求」に苦しむ人たちへの愛のメッセージ”となっているが、本当は「欲求」ではなく、社会的な承認や他者からの愛情表現がその人にとって過剰な習得性好子になっており、好子除去阻止の随伴性がその人のかなりの行動をコントロールしているところに問題があるように思う。というように、欲求とか不安、恐怖という言葉で語られている問題を好子や嫌子に置き換え、その中で何が操作可能、何が修正可能なのかを検討していく指針を示していくことも行動分析学の重要な課題であろうと思う。

    ※<追記>さいきんしばしば議論されている「競争原理」や「生涯現役社会」、「裁量労働制」など、国民の生活全般に関わる政策課題についても、一般論ではなくて、どのような場面にはどのよう行動随伴性が働いているのかを詳細に分析してみる必要がある。これ無くしては、メリットもデメリットも論じられない。

  2.  心理学における実験的方法の意義は十分に認めるが、特定の閉じたシステムの中でしか意味をなさないような仮説検証やモデル改良のための実験研究、人工的環境の中での単なるシミュレーション的な実験について、昨年に引き続き批判活動を行っていきたい。
     心理学者が社会現象について「解説」する時の典型的なパターンの1つに
    この現象に関連した研究として、○○は次のような実験を行っています(といって、実験の説明を始める)。この実験結果は、××というモデルで説明できます。今回の社会現象も同じように説明できます。
    というのがある。本当は何も説明していない。ただ類似の実験を引き合いに出して、よく似ていますねえと言っているだけなんだが。一般性の高い抽象理論を追い求めるよりも、個々の状況のもとで何が働いているのか、そのうち何に注目すれば改善に結びつくのかという見方を養うことのほうが大切であるように思う。このあたり、後期の授業に合わせて取り組むので動き出しは少々遅れる予定。

  3.  行動分析学の概念的枠組みはきわめてシンプルではあるが、現実の行動にあてはめる段階での誤用が非常に多いように思う。よく引き合いに出されるのが「寒い時にストーブに火をつける」、「ソフトクリームを落とさないようにバランスをとりながら歩く」、「歯科医院の治療台で暴れると治療時間が長引く」といった行動現象に関与している随伴性。また、『行動分析学入門』(杉山ほか、産業図書)の130頁で指摘されているように、期末リポートの課題遂行はいっけん固定時隔スケジュールで維持されているように思われるが実はかなりの点で著しく異なっている。「行動分析学ではうまく説明できない」として紹介されている事例の多くは、じつは、基本原理の誤りの証拠ではなく、弁別刺激、行動、強化子を正しく把握しきれていないところに起因している場合が多い。このあたりをはっきりさせておく必要がある。

  4.  行動分析学の基本的な考え方は、行動の原因を、個体と外界との関わりに求めるところにある。原因を内部に求めるものではいことはすぐに分かるが、ともすれば、行動の原因を外界に求めているというように錯覚してしまう。外界との関わりに求めるのと、外界に求めるのでは全然意味が違うんだが。
     その意味から言うと、独立変数操作の中で使われている刺激概念は、個体から独立して存在し操作や測定ができる概念と、個体と外界との関わりの中で意味をもつ概念に明確に分離していったほうがよいのではないかと思う。たとえば、「ライトの明るさを2倍にする」というのは個体から独立した刺激操作であるが、「ライトが習得性好子としての機能をもつ」というのは、個体と外界の関わりのなかで形成されたものであって、個体から独立した刺激自体の変化ではない。「習得性好子を反応が10回起きるごとに提示する」というのは、ごく短期間の中では独立変数操作に相当するが、生きがい論で問題にするような長期間のスケールの中では機械的には扱えない。「習得性好子」の機能それ自体が、提示を繰り返すうちに変質していくからである。このあたりの概念的枠組みの再編成を考えていきたいと思う。
【ちょっと思ったこと】
【新しく知ったこと】
【生活記録】
【夕食後の夫婦の散歩】------106日目(妻は99日目)[娘は5日、息子は4日]。ポケット・ピカチューで4395歩----
 農学部農場〜文学部〜時計台前〜西門前郵便ポスト(年賀状出し)〜事務局前のお決まりコース。北九州との歩数の比較が話題になった。予想通り、妻は子ども時代に歩いたことのある道を長めに見積もっていることが判明した。
【スクラップブック(翌日朝まで、“ ”部分は原文そのまま。他は長谷川による要約。【 】部分は簡単なコメント。)】
  • 正月三が日の初詣客は昨年比117万円増の8816万人で、統計をとりはじめた1973年以降の最高。多い順に明治神宮340万人、成田山新勝寺301万人など。
  • 岡山県内の人出も過去最高(1985年以降)の118万人。いちばん多いのは最上稲荷で47万8000人。倉敷チボリはマイナス19000人の5万6000人。
  • 気象庁の5日の発表によれば、昨年の日本全体の平均気温は平年より+1.3度で、記録のある1898年以降最も暑い年。全国2/3にあたる95地点で最高記録を塗り替えた。
  • 哲多町が滞在型市民農園構想。ニーズ調査を今年度中に実施。
  • 『星の王子様』の書籍やCD-ROMの売れ行き好調。97年には販売部数が前年5割増。98年6月発売のCD-ROMは同年11月までに約25000部発売。4月には「箱根サン=テグジュペリ星の王子様ミュージーアム」が誕生[1/6朝日]
  • 樹木を主体とした国内最大規模の植物園「とっとり花回廊」が4/18開園をめざして準備をすすめている。[1/6NHK中国地方ローカル]