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昨日の日記

3月9日(月)

【思ったこと】

980309(月)
[一般]言葉と文化、どっちが先か(その7)英語教育とBasic English(1)
 少々脱線するが、昨日の日記にちょっとだけ引用した「Basic English」について考えてみたいと思う。
 「Basic English」というのは、イギリスの言語・心理学者のC.K.Ogden(オグデン、1889-1957)が考案した英語活用法で、「850語で英語は書ける」といったキャッチフレーズで知られている。5-6年前に、ちょっと興味をもって5-6冊の解説書を読んだことがあった。岡大の図書館には、OgdenとRichardsが書いた『The meaning of meaning.』の原書もある。

 「○○語でできる...」などと言うと、出現頻度の高い語を選んだだけであろうなどと思われそうだが、Ogdenの850語は、全く別の観点から選ばれたものである。簡単に言えば、日常的に使われる英語表現をできる限り少ない種類の言葉で置き換えたとしたら何語になるか、というような視点から精選されたものであり、語彙数を最小限度に絞った英英辞典のようなものであると考えてもよいだろう。このシリーズでとりあげた所有を表す英語の基本動詞の本質を知る上でも貴重な情報を与えてくれる。

 「Basic English」はネイティブな英語ではない。例えば、私が関連書を読んでいちばん奇妙に思ったのは、「want」の代わりに「have a desire」を使うこと。例えば「I want to go.」は「I have a desire to go.」となる。このほか、「Basic English」からは「next」が外されているので、「next week」は「the coming week」と表現されることになる。

 「Basic English」については何冊か解説書が出ているが、少なくとも日本の学校教育では活かされていないようだ。その最大の理由は、現行の英語教育が「読むこと」を主体にしているためであろう。受験や専門に必要な英文は決して850語だけで書かれているわけではないので、「Basic English」をいくら学んでもスラスラと英文が読めるようにはならないのだ。また、Web日記界にも何人かおられるが、すでに十分な英語力を身につけた人からみれば、初めからネイティブに近い英語に馴れておいたほうが得だよ、という意見が出てくるものと思う。

 しかし、その一方で、大部分の日本人は、中学・高校で6年間も英語教育を受けながら、自由にしゃべったり書いたりするレベルに到達できない点にも目を向ける必要がある。その再検討の過程では、「まず基本語句850を徹底的に理解し活用できるようにしたうえで、徐々に語彙を増やしネイティブな英語に近づけていく」という教え方も、候補にあげてよいのではないかという気がしている。
 時間がないので、この続きは明日以降に述べる。とりあえず、私の手元にある「Basic English」の参考書をリストアップしておきたい(価格は改訂されているものと思う。絶版もあるかも)
  • Ogden, C. K. (1977).『The Basic Words.』北星堂書店.ISBN4-590-00009-1 \1300
  • 牧雅夫 (1980).『自信をもって英作文を教える--Basic Englishのすすめ--』北星堂書店.¥980
  • 室勝 (1962).『500語でできる英語会話』 評論社.ISBN4-566-05857-3 \790
  • 室勝・小高一夫 (1982).『英語を書く本:BASIC ENGLISHの理論と応用』 洋販出版. ISBN4-89684-000-3. \1240
  • 室勝 (1985).『ベーシックイングリッシュ入門:850語で英語は書ける』 洋販出版. ISBN4-89684-002-X. ¥1850
※たいがいの本は、初めのほうで「Basic English」の特徴や成立の経緯を解説し、残りの大部分は例文紹介となっているので、どれを買っても大差ない。なお、「Basic English」をネイティブな英語に近づけたと思われるものにケリー伊藤氏の「Plain English」がある。
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