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じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 2月21日の午後、岡山市北区三門中町にある國神社を初めて参拝した。山の頂上にあり、「近郷に比類のない立派な堂々とした石段」が特徴。私が数えた限りでは全部で158段あった。

2026年2月22日(日)




【連載】サイエンスZERO『体の秩序を守る!“細胞競合”研究最前線』(1)

 NHK『サイエンスZERO』で2月15日に初回放送された、

体の秩序を守る!“細胞競合”研究最前線

についてのメモと感想。これまで体内に発生した「ちょい悪」細胞は免疫細胞の働きで排除されると思っていたが、それとは別の防衛システムがあると知り驚いた。

 放送の冒頭では私たちの体には37兆個の細胞で構成されており、脂肪、小腸、目、皮膚、耳、胃、...というように、いろいろな種類があると紹介された。放送では便宜上これらを「一般の細胞(体の組織を作る細胞たち)」と呼ぶ。一般の細胞に含まれない細胞としては免疫細胞などがある。今回の放送内容は、一般の細胞にも体を守る力があるという話題であった。

 放送で紹介された動画(京都大学・藤田恭之さん提供)には、癌になりうる異常な細胞を一般の細胞が取り囲み、最終的に体の組織から追い出してしまう様子が記録されていた。藤田さんはこの「異常な細胞」を「がんではないが、がんになりそうな“ちょい悪”細胞」と呼んでいる。がん細胞と異なり『ちょい悪細胞』は免疫細胞の攻撃対象にはならない。代わりにそれらを見つけ出し排除する機能が一般細胞に存在する。この機能が『細胞競合』のメカニズムである。

 藤田さんの弟子にあたる昆俊亮さん(東京理科大学)は、世界で初めて、マウスの小腸の絨毛に発生した『ちょい悪』細胞を一般の細胞たちが追い出す『細胞競合』の決定的瞬間の撮影に成功した。腸内では『一般の細胞』たちがくっついて並んでいるが、その中に異常な細胞が現れると隣の細胞がそれを察知、数の力で圧力をかけて外側に追い出す。合唱団に喩えれば、和を守らない歌い手を他のメンバーの力で舞台から追い出すようなものであった。つまり一般の細胞たちは数の力で体を守っていたのである。

 マウスの例に限らず、私たちの体のなかでも毎日『細胞競合』が起こっている。井垣達史さん(京都大学)によれば、私たち人間の体は毎日数千億の細胞が入れ替わっており、その中で遺伝子に変異が起こったりウイルス感染したといった少しだけ異常を持った細胞が生まれてしまう。一般の細胞がこれを見つけて体から追い出すのが『細胞競合』である。普通の体を作るような細胞がそういった異常な細胞を見つけて積極的に追い出すというのは生物学的にも新しい視点。今まで全く違う方向で理解してきたものを『細胞競合』という視点で理解すると違うものが見えてきたり、病気などで起こった不思議な現象が『細胞競合』で説明できるといった、かなり色々な現象に関わっていることが分かってきた【改変あり】。

 ここでいったん感想・考察を述べる。まず、細胞競合がいつ、誰によって発見されたのかをChatGPTに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。





**細胞競合(cell competition)**は、1970年代にショウジョウバエを用いた発生遺伝学研究の中で発見されました。
  • ## 発見者

    * **Antonio García-Bellido**
    * **Pedro Ripoll**
    * **Ginés Morata**

  • ## 発見時期

    * **1975年**
    * 学術誌 *Nature* に発表

  • ## 発見の内容(概要)

    ショウジョウバエの翅原基において、**Minute変異(リボソームタンパク質遺伝子変異)を持つ細胞**が、野生型細胞とモザイク状に共存すると、

    * Minute細胞は単独では生存可能であるにもかかわらず
    * 野生型細胞との競合環境では選択的に排除(アポトーシス誘導)される

    という現象が観察されました。

    これは

    > 「細胞の増殖能力や適応度の相対的差異に基づいて、より“適応度の低い”細胞が排除される現象」
    > として定義され、後に **cell competition(細胞競合)** と呼ばれるようになりました。

  • ## その後の発展

    2000年代以降、

    * Mycの過剰発現細胞
    * がん関連変異細胞
    * 哺乳類組織

    でも同様の現象が確認され、

    * 組織恒常性
    * 発生制御
    * がんの初期段階

    との関連が議論されています。





 次に、『細胞競合』の最新の研究に日本の研究者はどのように貢献しているのか尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。




日本の研究者は近年の **細胞競合(cell competition)研究** において、基礎機構の解明から病理的状態での役割評価、がんや老化との関連まで多面的な貢献をしています。以下に代表的な最新の例を整理します(主に2020年前後〜2025年頃までの成果)。『

  1. 細胞レベルの「適応度」選択の新機構の発見(2025)

    * 日本の研究チームは、**細胞内のリボソーム同士の競合**を明らかにしました。
    これは単純に「細胞同士の競争」だけでなく、**細胞内機械(リボソーム)の性能差が質の低いリボソームの分解につながる**仕組みを示したものです。
    **この発見は細胞内の品質管理機構としての新しい視点**を提示しています。

  2. 多細胞体の恒常性/発生ロバストネスと細胞競合(2025)

    * 大阪大学の **石谷太(いしたに とう)氏** らは、**脊椎動物における細胞競合が多細胞体の堅牢性(ロバストネス)を維持する重要な原理である**ことをレビューでまとめています。
    多様な細胞が秩序立って機能するように、細胞競合が「最適な細胞集団」を選択・維持する役割について解説しています。

  3. 分子機構の総合的探索と認識・制御因子の同定(進行中)

    **藤田恭之** らの研究プロジェクトは、「**細胞競合を誘発する細胞間認識機構**」および「**普遍的な分子制御メカニズム**」の同定を目指し、網羅的解析を実施しています。
    正常細胞と変異細胞との相互作用や「どの違いを細胞が検出して競合を起こすのか」を構造的に理解することが進められています。

  4. がんとの関連:競合機構の変容と浸潤

    * 東京理科大学 **昆研究室** は、**ヒト大腸がんモデルで細胞競合がどのように変化し、がん細胞の浸潤につながるか**を示しました。
    がん関連シグナル(例:Wnt/Ras)によって正常な競合機構が歪められ、腫瘍浸潤を促す可能性が示されています。

  5. 新たな研究テーマと支援プロジェクト

    * 個別研究として、**小川基行(Motoyuki Ogawa)氏** らが「**多細胞自律性の維持機構としての細胞競合**」に関する研究を進めているプロジェクトが文部科学省助成に採択されています。
    この系統的な助成は、細胞競合の基礎的理解を深めるための研究基盤を強化しています。

  6. まとめ:日本の貢献ポイント

    |研究領域        |主な貢献                    |
    |ーーーーーーーーーー  |ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー- |
    |**基本原理の理解**  |リボソーム競合や細胞認識の分子メカニズムの発見 |
    |**発生と恒常性**   |多細胞体のロバストネス維持における役割の提示  |
    |**がん生物学への応用**|がんにおける競合機構の変容と浸潤との関連    |
    |**支援基盤の整備**  |大規模助成や国際シンポジウム開催を通じた研究推進|

日本のグループは基礎研究から病理学的応用まで幅広く取り組んでおり、**細胞競合の分子機構・生理機能のさらなる解明と臨床応用への橋渡し**に貢献しています。

【出典省略】