【連載】サイエンスZERO『色彩の科学へようこそ! “黒”は暗黒で漆黒!?』(2)
昨日に続いて、
●2025年1月5日初回放送色彩の科学へようこそ!“黒”は暗黒で漆黒!?
のメモと感想。
放送では続いて、『黒』を共通点とする3つの研究が紹介された。
1つめは中山新さん(東京大学大気海洋研究所)のエゾハリイカの研究。
- エゾハリイカは日本近海に生息するコウイカの一種で体長は12cmほど。
- エゾハリイカのオスは腕でハートマークを作ってメスに求愛する。
- 繁殖期にあたる2月~3月、中山さんは毎日9時~17時までひたすらカメラを構えて観察。4年間に1300時間の映像を記録した。
- エゾハリイカが交尾に至るまでにはさまざまな儀式(求愛行動)が必要。オスは、
- メスに水を吹きつける。
- 長い腕でメスをなでる。
- 体の後ろ側に墨を吐いて自分の体を白くして目立たせる。
という一連の行動で交尾に至る。
- イカは一色型の色覚なので、明暗のみが分かる。白黒のコントラストは有効。
続いてスタジオゲストの堀内隆彦さん(日本色彩学会会長)から、黒とはどういう色かについて解説があった【要約・改変あり】。
- 科学者にとっては『黒』は未知なることの象徴。宇宙の未解明の現象を説明するために仮説上の物質を『ダークマター』と呼ぶ。
- ゲーテは、黒地震は我々の心や感情にダイレクトにインパクトを残す主役となる色だとらえたが、その一方では、他の色や他の要素を引き立たせる役割も果たす。そういう主役にも引き立て役にもなれる珍しい色が黒。
2番目は、南川卓也さん(原子力科学研究所)による漆黒のウルシの研究。
- 日本の漆器は漆の木を削ってそこからにじみ出る樹液(生漆)を原料としている。
- 生漆(きうるし)は茶褐色だが、鉄を加えると真っ黒になる(黒漆)。
- 黒漆の主成分は、有機化学者の眞島利行(1874-1962)によって『ウルシオール』と名づけられた。
- しかし鉄を加えるとなぜ漆黒になるのかは100年間謎であった。
- 黒漆に含まれる鉄は3/1000に過ぎない。
- 大型放射光施設SPring-8で分析したところ、漆の中にある鉄イオンはすべてFe3+であることが分かった。しかしこれは本来、黄色になるようなもの。
- そこで、大強度陽子加速器施設J-PARCでウルシオールの構造を分析したところ、生漆ではウルシオール分子は離れた状態で整列していたのに対して、黒漆では鉄が触媒となりウルシオール分子同士が結合し、あらゆる可視の領域の光を吸収するようになったことが分かった。
3番目は、光の吸収率99.98%の黒『至高の暗黒シート』を日本が開発したという雨宮邦招さん(産業技術総合研究所)の研究。
- スタジオに『至高の暗黒シート』が持ち込まれた。赤いライトをあてると普通の黒の画用紙の上では反射して見えるが、『至高の暗黒シート』では光が消えてしまう。
- 2014年にイギリスで99.96%、2019年にアメリカで99.995%というように黒さ記録を更新。
- 光吸収率の高い黒は光学機器で使われ需要が高まっている。
- 雨宮さんの開発したシートは手で触れることのできるものとしては世界最高のレベル。
- シートの表面には円錐状の50μmの小さな穴がたくさん敷き詰められている(光閉じ込め構造)。
- この表面の構造は高エネルギーイオンビームと化学エッチングによって作成された。
- 1996年には99.6%の吸収率を達成。『究極の暗黒シート』と名づけた。
- その後、くすみを減らす材料を4年にわたり探索し、カシューオイル塗料により99.98%を達成した。
- 光度や光束、照度などの明るさの基準値を計測する際には、黒い物質で光を吸収して検知する必要があり、とにかく黒いものが求められる。
- 暗黒シートは原理的には99.99%まで実現可能。
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