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じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2026年の『天文年鑑』(誠文堂新光社)を購入した。「1500円+税」となっており、2025年版の「1364円+税」から値上げされた。
 この本は1963年から欠かさず購入しており、今回で64冊目となる【写真右参照】。

 なお、2026年の任意の月齢を知るために必要な「特別の数α」は「9」になる。2009年1月22日に記した計算法を2026年の数値に合わせた上で再掲すると以下のようになる。
月の月齢を知る簡便な方法として「(m+d+α) mod 30」という計算法がある。mは月(但し1月から5月は、1、2、3、4、5の代わりに2、4、2、4、4を代入。「西に洋々日が沈む」と覚える)、dは日、αはその年に特有の数で今年は9(毎年11ずつ増え、30を超えたら30を減じた値とする)。
  • 1月24日であれば、m=2、d=24、α=9なので(m+d+α) mod 30=(2+24+9) mod 30=5。実際の月齢は21時の時点で5.7。
  • 7月4日は、m=7、d=4、α=9なので(m+d+α) mod 30=(7+4+9) mod 30=20。実際の月齢は21時の時点で19.4。
  • 8月22日は、m=8、d=22、α=9なので(m+d+α) mod 30=(8+22+9) mod 30=10。実際の月齢は21時の時点で9.8。
というように実際の月齢との誤差は±1以内におさめることができる。海外旅行先で月明かりの無い美しい星空やオーロラを眺めたい人は知っておくと便利。

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2025年12月18日(木)




【小さな話題】「そろそろ2050年分点」は間違っていた
 上記の通り、今年もまた12月のこの時期に『天文年鑑』を購入した。今回1つ意外だったのは相変わらず2000年分点が採用されていたことであった。
 2015年11月20日の日記に、
1963年当時は1950.0分点、いまは2000.0分点となっていて、同じ時刻に見える星座の位置が若干変わっている。2025年を過ぎれば2050.0分点が採用され、さらに大きく変わるであろう。真冬の夕空にさそり座、真夏の夕空にオリオン座が輝く時代までは到底長生きできないが。
と述べたように、2026年は2000年よりは2050年に近いのでそろそろ「2050年分点」に移行する時期ではないかと思ったからである。
 ちなみにウィキペディア>では、「分点」について以下のように説明されている。
地球の歳差により、天球上における分点の位置は移動する。それに伴い赤経・赤緯は年々変化するので、赤経・赤緯によって天体の位置を表す際には、それが何年の分点による赤経・赤緯であるかを示す必要がある。星図などでよく使われるのは1950年のものと2000年のもので、それぞれ1950.0分点、2000.0分点と表現する。
 ではなぜ2000年分点のままなのか? さっそくChatGPTに以下のような質問をさせていただいた。

【質問】少し前に発売された『天文年鑑』2026年版は2000年分点になっていました。そろそろ2050年分点に切り替えてもよいのではないかと思うのですが、なぜ2000年分点のままなのでしょうか?

いただいた回答は以下の通り。




結論から言えば、**2000年分点(J2000.0)が天文学・天文暦の事実上の国際標準として確立しており、2050年分点に切り替える実務的・学術的必然性がない**ためです。

以下、理由を整理します。

  1. 「分点」と「基準座標系」の位置づけの変化
    かつては

    * **1950年分点(B1950.0)**
    * **2000年分点(J2000.0)**

    のように、「分点(春分点)」を基準にした座標系が天文暦の中心でした。

    しかし現在は、

    * **ICRS(国際天球基準座標系)**
    * それを実装した **J2000.0 座標系**

    が、**分点そのものよりも「慣性基準系」**として重視されています。

    J2000.0 は

    > *2000年1月1日12時TTにおける平均赤道・平均分点*
    > を基準としますが、実際には
    > **ICRSにほぼ一致する固定基準**
    > として扱われています。

    そのため、「年が進んだから新しい分点に更新する」という発想自体が、現在の天文学では主流ではありません。

  2. J2000.0 は“過去の年”でも問題がない

    分点は年々 **歳差運動** により移動しますが、

    * 観測値や天体位置は

    **J2000.0 → 観測時刻**
    へ数式で正確に変換可能
    * 変換精度は、観測誤差よりはるかに小さい

    ため、**基準が2000年であることによる実害はありません**。

    実際、2025年や2030年の天体位置も、
    「J2000.0基準で与え → 現在の日時に変換」
    という手順で問題なく扱えます。

  3. 2050年分点(J2050.0)は“標準になっていない”

    「2050年分点」は理論的には定義可能ですが、* IAU(国際天文学連合)が * 新たな標準分点として
    * J2050.0 を採用した事実はない
    * 惑星暦(JPL DE440/441 など)
    * 星表(Gaia, Hipparcos)

    **すべて J2000.0 / ICRS 基準**

    という状況です。

    つまり、2050年分点に切り替えると:
    • 国際標準から外れる
    • 星表・ソフト・論文との互換性が低下
    • 利用者側に変換負担を押し付ける

    というデメリットが生じます。

  4. 『天文年鑑』は「教育・実用」を重視している

    『天文年鑑』(誠文堂新光社)は、

    * 研究者専用ではなく
    * 教育・観測・アマチュア用途が中心

    です。
    そのため、
    • 国際的に最も流通している基準
    • 他の資料・ソフトと食い違わない表記

    を優先し、**J2000.0 を維持する方が合理的**です。

    頻繁に分点を変更すると、
    * 座標の比較が難しくなる
    * 古い資料との連続性が失われる

    という実用上の問題もあります。

  5. かつての「1950→2000」切替とは事情が違う

    B1950.0 → J2000.0 への移行は、
    • FK4 → FK5 星表への刷新
    • 相対論補正の導入
    • 観測精度の飛躍的向上

    という **理論・観測体系の大転換** に伴うものでした。

    一方、
    * J2000.0 → J2050.0
    は **単なる年代更新** にすぎず、理論的進歩を伴いません。

    この点が決定的に異なります。

  6. ## まとめ
    『天文年鑑』2026年版が依然として **2000年分点(J2000.0)** を用いている理由は、以下に集約されます。
    • J2000.0 は現在も国際標準(ICRSに整合)
    • 年代が古くても精度・実用性に問題がない
    • 2050年分点は標準化されていない
    • 利用者の混乱や互換性低下を避けられる
    したがって、**「そろそろ切り替えてもよい」のではなく、「切り替える理由がない」**というのが、天文学的にも出版実務的にも妥当な判断です。





 実際、『天文年鑑 2026』の冒頭(9頁)の『凡例』には、2025年版同様に
現在普及している自動導入のい天体望遠鏡に必要な天体の座標軸は,観測時の視一である.主な恒星,星雲,星団,銀河,連星などの表の赤経,赤緯座標の分点は2000.0である,本書の「大惑星のこよみ」では,視位置が表示されている.そこで,分点2000.0の星図に大惑星の位置を書き込むときに必要な補正値を表示してある.
となっていて、2000年分点のままにしておき望遠鏡の自動導入などに利便性を与えることが記されているようだ。

 では実際問題として、1950年分点で作られた星座早見表を頼りに2050年の夜空を眺めると何か不都合が起きるのか?という問題になるが、ChatGPTによれば100年間のズレはおよそ1.40度で満月の直径の約3倍に相当するという。例えば1950年の春分の日の夜に南を見ていたとすると、2050年の同じ条件では、同じ星座は、わずかに西寄り(赤経が小さい方向)に位置するという。1950年の特定の日に東の空からシリウスが昇る時刻を調べ、2050年の同じ日の同時刻に同じ場所に立てばシリウスはすでに満月3個分の高さに見えているはずである。
 もっとも、「同じ日」と言っても例えば春分の瞬間が夜中の1時であったり23時であったりすればその差も出るし、また閏年の設定によって「同じ日付」が1日ズレることもあり、1950年と2050年の違いを【観念ではなく】体感するというのはなかなか難しそうである。