【連載】チコちゃんに叱られる! 「金(きん)のでき方」と中性子星、核融合
5月30日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。
この日は、
- 金(きん)ってなに?
- なぜ子どもは内緒話をする?
- はんぺんってなに?
という3つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。なお以下、いちいちフリガナはつけないが、金は「かね」ではなく「きん」を意味するものとする。
この疑問については、単に「金とは原子番号79の元素」であると答えればそれで終わりという気もしたが、放送では、
●金はどのようにできて私たちの周りに存在するようになった?
という点に焦点があてられていた。確かにそう言われてみると、答えは出しにくい。じっさい街角インタビューでは、
- 地球の中で勝手に作られる
- ミネラルとかそういったものの結晶が化学変化して金になった
という珍答が紹介されていたが、地球内部の圧力がどんなに高かったとしても新しい原子が勝手に作られることはないし、化学変化で金ができるというならとっくの昔に錬金術師が製法を確立していたはずだ。
前置きが長くなったが、放送では「金は宇宙のかなたから飛んできたもの」が正解であると説明された。
貴金属の成り立ちを研究している和南城伸也さん(東北大学)&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
- 金は金山など地中から採掘されることが多いが、実は地球の中で作られたわけではなく、宇宙で星と星が合体する時に生まれた。
- 人類が金の採掘を始めたのはおよそ6000年前。
- これまで人類が採掘した金の量はおよそ21万3000t。50mプールでいうと僅か4杯分。
- この先採掘可能な金の量は50mプール約1杯分の約6万4000tであると推定されている(2024年末時点)。
- 赤色巨星が爆発すると中性子星が生まれる。これは主に中性子(粒子)が詰まった高密度で重い星であり、サッカーボール1個分の体積の重さは富士山と同じになるほど重い。
- 2つの中性子星が近づくとお互いに引き合い合体する。中性子星どうしがぶつかると大量の中性子が渦状に飛び散る。
- この時、渦の中では中性子が結合を始め核融合が生まれる。
- 中性子30個が一瞬にしてくっつくと鉄の原子が作られ(中性子以外に陽子も結合)、61個で銀に変化、そして118個くっつくと金が生まれる。
- 金が生まれるには中性子星どうしがぶつかる時のすさまじいエネルギーが必要。
- 宇宙に飛び散った金は、ガスやチリと混ざり小さな塊になる。さらに塊どうしが衝突を繰り返し大きな星になる。その1つが地球。
- 金を含んだ小さな塊から星ができるので、その星の内部には金が存在。
- 地球に存在している金の総量はおよそ960兆tと推定される。
- 地球の表面に近い部分でないと採掘できないため、この先じっさいに採掘できるのは約6万4000tに限られると言われている。
- しかし近年、深海の熱水噴出孔から金を取り出す技術が確立した。この熱水は地中深くのマグマで熱せられて噴き出しているため、今まで手が届かなかったマグマに融けている金を含んでいる。
- 熱水に溶けている金の粒子はきわめて小さいが、藻を材料としたシートに付着させることで金を回収することができるようになった。
- なお、金は隕石として地球にやってくる場合もある。
ここからは私の感想・考察を述べる。
まず、私自身が高校までで習った乏しい知識によれば、化学変化により変身する分子と異なり、原子というのはそんなに簡単に融合したり分裂したりするものではない。原子量の多い原子が生まれるためには莫大なエネルギーが必要であり、地球内部の圧力程度で勝手に合成されるようなものではない。ということで中性子星の衝突という説明が説得力を持つことになる。ウィキペディアによれば、恒星が中性子星になるかどうかはその星の質量によって決まる。
- 太陽質量の約0.46倍より小さい恒星は赤色矮星とも呼ばれ、温度が低いためヘリウム燃焼は発生せず、水素を燃やし尽くした後はそのままヘリウム型の白色矮星になる。
- 太陽質量の約0.46倍から約8倍までの恒星では、中心核で水素を燃やしつくした後でヘリウム燃焼が始まり、炭素・酸素・窒素が作られるが、それ以上の核融合反応は進まず、赤色巨星の段階を経て白色矮星となる。
- 太陽質量の8〜10倍の質量を持つ恒星では炭素・酸素からなる中心核でさらに核融合反応が起こり、酸素やネオン・マグネシウムからなる核が作られる。この段階の中心核では電子の縮退圧が重力と拮抗するようになり、この中心核の周囲の球殻状の部分で炭素の核融合が進むという構造になる。【以下略】。
- 太陽質量の10倍以上の大質量星ではもともと密度が大きくないために、中心核が途中で縮退することなく、次々に元素が核融合反応してはさらに重い元素が作られ、最終的に鉄の中心核が作られる段階まで核反応が進む。鉄原子は原子核の結合エネルギーが最も大きいためにこれ以上の核融合は起こらず、熱源がなくなるために鉄でできた中心核は重力収縮しながら断熱圧縮により温度を上げていく。温度が約1.00×1010度に達すると鉄が光子を吸収し、ヘリウムと中性子に分解する鉄の光分解という吸熱反応が起きて急激に圧力を失う。これによって重力を支えられなくなり、星全体が重力崩壊で潰れて超新星爆発を起こす。爆発の後には爆縮された芯が残る。残った芯の質量が太陽の2-3倍程度なら中性子星として残るが、それ以上ならば重力崩壊が止まることなくブラックホールになる。
以上の説明を読むと、中性子星どうしが衝突しなくても、大質量星の内部でマグネシウムや鉄が作られることがあるようだ。
以上までのところで疑問として残るのは、宇宙で作られる金属原子のうち、鉄や銅などに比べてなぜ金は作られにくいのかということである。Copilotに、
●宇宙では中性子星の衝突や大質量星の内部における核融合で金属原子が作られると聞きましたが、鉄がたくさん作られるのに対して金(きん)がごくわずかしか作られないのはなぜでしょうか?
と尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
それは、金と鉄の生成プロセスの違いに関係しています。
### 鉄の生成
鉄は、大質量星の内部で行われる核融合反応の終着点です。星の中心部では、まず水素がヘリウムに、次にヘリウムが炭素へ…といった形で、より重い元素が次々に作られます。しかし、鉄よりも重い元素を作るにはエネルギーが必要になり、逆にエネルギーを奪ってしまうため、星の核融合反応はそこで停止します。結果として、鉄は星の進化の最終段階で大量に蓄積され、超新星爆発によって宇宙にばら撒かれます。
### 金の生成
金のような鉄よりも重い元素は、通常の星の核融合では作れません。代わりに、**中性子星の衝突**や**超新星爆発**といった極端な高エネルギー環境で作られます。特に**rプロセス(急速中性子捕獲過程)**と呼ばれるプロセスが重要です。これは、爆発的なエネルギーによって大量の中性子が原子核に取り込まれ、一気に非常に重い元素が形成される現象です。しかし、このようなイベントは宇宙でも非常に稀であり、金の生成量は限られています。
### まとめ
鉄は恒星内部の核融合で比較的安定して大量に作られるのに対し、金は特異な天体現象によってしか生成されないため、ごくわずかしか存在しません。だからこそ、金は希少で価値があるのですね。
宇宙の元素生成、面白いですよね。他にも気になることがあれば聞いてください!
このほか、
- 鉄は恒星内部の核融合で比較的安定して大量に作られるとのことですが、なぜ鉄より重い元素は作られにくいのでしょうか。鉄の原子には他の原子にはない構造上の特徴があるのでしょうか?
- 核融合には莫大なエネルギーが必要だと聞きましたが、逆に水素爆弾のようにエネルギーを放出する場合もあるようです。なぜエネルギーが必要な場合と、エネルギーを放出する場合があるのでしょうか?
といった疑問が残ったが、あいにく、CopilotもChatGPも混雑中でなかなか相手をしてくれないため、時間を置いて改めて質問することにした。回答が得られた場合は、翌日の日記に記す予定。
次回に続く。
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