じぶん更新日記1997年5月6日開設Copyright(C)長谷川芳典 |
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妻の実家のある北九州で見かけるマネキン人形。少しだけ向かって左を(本人は右方向を)向いている。↓の記事参照。もっともこれは、お店の入口が人形の左側にあるためかもしれない。 |
【連載】チコちゃんに叱られる! 「首をかしげるとかわいい」/ベビースキーマ、肖像画の向き 4月25日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。なお、4月21日に記したように、この回は土曜日朝の再放送を含めて、岡山県・広島県では放送されなかった。NHKプラスを使わない限り視聴は不可能。なお私はたまたま妻の実家のある北九州にいたため、いつも通り視聴できた。 この日に取り上げられたのは以下の3つの話題であった。
放送によれば、首をかしげるとかわいく見えるのは「考え込む赤ちゃんに見えるから」が正解であると説明された。 放送では、同じ女性がまっすぐ正面を向いた写真と、向かって右側に首を傾けている写真を同時提示し、首を傾けている写真のほうがかわいく見えることを例示された。解説は対人コミュニケーションを研究している塩見昌裕さん(神戸大学)。なお塩見さんの肩書きが「客員教授」となっていたのでネットで検索してみたところ、本業は『株式会社国際電気通信基礎技術研究所 インタラクション科学研究所 室長』、合わせて大阪大学招へい教授と神戸大学客員教授をつとめておられ、「エージェントインタラクションデザイン研究室 室長としてコミュニケーションロボットの研究に従事.コミュニケーションロボット,集団とロボットの相互作用,ソーシャルタッチの研究分野に興味を持つ.」と紹介されていた。塩見さん&ナレーションによる解説は以下の通り【要約・改変あり】。
ここからは私の感想・考察を述べる。 まず、首をかしげたほうがかわいく見えるかどうかは、じっさいに実物の顔の映像、アニメ、ロボットなどで条件を変えて比較すれば統計的に実証できる。今回の放送では「塩見さんが200人以上を対象に調査した」と紹介されていたが、せっかく放送で取り上げられるのであるから、もう少し年齢や性別、また可能であれば外国人を対象にもう少しシステマティックに比較をして論文化したものを引用してほしかった。 「人は考え込む時に首をかしげて新たな情報を得ようとしている。そのようなしぐさをすると、本能的に放っておけない・助けてあげたいという思いを抱かせ、それが「かわいい」という感情につながる。」という説明については、若干の疑問がある。
ベビースキーマについてはウィキペディアに解説されているように、コンラート・ツァハリアス・ローレンツが研究の出発点になっている。ローレンツは1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞しているがこれは私が学部3回生の時であり、私が専門としていた学習心理にも大きな影響を受けていた。神田の古本屋でたまたまBiological Boundaries of Learningという本(Seligman & Hager, 1972)を見つけたことで研究に没頭するようになった。 もっともウィキペディアで指摘されているように、いくつかの議論があり、何でもかんでもベビースキーマに結びつけるのは危険であるように思う。 塩見さんは、右利きの人が相手の場合、向かって右に顔をかしげることは触れやすい手に顔が近づくことになる。これによって、 ●「手をさしのべたい」、「さわりたい」という近づきたい度合いが大きくなり、結果として「かわいい」という感情が湧いてくる。 と持論を述べておられたが、これまた証拠不足であるように思う。上掲の「200人以上」というような大ざっぱな調査ではなく、年齢・性別などに考慮しつつ右利きと左利きの人をちゃんと集めた上で、 ●右利きの人は相手が右に顔をかしげたほうが、また左利きの人は左に顔をかしげたほうが相手がかわいく見える ということをちゃんと示してもらいたいところだ。 なお、首を向かって右にかしげるということは、顔の右側をより多く見せるということになる。2018年12月15日の日記などで何度か取り上げているように、肖像画や顔写真の右向き・左向きについては以下のような説があるという。
また、このことから、
次回に続く。 |