じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 12月10日の岡山はよく晴れて、日の出と日の入りの両方を眺めることができた。日の入りのほうは日没の方位が日々左方向(南方向)にズレているため、『京山皆既日食現象』が終了して、旧・京山タワーの左側から夕日がはみ出すようになった。



2023年12月11日(月)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「コンクリート」「馬とニンジン」

 昨日に続いて、12月9日(土)に初回放送【※12月8日夜は岡山では別放送】された表記の番組についての感想・考察。
 今回は以下の3つの話題のうち、残りの2.と3.について考察する。
  1. 漫才ってもともとなに?
  2. なぜコンクリートはカチカチになる?
  3. なぜ馬の好物といえばニンジン?

 まずコンクリートがカチカチになる理由については、放送では「トゲとトゲが絡み合い隙間を小さな結晶が埋めているから。」が正解であると説明された。セメント化学を研究している坂井悦郎さん(東京工業大学)&ナレーションによれば、まずコンクリートの歴史の概略は以下の通り。
  1. 約9,000年前のイスラエルでコンクリートに似たものが使われていたことが分かっている。
  2. 約2000年前に建てられたコロッセオや約1800年前に建てられたカラカラ浴場もコンクリートが使われていた。
  3. その後18世紀後半にイギリス産業革命で発明された作り方が現在まで受け継がれている。

 続いてコンクリートが固まる理由については以下のように説明された。
  1. セメントの主原料は石灰石。これにケイ石、酸化鉄などを加えて1450℃で焼いたあと石膏を少し入れて作られる。
  2. コンクリートはセメントに水、砂、砂利を混ぜて作られる。ドロドロの生コンクリートを型枠に流し込み時間がたつと水和反応でカチカチになる。
  3. コンクリートがカチカチになるのは乾燥するためではない。じっさい土と水をドロドロに混ぜて乾かしてもカチカチにはならない。
  4. セメントに水を加えると水和反応によりエトリンガイトが誕生する。エトリンガイトはトゲトゲした形になるためセメントの粒子が絡み合い固まる。
  5. さらに、セメントに水を入れて数時間経つとC-S-Hという非常に小さな結晶が生まれてセメントの隙間をぎっしりと埋める。
  6. 以上のように、コンクリートはエトリンガイトにより固まりC-S-Hによって硬くなる。砂や砂利もセメントに覆われるため固まる。
  7. コンクリートは28日間で使える硬さになるが、その後も化学反応は続くため1年、2年と時間がたつごとに強度が増していく。

 放送では西山峰広さん(京都大学)の協力により、コンクリートの強度を調べる実験が行われた。プレス機でコンクリートに100トン(ジェット旅客機の重さ)の圧力を加えても壊れず、116トンの力でついに大破した。
 コンクリートには、強度以外にも型枠に流し込めば色んな形になるという特長がある。西山さんが選んだコンクリートのスゴい建造物は「シドニー・オペラハウス」、「東京スカイツリー【内側に心柱が使われている】」、「3Dプリンターの家【生クリームを絞り出すようにして建築】」であった。
 なお、コンクリートは環境の変化に左右されるため乾燥してる気候では化学反応は止まり雨が降ると化学反応が進み硬くなる。また街で見るコンクリートには鉄筋を入れて丈夫にしており、実験で示されたような壊れ方はしないということであった。

 ここからは私の感想・考察になるが、私が子どもの頃、生家では祖父がコンクリートで縁側のテラスや庭の池などいろいろなものを造っていた。そのこともあって、庭の隅にはセメントに混ぜる砂があり、また物置にはセメントの袋があり、結構身近に接することができた。じっさい、小学校の夏休みの作品として水晶の結晶模型をコンクリートで造ったり、愛犬が死んだ時には白セメントで石像を造ったりしたことがあった。その頃は、いったん固まったコンクリートは粉々にして水に溶かしても固まらないのはなぜかということに疑問を持っていた。
 いずれにせよ、いまでは世界中でコンクリートの建物が造られている。もしコンクリートが存在しなかったら、都市の構造、鉄道や道路などを含めて人間の文明も全く違った形になっていたはずで、その存在は文字通り現代文明の土台を支えているといってよいのではないかと思う。




 最後の4.の馬がニンジンを好きな理由であるが、正解は「ポケットに入れやすいから」と説明された。
 松井朗さん(JRA日高育成牧場生産育成研究室主席調査役)によれば、
  1. 馬の好物はニンジンのほかにリンゴ、カボチャ、スイカがある。
  2. 人間が馬に与えるときこの中で一番ポケット入れやすいのがニンジン。
  3. じつは馬は甘いものが大好き。蜂蜜や砂糖を好んで食べる馬もいる。
  4. 馬の祖先はヒラコテリウム。主食は木の葉や木の実であった。その後、生活の場を草原に移し、主食が草になっていった。
  5. 日本では古墳時代から馬が飼われはじめ、江戸時代に荷馬や農耕馬として活躍した。さらに明治時代に西洋の騎兵制度が入ってきたことで軍馬として使うことが多くなった。
  6. 乗馬のときは調教が必要。つまり、いいことをしたらご褒美を与えなければならない【=オペラント強化】。そのご褒美として甘いものを与えていたと推測される。
  7. 馬以外の動物でもそうだが、いいことをした時のご褒美はその場ですぐにあげる必要がある【=直後強化】。そのためいつでもポケットに入るニンジンが選ばれた。

 ここからは私の感想・考察になるが、馬がニンジンを好むという話は確かに子どもの頃に聞いたことがあった。もっともじっさいにニンジンをもらった馬が喜んでいるところを見たわけではない。たぶん、絵本かテレビドラマか何かの影響で、馬の好物はニンジンであると刷り込まれてしまったのではないかと思う。その後は馬は草ばっかり食べていると思うようになったが、孫たちが馬にニンジンを与えている光景などを見て、やっぱり馬はニンジンが好きなのだということを初めて実感した。
 もっとも今回の放送では、

●馬の行動を直後強化する際、ニンジンは好子(強化子)として利用しやすい。

ということは説明されていたものの、数ある野菜の中でなぜニンジンが好物の1つになっているのか?については何も説明されていなかった。これを明らかにするには、まず、馬にいろいろな野菜を同時提示して、その中から本当にニンジンが選ばれるのかを実験する必要がある。但し、動物は一般に、新奇な食物を避ける傾向がある(neophobia、新奇性恐怖)。仮に複数の野菜の中からニンジンを選んだとしても、それが好物であるから選んだのか、それともニンジンがいつも食べているfamiliarな野菜であるがゆえにそれを選んだのかを見極める必要がある。
 いずれにせよ、今回の説明を聞いた限りでは、馬は生得的に甘いものを好む傾向があり、ニンジンは甘味があるゆえに好物の1つになっていると考えるのが妥当かと思う。じっさいウィキペディアでも、
ウマは後腸発酵動物であり、反芻動物とは異なり胃は一つしか持たない。しかし大腸のうち盲腸が極めて長く(約1.2 m)、結腸も発達している。これらの消化管において、微生物が繊維質を発酵分解する。胆嚢が無いことも草食に適している。 硬くて甘味の強い食物全般を好むとされている。なお、英語でロバや馬などを鼻先に釣った人参で誘導する様子を carrot and stick と言うように、英語圏や日本等では通俗的には「ウマはニンジンが好物」だと語られるが、国によって「リンゴが好物」や「角砂糖が好物」(トルコ)など、様々に言われている。実際には硬くなくても甘いものを好む個体の例もある。
と解説されていた。