じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 10月27日の午後、岡山では黒い雲が押し寄せ、激しい雷雨となった。写真上は13時のレーダーアメダス。合計雨量は10.5ミリ。13時02分には最大瞬間風速22.5メートルを記録した。
 報道によれば各所で雹が観測された。そのこともあって、気温は13時に23.7℃だったものが14時には14.3℃まで低下した。




2023年10月28日(土)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「漢字の筆順」/「右、有、布、必の筆順」

 10月27日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。この回は、
  1. なぜ漢字に書き順がある?
  2. なぜコーヒーを飲むと目が覚める?
  3. なぜ眠るときに布団をかける?
という3つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。

 放送では、漢字に書き順(筆順)があるのは、「先生が教えやすいから」が正解であると説明された。松本仁志さん(広島大学)によると
  1. 漢字の書き順は1958年に当時の文部省が決めた。 その内容は日本初の公式の漢字の書き順が載っている『筆順指導の手びき』としてまとめられており、書きやすさ・読みやすさ・覚えやすさを基準に881文字の書き順が掲載されている。65年経った今も、学校教育ではこの手引きに基づいて教えられている。
  2. 江戸時代にも書き順について書かれた書物があった。筆の流れに従えば自ずと書き順が決まったということもあったが、明治時代になると鉛筆が普及し筆の流れを気にせずに書くようになったため書き順はバラバラになっていった。
  3. 明治から昭和の初期には書き順のが多数出版されたが、例えば「着」という書き順が、4番目に縦棒を書く順になっていたり先に「三」を欠く順になっていたりという違いに見られるように、バラバラだった。小学生は先生によって違う書き順で漢字を教わることになり、混乱が生じた。
  4. 1955年の秋、当時の文部省の小学校教育課に勤めていた沖山光。沖山は、元小学校教師だった経験をいかして学年別漢字配当表を作った人物としても知られている。その沖山のもとへ「生徒によって書き順が違うため混乱している」と相談が入ったことがきっかけで書き順を決めることになった。沖山は、書き順に精通している大学教授、国語学研究者、書道家、書道研究者、小中学校教師などの専門家を集めて委員会を開いた。しかし自分の書き順に信念を持った人たちの会議は毎回大揉めしある書道家は「私の流派の書き順を認めないなら切腹をする」という騒ぎにまで発展した。
  5. そこで同僚の江守賢治が書く順番を「上から下、左から右」など原則を決めたらどうかとアドバイスした。沖山はこのアドバイスをもとに筆順十の原則を考案。頑固だった専門家たちもルールを決めたことで理解も深まり最後はスムーズに書き順を決められた。
  6. 漢字881文字は期間2年、会議約80回の末に完成した。
なお、学校では『筆順指導の手びき』に基づいて指導しているが、その目的は先生が教えやすく子どもが書きやすくするため。書き順のテストで間違っても書き順は絶対的なものではないので怒らないでほしいとコメントされた。
 ここからは私の感想・考察になるが、まず、放送では「書き順」という呼称で統一されていたが、私自身は「筆順」というほうが馴染みがあるし、1958年に制定された手引きでも『筆順指導』となっていることから、以下は「筆順」という呼称を用いることにする。
 さて、私は1959年に小学校に入学しているのでちょうど筆順指導が統一された直後に漢字教育を受けることになった。そのせいかどうかは分からないが、国語のテストの中には筆順を問う問題もあった。

 筆順について私が疑問に思ったのは、まず「左」と「右」の違いであった【左は「一ノ」、右は「ノ一」】。その理由はネット上でも各種紹介されているが、象形文字まで遡った説明が正しかったとしても現代人がそれを踏襲しなければならない理由は無いように思う。ちなみに私は「右」は筆順テストの圧力もあって「ノ一」の順で書いているが、それ以外の「有」や「布」は「一ノ」の順に書いている。もっともワープロが普及した後は文字を手書きするのは自分の名前と住所程度になってしまったので、いつ頃からそういう筆順を続けているのかは記憶していない。
 もう1つ、筆順でよく話題になるのが「必」である。「必」は「心」を書いてから「ノ」を加えると覚えやすいと思ったが、小学校の時にその筆順ではダメだとしつこく指導された。ところが、中学以降になってから、どこかの時点で間違えた覚え方をしてしまい、今でも「上の点→ノ」を書いたあと、3番目に左の点を書くクセがついてしまって直せなくなった。

 このほかYouTubeでは、筆順を間違えやすい漢字がいろいろ紹介されている。私の場合、小学校時代の筆順指導が徹底していたためか、けっこう正解が多かったが、「巨」、「可」、「快」、などは違う筆順になっていることが判明した。

 あと、日本では小学校教育における筆順指導の手引きが示されているが、中国(台湾を含む)ではそのような筆順の基準はあるのだろうか。さっそくBingに尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
日本では小学校教育において、漢字の筆順指導の手引きが示されています1. 中国(台湾を含む)でも、漢字の筆順に関する基準が存在します2. ただし、中国においても、書道の流派によって筆順が異なっていたであろうことは、容易に予想できます。それらを統一していく過程で、日本のものとは違った形で妥協することがあったとしても、おかしなことではありません。筆順は、より美しい字を書くための「手びき」にすぎません。絶対的なものではないのです3. 1: [小学校学習指導要領](https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/gakushu/1313479.htm) 2: [漢字 - Wikipedia](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%A2%E5%AD%97) 3: [K'sBookshelf 辞典・用語 漢字林](https://ksbookshelf.com/DW/Kanjirin/index.html)

(1) 漢字 - Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BC%A2%E5%AD%97.
(2) もはや漢字は御当地主義 ??筆順と画数をめぐって .... https://www.jc.meisei-u.ac.jp/course/104/.
(3) 中国と日本では、漢字の筆順が違うようですが、どうして .... https://kanjibunka.com/kanji-faq/old-faq/q0313/.
(4) K'sBookshelf 辞典・用語 漢字林. https://ksbookshelf.com/DW/Kanjirin/index.html.

さらに具体例を挙げて貰ったところ、

1. 「鬱」: 日本では「鬯」から始める一方、中国では「厂」から始めます.
2. 「麻」: 日本では「一」から始める一方、中国では「丿」から始めます.
3. 「鼻」: 日本では「自」から始める一方、中国では「乙」から始めます.
という回答をいただいたが、なんだかよく分からない例であった。
 ま、日本の漢字の筆順は戦後に日本の委員会で決めたものであるから、中国での漢字の筆順がそれに一致するとは考えにくい。もう少し調べれば、中国での筆順指導の資料が見つかるかもしれない。


 次回に続く。