じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



10月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
クリックで全体表示。


 ご近所からいただいたポポーの実【写真左】。ポポーの花は半田山植物園でも毎年4月に見かけるが【写真右、2022年4月23日の楽天版参照】、果実は市場に出回らないため滅多に口にしたことがない。マンゴーのような味で、しかも簡単に種が分離できるため食べやすい。
 食べたあと種がとれたのでベランダで栽培してみようかと思うが、こちらの記事によれば、結実を確実にするためには2〜3本が必要。また最初の2年ほどは成長が緩慢であり3年目以降に旺盛に成長するという。半田山植物園で問題無く成長していることから、耐寒性は十分。問題があるとしたら、果たして私が生きているあいだに果実がとれるかどうかということ。


2023年10月17日(火)



【連載】笑わない数学(3)コラッツ予想(3)ループが起こらないことの証明

 少し間が空いてしまったが10月14日に続いて、10月11日にNHK総合で初回放送された、『笑わない数学 シーズン2』:

コラッツ予想

についてのメモと感想。

 前回の終わりのところでリホ・テラスとコーネリアス・エベレットによる確率論的アプローチに言及したが、ノート【←期間限定なので要注意】には、このうちのエベレットの論文がリンクされていた。この論文は4ページと短く、それほど高度な数学は使用されていないとのことだが、私自身はまだ読めていない。

Iteration of the number-theoretic function f(2n) = n, f(2n + 1) = 3n + 2Advances in Mathematics,1977, 25(1), 42-45.

 放送では確率論的手法に続いて、フランスの数学者、ジャン・ポール・アルーシュが発表した「妥協版」が紹介された。これは、テラスやエベレットらの予想:

●ほとんどすべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすと自分自身より小さくなる。

をさらに精密化して、

●ほとんどすべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすと自分自身の0.869乗よりも小さくなる

と予想するものであった。さらに15年後、スロバキアのイバン・コレックは、

●ほとんどすべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすと自分自身の0.7925乗よりも小さくなる

ということを証明した。そして、2019年、数学界のスーパースターと言われるテレンス・タオ博士(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)は、コラッツ予想が偏微分方程式の考え方が証明にできるという発想から、

●ほとんどすべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすとある意味好きなだけ小さくなる

ということを証明した。この「ある意味好きなだけ小さくできる(1に近づけることができる)」の意味については放送では解説されず、ノートでも「説明がもっともっと難しくなっていきますので、今回の「数学ノート」での紹介はここまでにさせていただきます・・。」として説明は割愛されていた。なおタオ博士の研究はご自身のブログ:

The Notorious Collatz conjecture

で分かりやすく(?)解説されているようだ。

 放送の終わりのところでは尾形さんが「でも、ぼくはこう思うんです。超難問だからこそ、ひょっとしたら何かひょんなことで解けちゃうんじゃないかって。だから、コラッツ予想が大好きな数学ファンの皆さん、頑張ってください。だってプロの数学者たちは殆どの人がもう諦めちゃってるんだから。そう、今がチャンスです。」という言葉で締めくくられた。但し尾形さんご自身はそのような危険なチャレンジはしないと言っておられた。




 ここからは私の感想・考察になるが、私自身は、すでに隠居人生活に入っているため、仮に丸1年間コラッツ予想のことばかりを考えていたとしても生活に支障が出ることはない。数学の天才たちが解けない問題を私自身が解けるとは到底思えないが、考えること自体が楽しければそれでいいかとは思っている【といっても、時たま、気が向いた時に考えをめぐらす程度】。

 私自身がこの問題に挑むとすれば、次の2つのアプローチをとることになるかと思う。
  1. 【ループしないことの証明】「コラッツ予想の操作」を繰り返しても途中でループに陥ることは決して無い。
  2. 【逆算によりすべての自然数が生成できることの証明】「2nした数(nは自然数)から1を引いて3で割る。但し割り切れない時は除外する」という操作を繰り返せば、任意の自然数を作ることができる。


 このうち1.でいう『ループ』(もしくは『循環』)というのは、「コラッツ予想の操作」を繰り返していくうちに、ある数が現れ、さらに操作を繰り返すと再びその数に戻ってしまうようなことを言う。
 この『ループ』は、コラッツ予想を一般化して「任意のχに対してχが偶数の時は2で割る。奇数の時はp倍して(p-2)を加え2で割る【pは正の奇数】というような『p-Collatz関数』を定義した時に生じる【こちらの論文参照。なお「x」は掛け算記号と誤認される恐れがあるので「χ」で代用した】。例えば、χ=29、p=31とした場合は

29→29×31+(31−2)=29×32

となり、このあと2で割れるだけ割ると元の29に戻ってしまうので、1になることは決して無い。なお、このようなループが生じるケースは、

●χ=(p−2){2(p+1)n−1}/p

であることが分かっている。

 もし、

●すべての数は「偶数なら2で割る。奇数なら3倍して1をたす」をくりかえすと自分自身以下にできる

ことが証明されたとすれば、残りは、「自分自身以下」ではなく「自分自身よりより小さくできる」ことを証明すればよい。なぜなら、「自分自身以下」という表現には上掲の29のように「自分と同じ数にできる」場合、つまりループが含まれているが、後者はループには陥らないことを含んでいるからである。

 勉強不足なのでよく分からないが、「3倍して1を足して2で割れるだけ割る」操作がループに陥らないことはどこかですでに証明済である可能性がある【厳密に言うと、初期値が1の時は1でループする】。1回の操作だけで1にループする数が1であることは簡単な方程式で解けるが、いくつかの数列の間でループしないことは証明できているのだろうか。

 次回に続く。