じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 日曜日の午後、YouTubeで、鹿児島国体陸上2023の成年女子800m決勝(10月14日)の動画を視聴した。田中希実選手が出場したことで注目されたが、私があれっ?と思ったのは1レーンに2人の選手が立っており、そのまま狭いレーンからスタートしたことであった【写真左上、写真下】。公式サイトの結果を見ると、2人の選手のうちの1人は9レーンを走ったことになっていた。しかし下の写真から明らかなように、そもそもこの競技場には9レーンは存在していない。また成年男子800mのほうはちゃんと1レーンから8レーンまで1人ずつの選手が立っていた。
 そこでさらにネットで調べたところ、こちらの記録によると、1レーンに立っていた2人の選手は予選で同タイムというわけでもなかったようだが、タイムが遅いほうの選手には予選段階で「qR」という記号がつけられていたことが分かった。「qR」は救済による決勝進出という意味のようなので、予選が写っている別の動画を探してチェックしたところ、当該の選手は400mを過ぎたあたりで、左前(内側)を走っていた別の選手が突然外側に移動してきた際にその足に当たって(←たぶん)転倒していたことが判明した。ということで、救済措置が適用され、決勝進出者8名に被救済者1名を加えた9名が出場することになったものと判明した。
 とはいえ、素人目から見れば、2人の選手があのように狭い1つのレーンでスタートするというのは、接触による転倒事故が起こりやすいのではないかと思えてしまう。


2023年10月16日(月)




【連載】チコちゃんに叱られる! 「天麩羅の天つゆ」「風の音とカルマン渦」「運がいい日と悪い日はなぜあるか」

 10月13日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. なぜぎんなんはクサい?
  2. なぜ天ぷらに天つゆをつけるようになった?
  3. 風が吹くと「ビュービュー」というのはなぜ?
  4. 【視聴者からのお便り】「なんでうんがいい日とわるい日があるんですか」
という4つの話題が取り上げられた。本日は残りの2.〜4.について考察する。

 まず、2.の天つゆの件だが、放送では「鮮度をごまかしたかったから」が正解であると説明された。
 永山久夫さん(91歳、食文化史研究家)とナレーションの説明によれば、
  1. 天ぷらは室町時代にポルトガルから伝わったテンポーラがもと。その時は天つゆはつけていなかった。
  2. 天つゆのキッカケは明暦の大火。3日間火災が続き江戸の街の3分の2が焼失したと言われている。江戸の復興のために全国から職人が集結しが、単身赴任のため外食が多くなった。そこで職人のおなかを簡単に満たしたのが寿司、蕎麦などの数百軒以上の屋台だったが、中でも人気を集めたのが天ぷらだった。
  3. 当時の天ぷらは魚介が中心。天ぷらの屋台では市場で売れ残った鮮度の低い魚を安く仕入れていた。当時の歴史を調べた『天麩羅物語』(露木米太郎)には「売れ残りの魚を安く仕入れてきて、それを粉と油で「メッキ」してたんです。」という記述がある。
  4. 当時は食中毒対策で長時間、高温で揚げていた。さらに衣はやせた身を大きく見せるためにかなり厚かった。
  5. そんな天ぷらを美味しく食べるために編み出されたのが天つゆ。但し、今の天つゆがカツオだし、醤油、みりんなどによるスッキリとした味であるのに対して、当時の天つゆは黒砂糖・しょうゆ・酒を混ぜたものであった。そのつゆをたぷりつけることで厚い衣の油っこさを削ぎ落とし、身の味の悪さをごまかす効果があった。
  6. 天ぷらはその後、武士や大名などから屋内で食べたいという要望が多くなりお座敷料理へと変わっていった。その結果、食材は新鮮なものになり衣が薄くなった。また衣に卵が使用されコクが出るようになり、天つゆはスッキリとした味になった。
ということであった。放送では当時の天つゆと、竹串に刺したアナゴとエビをごま油で挙げた天麩羅が再現された。

 ここからは私の感想・考察になるが、天麩羅と天つゆの歴史についてはおそらく説明された通りかと思われる。但し放送の中でも試作された黒砂糖・しょうゆ・酒を混ぜた天つゆにもそれなりの美味しさがあったはずで、なぜ一般庶民の天麩羅よりもお座敷料理の天麩羅のほうが明治以降に普及していったのかについてはもう少し説明が必要であるように思われた。




 次の3.の風の「ビュービュー」については、放送では、「世の中に丸いものがたくさんあるから」が正解であると説明された。
 梶原伸治さん(近畿大学)とナレーションの説明によれば、
  • 「ビュービュー」は電線や木の枝などの丸いものに風がぶつかる音。
  • 梶原さんの実験室にある送風設備に、円柱状の棒に風速10mの風を当ててみると確かに「ビュー」という音が聞こえてくる。風が一定の速度で丸いものにぶつかると時計回りと反時計回りの渦(カルマン渦)ができる。
  • この渦によって、空気が左右に揺れ、その振動によって音が出る。旗がパタパタと揺れるのも、バットを振ったり縄跳びを回した時の音もカルマン渦が原因。
  • いっぽう、角のある物体は風の当たる方向が一定ではないため大小さまざまな渦ができ、規則正しい音が出ない。
  • 「ビュー」という音は風速や丸いものの直径で変わる。これは数式で表すことができる。風速が早く円の直径が小さいと高音、逆に風速が遅く円の直径が大きいと音が低くなる。
ということで放送では「ビュー」という周波数をコントロールすることで『千の風になって』のメロディを再現する実験が行われた。体育系の部活の学生が、バット、竹刀などを振っていろいろな音を採録したが、はっきりとしたメロディには至らなかった。

 ここからは私の感想・考察になるが、私自身は風の音は何かに物があたった時の振動音であるとは思っていたが、丸いものと角のあるものでこれほど違いが出ること、また丸い物に当たった時の音がカルマン渦に起因しているということは今回初めて知った。
 放送では、野球のナックルボールやサッカーの無回転シュートの不規則な変化もカルマン渦の影響であると補足説明されていたが、私が聞いたことのある他のカルマン渦としては、強い冬型の気圧配置になった時に、済州島や屋久島の南東側に発生する雲の列があった。なお、チコちゃんでも以前に取り上げられた「飛行機はなぜ飛べるのか」にもカルマン渦が関係しているようだが、専門的なことはよく分からない【こちらこちらの文献参照】。




 最後の4.の「なんでうんがいい日とわるい日があるんですか」という8歳のお子さんからの疑問については、占い師のゲッターズ飯田さんから

運はタイミングしだいで誰でもいい方向に進められたりチャンスをつかむことができる。「運がいい」のは事前に準備していたり、経験があったりして運がつかめている状態。反対に「運が悪い」のは、準備ができていないため運を逃している状態、という捉え方ができる。

という説明がされた。占い師の解説というのは少々気になるところであるが、まあそんなものだろう。最後にキョエちゃんから、

自分の運命は自分で切り開くとか言ってる皆さん、自分で切り開いちゃったあとだと、もともとどんな運命だったか確かめようがありません。本当はもっと幸せだったかも。

というコメントがあったがこれもなかなか的を射た指摘であった。

 私自身が思うこととしては、
  1. 世の中の現象は詳細に調べれば決定論的な因果の積み重ねであるかもしれないが【←量子論的な解釈まで含めれば別】、あまりにも多くの要因が重なって作用するため、全体としては確率現象として捉えることができる。
  2. 確率現象のうちには、自分の積極的な働きかけ(オペラント行動)で達成したものと、自分の力が及ばないものがある。
  3. 自分の力が及ばない現象は、確率的に生じるため、結果として、自分に有益な現象がより多く生じる日と、逆に自分に不都合な現象がより多く生じる日が不規則に訪れるようになる。前者は「運がいい日」、後者は「運が悪い日」であると主観的に解釈される。
ということであり、結局のところ、運がいいとか悪いというのは、自分に都合が良いことがどれだけたくさん起こったのかという結果に基づいて事後的に分類したものにすぎない。なので、翌日がどうなるのかは予測できないし、祈願によって運を招くこともできない。

 とはいえ、占い師さんも言っておられたように、あらかじめ準備をしておけば、都合の良いことがたくさん起こった時には、その準備のおかげで、準備していなかった場合よりも多くの結果を獲得できる可能性はある。いっぽう、自分は運が悪いとか言ってふてくされて不活発になってしまうと、都合が良いことが起こった日でもせっかくの機会を逃してしまい、不運・不活発な悪循環に陥ってしまう恐れがある。
 私自身は占いは全く信じないしそれに影響されることもないが、一般論として、なかなか自信が持てない人に対して占い師が運勢判断をツールとしてより積極的な人生を歩めるように建設的なアドバイスをしていくということであれば、カウンセラーと同じような成果を上げることはできるのではないかと思っている。とはいえ、世間には悪徳占い師もいれば、占いで誘いをかけてマインドコントロールに陥らせるカルト宗教もあるため、その見極めができない限りは避けておいたほうが無難であるとは思う。