じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 ウォーキング中、サイレンを鳴らしながら現場に向かっている消防車2台を目撃した。救急車は毎日のように見るが、出動中の消防車を間近に見ることは滅多に無い。なお岡山市の消防出動情報によれば、この時の火災は以下の通りとなっていた【上の行のほうが新しい情報】
10月05日 11:14入電 岡山市北区牟佐地内の、建物火災は11:37に鎮火しました。
10月05日 11:14入電 岡山市北区牟佐地内の、建物火災は11:30に鎮圧しました。
10月05日 11:14入電 岡山市北区牟佐地内、目標セブンイレブン牟佐店 北  194メートル付近で、建物火災のため消防車が出動しています。 東牧石 牧石 財田 御津第四




2023年10月6日(金)




【連載】笑わない数学(2)虚数(17)虚数以外の新しい数(8)数とは何か(2)量と質/尺度水準/純粋数学と順序尺度/数とグラフ

 昨日の日記で、『量』と『質』について言及した。あくまで私の考えだが、
  • 『質』というのは、ある事物と他の事物を1つのグループにまとめたり、別々のモノとして扱ったりする時の基準となる特徴の言語的記述
  • 『量』というのは、一定の範囲内で『質』は同じであるとみなした上で、ある事物の変化や、2つ以上の事物の比較を、何らかの物差しで言語的に記述したもの
というように定義できるのではないかと思われる。但しこの区別は人間の都合によって決まるものであり、事物そのものの本質として備わっているわけではない。例えば、さまざまな光は波長という物差しで捉えることができるが、可視光の範囲ではさまざまな色として質的に記述することができる。子どもが大人に成長していく過程ではさまざまな質的変化が生じるが、そのいっぽうで、身長や体重というように同じ質の中での量的な変化として捉えることができる。

 さて、数学の世界では、さまざまな数というのは、どういう演算ができるか、単位元や逆元があるか、閉じているか、といった観点から、具体的な事物からは切り離された純粋な関係性だけに基づいて定義されているように思われる。いっぽう日常生活で扱われる「数」というのは事物をどのような物差しで測るのかによって異なってくる。これは、心理統計学の授業などで真っ先に習う尺度水準に関係している。すなわち、

変数に対して可能な数学的操作は、変数を測定する尺度水準に依存し、その結果特に統計学で用いるべき要約統計量および検定法も変数の尺度水準に依存する。

 リンク先で解説されているように、尺度水準の分類としては、スタンレー・スティーヴンズ(Stanley Smith Stevens)が1946年に論文「測定尺度の理論について」"On the Theory of Scales of Measurement" で提案した分類がよく用いられる。
  1. 名義尺度
  2. 順序尺度
  3. 間隔尺度
  4. 比率尺度(比例尺度)

 上記のうち『名義尺度』は『質』、それ以外の3つの尺度は『量』を測る物差しであると考えられている。
 このことをふまえると、「1、2、3、...は数でしょうか?」という質問への答えは尺度水準によって変わってくる。
  1. 「1組、2組、...」とか「1丁目、2丁目」というような名義尺度であれば数とは言えない。
  2. 「1位、2位...」は順序尺度としての「数」となる。
  3. 摂氏の気温の「1℃、2℃、...」は間隔尺度となる。気温が2℃上昇したとは言えるが、気温が2倍になったとは言えない。
  4. 「1センチ、2センチ、...」や「1グラム、2グラム、...」は比率尺度。「体重が2kg増えた」と言うこともできるし、「体重が2倍に増えた」と言うこともできる。
 以上から、日常生活で扱われる数というのは、まず順序が比較できて、その中の一部では、間隔や比率が意味をなす物差しのようなものだと考えることができそうだ。もっとも、数学の世界で「数」を拡張する際には、複素数の段階で「大きさが比較できない」つまり、順序尺度に相当する性質は犠牲にしてそれ以外の性質の有用性を生かした形になっている点が興味深い。

 念のため、Bingに

数学の世界で、順序のみが意味をもつ数の構造(順序尺度)はどのように研究されていますか?

と尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
順序尺度は、数学の測定理論の一部であり、名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度の4つの測定レベルのうちの1つです1. 順序尺度は、数値が順序に従って並べられることを意味しますが、数値間の差や比率には意味がありません。順序尺度は、人文科学や社会科学などでよく使用されます1.
順序尺度に関する研究は、測定理論や統計学などの分野で行われています。例えば、順序尺度を用いたデータを分析するための手法として、順位和法やウィルコクソンの符号順位検定などがあります23. また、順序尺度を用いたデータを扱うための統計ソフトウェアも多数存在します?.

1: [具体例で学ぶ数学](https://mathwords.net/syakudo)
2: [産総研技報](https://riss.aist.go.jp/research/20200807-812/)
3: [医療情報学 - 明治国際医療大学](https://www.meiji-u.ac.jp/md-medinfo/lecture/med_stat/med_stat2)
4: [R, SAS, SPSS, Stata, MATLAB, Excel など](https://koushiru.com/column/326/)

(1) 名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度 - 具体例で学ぶ数学. https://mathwords.net/syakudo.
(2) 順序尺度に対する分散分析手法ORDANOVAの改良 - 産総研 .... https://riss.aist.go.jp/research/20200807-812/.
(3) 質的データと量的データ、名義尺度と順序尺度|データの種類 .... https://koushiru.com/column/326/.
(4) 1統計の考え方 | 医療情報学 - 明治国際医療大学. https://www.meiji-u.ac.jp/md-medinfo/lecture/med_stat/med_stat2.
(5) 間隔尺度と順序尺度の観点から考えるアンケート・データの .... https://researchmap.jp/inouesatoshi0321/published_papers/22569108/attachment_file.pdf.
 うーむ、やはり、統計学の研究ばかりになってしまうようだ。そこで、

純粋数学では研究されていないのでしょうか?

と尋ねたところ、
ただし、純粋数学においては、順序尺度に関する研究があまり行われていないようです。数学における測定理論は、主に応用数学や統計学などで扱われています。しかし、数学という分野自体が非常に広範であるため、純粋数学においても順序尺度に関する研究が行われる可能性はあります。
という回答となった。

 私の知る限りでは、1998年頃に考察した、

ジャンケンの由来と数学的背景について考える

に出てくる「3すくみ【じゃんけん】」、「4すくみ【←4すくみは存在しない】」、「5すくみ」を有向グラフで考える研究は、広義の順序構造を扱った数学理論ということになるのではないかと思われる。ネットで検索したところ、

一般化ジャンケンに対するゲーム理論的解析

という文献が見つかった。但し、統計学が順序尺度を「数」として扱っているのに対して、グラフは「数」とは言えないようである。この点についてもBingに尋ねたところ、
「グラフ理論」における「グラフ」は、「数」とは異なる概念であり、数学的な「数」ではありません1. 「グラフ理論」における「グラフ」とは、ノード(節点・頂点、点)の集合とエッジ(枝・辺、線)の集合で構成されるグラフに関する数学の理論です1. つまり、「グラフ理論」における「グラフ」は、関係性を表現するための抽象的な概念であり、数学的な「数」ではありません1.

1: [Wikipedia](https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E7%90%86%E8%AB%96)

(1) グラフ理論 - Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%95%E7%90%86%E8%AB%96.
(2) 離散数学 第5回色々なグラフ - 青山学院大学. http://www.math.aoyama.ac.jp/users/syamanaka/Lecture/DiscMath2020_5.pdf.
(3) グラフ理論 #8 第8回講義 6月13日 - 北海道大学. https://ocw.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2016/01/GraphTheory-2006-Slide-08.pdf.
(4) グラフ理論の基礎 | 高校数学の美しい物語. https://manabitimes.jp/math/895.
(5) グラフ理論 テキスト - 横浜国立大学. http://tgt.ynu.ac.jp/kika2text2014.pdf.

という回答をいただいた、なるほど「グラフ」は、関係性を表現するための抽象的な概念であるゆえに「数」とは言えないようである。「数」も演算を行う場合には関係性を必要とするが、まずは「数」が存在し、その上での性質として演算が定義されるのであれば分からなくもないという気もする。

 次回に続く。