じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 台風6号は8月9日06時現在、屋久島の西北西110キロの海上を1時間に15キロの速さで北西に進んでいるとみられており、中心の気圧は970ヘクトパスカル、中心から半径165キロ以内では風速25メートル以上の暴風が吹いているという。台風は今後、九州の西を北上し、朝鮮半島に向かうと予想されている。

 この台風の進路は、8月4日15時時点では九州の南東から宮崎・大分方面に進むと予想されていたが8月5日は鹿児島本土から北上、さらに8月6日頃から九州の西の海上を北上する予想に修正された。

 進路予想が順次修正されているとは言え、東シナ海で西北西から東北東にほぼUターンし、さらに奄美大島の東海上で東方向から北北西方向に90度に近い方向転換することはかなり前から予想できていた。スパコン活用の成果と言えるだろう。

2023年8月9日(水)




【連載】笑わない数学(8)四色問題(8)ケンプ鎖と五色定理の証明

 昨日に続いて、表記の番組の#3『四色問題』の話題。なお、NHK公式サイトにあった笑わない数学ノートのうち、四色問題に関する#3の記事は、その後削除されてしまった。

 さて昨日の日記までのところで、二辺国または三辺国を少なくとも1つ含む地図では、最小反例が存在しないことが証明された。しかし、四辺国を含む地図の場合は、同じ方法を機械的に適用するわけにはいかない。
 例えば、nカ国から構成される地図にSという四辺国があり、かつこの地図の塗り分けには5色が絶対に必要であったとする。ちなみにこの地図には二辺国や三辺国は1つも存在しないものとする。なぜなら二辺国や三辺国が存在するならそちらのほうに注目して、「国境消滅→n-1カ国の地図は4色で塗れる→国境を復活させてnカ国の地図に戻した時には4色で塗れる」という」という方法で最小反例が存在しないことを簡単に証明できるからだ。
 でもって、Sは四辺国の定義上、A、B、C、Dという4つの国に囲まれていることになる。ここで、A、B、C、Dは例えばA赤、B青、C赤、D青というように交互で塗られている場合もあるだろう。その時は真ん中のS国を消滅・復活させるという三辺国までの方法を踏襲できるので最小反例は存在しないと証明できる。しかし、中にはA赤、B青、C緑、D黄、S黒というようにSの周りが4色で塗られていて、「どのように塗り替えても絶対に5色が必要」というケースが存在するかもしれない。すでに証明されている四色定理から言えば、この「どのように塗り替えても絶対に5色が必要」というケースはあり得ないのだが、ここでは背理法の前提としてそういうケースがあったと仮定してみるのである。
 この場合、これまでと同じ方法でS国を消滅させると国の数はn-1カ国になる。nを最小反例と仮定しているので、n-1カ国の地図は必ず4色で塗り分けられるのだが、再びS国を復活させるとどうしても5色目が必要になってしまう。
 そこでケンプは画期的な塗り替えの方法を考案した。放送によれば、それは、
  1. S国を黄色に塗る。
  2. 隣接していたD国の色は黄色から青に塗り替える。この場合、A、C国は赤と緑だったので塗り替えの必要はない。色のB国もD国とは接していない限りはは影響を受けない【影響を受ける場合については後述】
  3. D国を青に塗り替えたことによって、D国に隣接する別の国の中に青があればこれを黄色に塗り替える
  4. こうして隣接する国が同じ色になった場合は黄色と青の反転を続けていく。こうした反転は鎖のようにつながるので『ケンプ鎖』と呼ばれる。
以上のような塗り替えを続けて、もはやそれが必要でなくなった時にケンプ鎖は途切れる。これで首尾よく4色での塗り分けが完了と思いたいところだが、ケンプ鎖の塗り替えを続けた結果、鎖の先端が青となってB国と接してしまう場合が生じる。この時、ケンプ鎖は青と黄色のループとなる。このようなループが生じた時は、D国の塗り替えは撤回し、今度は、S国を緑に塗り、隣接しているC国を緑から赤に塗り替える。上記と同様に、この塗り替えで隣接国が同じ色になった場合は、赤と緑の反転を続けていく。ここで重要な点は、青と黄色がループになる場合、赤と緑のケンプ鎖はそれに遮られるために決してループになれない。なので、青と黄色のケンプ鎖と、赤と緑のケンプ鎖のうち少なくとも1つは途切れるので塗り替えが完了できることになる。




 放送では、その後の経緯について
  • 上記のケンプ鎖による解決は四辺国を含む地図に適用可能。
  • 五辺国についてはケンプ1879年の論文で証明できたと論じたが、11年後に誤りがあったことが指摘された。その後多くの数学者が取り組んだが誰一人解決できなかった。
  • しかし20世紀に入り新たな証明方法が提案された。
というように簡単に紹介されていたが、このあたりはもう少し詳しく見ていく必要がある。何度か参照しているように、YouTubeの解説動画:

【ゆっくり解説】こんなに単純な問題がなぜ100年以上数学者たちを悩ませたのか−四色問題

では、放送とほぼ同じ時間内でより詳しい経緯が紹介されている【参考文献はこちら】。

 その解説動画によれば、ケンプの誤りを指摘したのはイギリスの数学者パーシー・ヘイウッドであり、またヘイウッドは単なる誤り指摘にとどまらず五色定理を証明したことなどが紹介されていた。

 五色定理の証明についてはウィキペディアにアウトラインが紹介されている。その基本は、まず地図を平面グラフに置き換えることであり、地図の「国」は点に、「国境」は辺(線)で結ぶことになる。ここで置き換えられた平面グラフには、オイラーの定理により、最大でも5本の辺によってしか接続されていないような頂点が存在することが証明できる。ちなみに五色定理が簡単に証明できるのに同じ手法が四色定理の証明に使えないのはこの部分に関係している。ウィキペディアでは、

五色定理の仮定(色の数が最大で5)が使われるのはこの箇所だけである。もし同じ手法で四色定理を証明しようとしても、この段階で頓挫する。

と指摘している。あとはケンプ鎖のロジックの適用で、ケンプ鎖のループが交差できないことを示せばよい。五色定理の証明については、

グラフ理論B(グラフの彩色問題)

でも分かりやすく(?)解説されている。

 次回に続く。