じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



07月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る



クリックで全体表示。

 半田山植物園で見かけたキリギリス。ウィキペディアによれば、日本のキリギリスは、「少なくともヒガシキリギリス(青森県〜岡山県)とニシキリギリス(近畿地方〜九州地方)の2種に分けるべきだと考えられている。更に細かく分けられる可能性もあるが未だ結論は出ていない。 一般にヒガシキリギリスでは翅が短く側面に黒斑が多く、ニシキリギリスでは翅が長く黒斑は1列程度か、あるいは全くない。」 ということであった。岡山県はなぜかヒガシキリギリスが多い地域になっているようだが、写真の個体がどちらに分類されるのかは分からない。

2023年7月26日(水)



【小さな話題】笑わない数学(2)四色問題(2)フレデリック・ガスリー、ド・モルガン、数学的帰納法

 昨日に続いて、笑わない数学の#3『四色問題』についての感想・考察。

 放送ではまず、四色問題の始まりについて、
四色問題が生まれたのは1852年のロンドン。ある若者が不思議なことに気づいた。どんな地図でも4色で塗り分けることができそうだ。その話を聞いたイギリスを代表する数学者の一人、オーガスタス・ド・モルガン(1806-1871)はこのことを数学的に厳密に証明しようと思い立った。彼がが学者仲間にこの難問を投げかけていったことで世に広まった。
というように紹介していた。
 ウィキペディアではもう少し詳しく解説されており、
1852年に法科学生のフランシス・ガスリーが数学専攻である弟のフレデリック・ガスリー(英語版)に質問したのを発端に問題として定式化され、19世紀後半になって数学者がその話を聞いて証明を試みたが、多くの数学者の挑戦をはねのけ続けていた。
というように実名が出されていた。またその中のフランシス・ガスリーの項目には、
四色定理を発見したきっかけは、1852年に法科学生だった頃に数学専攻である弟のフレデリック・ガスリー(英語版)に質問したのを発端にフレデリックは、オーガスタス・ド・モルガンに質問を伝えた。ド・モルガンは数式の疑問を直ちに理解を示し、四色定理として定式化された。
という説明があった。
 ちなみにド・モルガンと言えばド・モルガンの法則の発案のほか、数学的帰納法の定式化で知られているという。

 しかし、ド・モルガンが投げかけた四色問題は未解決のまま年月が流れたが、1879年になってロンドンの弁護士アルフレッド・ケンプが『アメリカ数学ジャーナル』誌上でその「証明」を発表した。放送ではケンプの「証明」の手順が分かりやすい説明されていた。その方法は、
ありとあらゆる地図を国の数で分類することから始める。まず1カ国の地図は1色で塗れる。同様に2カ国は2色、3カ国は3色以内、4カ国は4色以内で塗り分けられることは自明である。もしnカ国の地図が4色で塗り分けられたと仮定して、そこにもう1カ国を追加しても4色以内で塗り分けられることができたとすれば、数学的帰納法によってnがどのように大きくなっても4色以内で塗り分け可能ということが証明できる。

放送ではこれを『OKリレー作戦』と呼んだ。




 ここまでのところでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、上掲の出典によれば、四色問題は公式には、1852年にフランシス・ガスリーが発案し、ド・モルガンによって定式化され、1879年にケンプが「証明」を発表したことで数学の問題として広く知れ渡ったとされているようである。
 もっとも、ステンドグラス、タイル、織物の模様などで、隣接する領域を必ず別の色にする必要が生じることはもっと昔からあったはずだ。その際、4色さえあれば塗り分けられるということは、経験則で知られていたのではないかと思われる。もっとも、そのことを別段証明しなくても、業務上は支障が出ることがない。1852年になってようやく数学問題化されたのは、その頃になるとヨーロッパ各国の領土が正確に表現できるようになり、各国間の交流も進んだことで、地図の塗り分けという現実的な問題が生じた、という背景があったのではないかと推察される。

 四色問題の証明に数学的帰納法を持ち込むことは自然の流れであるかと思う。なおこのことでふと思ったが、昨日の日記で取り上げた東京都23区の色分けは、数学的帰納法で言えばn=23の時に4色で塗り分けができることを示したものであった。ここで、板橋区、北区、足立区に隣接(但し、板橋区と足立区は一部のみ隣接)するような24番目の区を追加すると、この色は黄色でなければならないことは明白である。でもって、こうして完成した「東京都24区」の外側をドーナツ状に囲むように25番目の区を追加した場合、隣接する区では青、赤、黄緑、黄の4色がすべて使われているため、どうしても5色目が必要となるように思われる。となると、ついに4色では塗れない地図が発見されたのか?と思いたくなるところだが、おそらくそういう場合にはすでに塗られている「24区」の色を別の色に塗り替えることになるのだろう。なので、数学的帰納法を使うと言っても、すでに塗り分けが固定された地図にあたらしい国を1つ追加した時に必ずおさまるというわけではなく、正確には「すでに塗り分けされていた地図の一部の国を別の色に塗り替える」という操作を含める必要があるように思われる。

 次回に続く。