じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 妻の実家のある北九州でウォーキング中に見かけたキショウブ。ちょうど見頃となっている。美しい花を咲かせるがウィキペディアには、
環境省は「要注意外来生物」の一種として「栽培にあたっては、逸出を起こさない」「既に野生化している湖沼等があり、在来種との競合・駆逐等のおそれがある場所については、積極的な防除または分布拡大の抑制策の検討が望まれる」として警戒を呼びかけている。また、日本自然保護協会、日本野鳥の会、世界自然保護基金では生態系に与える影響や侵略性が高いとしている。
水辺に生育し美しい花を咲かせる植物なので、「ビオトープ創出」等のために利用される事があるが、「要注意外来生物」を導入することの危険性は大きい。
といった注意を呼びかける記述がある。


2023年5月08日(月)



【連載】コズミックフロント『奇跡の旅路 太陽大移動』(1)

 4月25日の日記で宮沢賢治の『銀河鉄道』に関連して、

●NHK コズミックフロント『奇跡の旅路 太陽大移動

に以下のように言及したことがあった。
太陽はじつは銀河系の中心から4キロパーセクのあたりで誕生し、本来このような中心に近い場所、すなわち6.5キロパーセクというラグランジュ半径の内側にある天体はそのまま内側にとどまり続ける位置にあった。それが、渦状腕のトルクの力でより外側に飛び出し、漂流の旅を踏み出し、現在はローカルバブルの中心を通過中であり、銀河系の中でも最も安全なルートで旅を続けているという。『銀河鉄道の夜』も松本零士の『銀河鉄道999』も創作であるが、実際の太陽そのものも実は銀河系の中を移動しており、中心部分で金属元素を吸収したり宇宙放射線を浴びるといった様々な環境をくぐり抜けてきたというのはまことに興味深い。


 このことについて、元の放送内容をもう少し詳しくメモしておくことにしたい。これまで銀河系の星々は、レコード盤に貼り付けられたような位置関係を保ちながら円軌道を描いて回っており太陽もその1つであると考えられてきたが、実は、銀河鉄道のように旅を続けていること、また旅の途中で放射線を浴びるといった外部要因の影響は地球にも及んでおり、そのことが進化を促した可能性があるというように理解した。

 放送によれば天の川銀河の半径はおよそ5万光年。太陽はその中心から2万6千光年離れた、やや外れた場所にある。この銀河の全体像についてはウィリアム・ハーシェルが最初の銀河図を描いて以来、望遠鏡の進化とともに少しずつ理解が深まっていった。2013年12月19日にヨーロッパ宇宙機関によって打ち上げられた位置天文衛星ガイアは、2台の高性能の望遠鏡を回転させながら、年周視差を用いて13億以上【←「18億」とも放送されていたがその違いは不明】の星の位置を精密に測定した。打ち上げから10年が経ち3回目のデータが公表されたが、その結果から、スペイン・バルセロナ大学のテレサ・アントージャ博士は謎の渦巻き模様を発見した。シミュレーションにより分析したところ、この渦巻き模様は、およそ3億年〜9億年前に、いて座矮小銀河が天の川銀河の円盤に近づいて衝撃波をもたらし、その震動が銀河の星々を波のように揺らした。太陽もその影響を受けた星の1つであると考えられている。
 スペイン・グラナダ大学のトマス・ルイス・ララ博士は、ガイアのデータベースに基づいて天の川銀河の星の年齢分布を調べた。星の色と大きさからグラフを作成したところ、誕生した星が多かったのは銀河が誕生した130億年前のほか、60億年前、20億年前、10億年前のあたりにピークのあることが分かった。銀河で星が大量に生まれる現象(=スターバースト)は、銀河と別の銀河が接触し星間ガスが混ざり合った時に起こりやすい。天の川銀河の場合は過去3回『いて座矮小銀河』と接触しており、その時期は60億年前、20億年前、10億年前に一致しているという。

 以上の研究から、天の川銀河の星々の多くは近くを移動する矮小銀河との接触によって誕生し、またその後も衝撃波の影響で揺らぎながら渦を巻くように移動していることが分かってきた。太陽もおそらく、同じようにして誕生し、かつ揺らぎながら旅をしていると考えられる。

 次に問題となるのは、太陽が銀河系のどこで生まれてどの方向に移動しているのか、またそういった移動はどのような力に支えられているのかという点である。
 このことの重要な手がかりとなるのが太陽の金属量の特殊性であった。それぞれの星の金属量は光のスペクトルから測ることができる。星は超新星爆発によって内部で作られた金属を宇宙空間に放出する。そのガスから新たに若い星が誕生する。そのため、後から生まれた若い星ほど金属量が多くなることが分かっている。ところが46億歳の太陽は、近くの若い星に劣らないほどに金属量が多い。また銀河では、星の密度が高くて超新星爆発が起こりやすい中心部のほうが金属量が多い。これらのことから、太陽は銀河の中心に近いところで誕生し現在の場所まで移動してきたという『太陽移動説』が唱えられるようになった。提唱者のローランド・ヴィーレン博士によれば、銀河の中心からの距離を横軸、縦軸にそれぞれの星々の金属量をとると、46億年前に誕生した星々の金属量は右下がりの直線上のグラフとして描かれる。つまり、中心から遠いほど金属量が少なくなる。そんななか中心から8キロパーセクにある太陽の金属量は、より中心部に近い6キロパーセクほど内側にある星々と同じ量になる。1977年、ヴィーレン博士は、「星は拡散する(diffusion)」という論文を発表した。星は最初のうちは円軌道を回っているが、軌道上で重力を乱す空間に遭遇することで元の円軌道からずれていく。このプロセスは太陽ばかりでなくすべての星に共通している。但し1977年当時は、太陽がどのような旅をしてきたのかは全く未知数であったという。

 次回に続く。