じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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正月はほぼ毎年、妻の実家のある北九州に帰省しているため、初日の出を眺めることができない。写真は1月9日朝、岡山に戻ってから見た最初の日の出。これが今年のマイ「初日の出」となる。

2023年1月9日(月)



【連載】チコちゃんに叱られる!「初詣の由来」

 昨日に続いて、1月6日(金)に初回放送された表記の番組についての感想・考察。本日は、
  1. 駅伝ってそもそもなに?
  2. 初詣に行くようになったのはなぜ?
  3. 鼻水ってなに?
  4. 紅白幕がおめでたいのはなぜ?
  5. 【おたよりご紹介】みんなより背が小さかったらどうするか
という5つの話題のうち、2.について考察する。

 さて、初詣の由来だが、放送では「京急電鉄の戦略」が正解であると説明された。
 放送によれば、
  1. 三が日に【遠くまで】初詣に出かける習慣は明治時代に始まった。江戸時代は、大晦日から元旦にかけて近所の神社に行く「年ごもり」や、各神社が定めた「初縁日」に参拝していた。つまり、今のように同じ日に同じ場所に行くのではなく、別々に近所の決まった場所に行くのが一般的であった。
  2. 徳川家康は、徳川家の繁栄を続けるには一揆を起こさせないことが重要と考え、七福神めぐりによって願いが叶うという希望を持たせ、人々の心を穏やかにしようとした。これにより人々は遠くの神社にも足を運ぶようになった。
  3. さらに江戸時代中期にはその年の縁起のいい方角にある神社をお参りする「恵方参り」も流行した。
  4. 明治5年、新橋〜横浜間に日本初の鉄道(官設鉄道)が開通。新橋、品川、川崎、鶴見、神奈川、横浜の6つの駅が設けられた。
  5. そんななか、川崎停車場に人気が集まった。その原因は、駅から3km離れた川崎大師にお参りに行くことが流行した。
  6. 京急電鉄の創業者・立川勇次郎はこれに目をつけ、川崎駅の近くの六郷橋から大師を結ぶ約2kmの鉄道「大師鉄道」を開業。利用者は開業から5カ月で16万人を記録した。恵方の年には特に多くの人が訪れた。
  7. 「大師鉄道」の開業から5年後、勇次郎は、官設鉄道に並行する、品川から川崎大師を経由して神奈川に至る「京浜電鉄(後の京急電鉄)」を開業。これにより、官設鉄道との熾烈な客の奪い合いが勃発し、その中で初詣が広まっていった。
  8. 京浜電鉄は官設鉄道より安い運賃で利用者を増やしたが、明治38年12月、官設鉄道は年末年始限定の「最急行」を始めた。それまで新橋〜横浜間は約1時間かかっていたものが27分に短縮された。しかも料金は、京浜電鉄の16銭(品川〜川崎)に対して8銭5厘(新橋〜川崎)という安さであった。
  9. 運賃も速度も官設鉄道に太刀打ちできなくなった京浜電鉄は、「はつまいり(初詣)」先として、川崎大師、羽田穴守神社、鶴見総持寺を三宝荒神を指定した回遊券を発売した【明治45年の新聞広告】。当時の人々にとって鉄道に乗ることは特別なイベントであり三が日に乗ることでご利益も授かれるというこの戦略がはまった。
  10. このほか、昭和3年には京成電車が成田山「初詣り」、昭和5年には阪神電車が西宮ゑびすへの初詣の広告を出した。その後「初詣=はつまいり」は「はつもうで」という呼び方に変化していった。
  11. 鉄道会社の宣伝の影響なのか、いまでも三が日の参拝者数ランキング(2019年):
    1. 成田山新勝寺
    2. 明治神宮
    3. 川崎大師平間寺
    4. 浅草寺
    5. 住吉大社
    6. 熱田神宮
    7. 氷川神社
    8. 太宰府天満宮
    9. 【8位タイ】宮地嶽神社
    10. 豊川稲荷
    11. 【9位タイ】【生田神社
    12. 湊川神社
    の中に、成田山、川崎大師、熱田神宮のように都市の中心部から離れた場所が多くランクインしている。


 なお、今のように初詣に行く人が増えたのは、明治6年に休日が定められ、三が日が休日になったことも要因の1つであると補足説明された。

 ここからは私の感想・考察になるが、以上の説明を聴いた限りでは、京急電鉄の戦略はある程度は初詣ブームのきっかけになったと言えるものの、「初詣に行くようになったのはなぜ?」という疑問への正解とするのは少々無理があるように思われた。
 そもそも初詣といっても近所の寺社に参る人はたくさんいる。また放送の中でも紹介されたように、徳川家康が奨励したという七福神めぐりもあった。また、川崎大師には、「大師鉄道」が開業する前からたくさんの参拝者があった。なので、そもそも元の疑問は「三が日に多くの人が電車に乗って初詣に行くようになったのはなぜ?」というように改める必要がある。その場合の正解は放送内容通りであるが、「電鉄会社が宣伝したから」という正解ではあまり面白味がなさそう。

 なお、今回取り上げられた川崎大師は真言宗智山派。また、参拝者数トップの成田山新勝寺も真言宗智山派。大本山は、これら2寺と、高尾山薬王院となっているようだ。総本山は京都の智積院。いずれも仏教のお寺なので、参拝の時には「二礼二拍手一礼」をしないはず。もっとも、初詣参拝者が宗派を意識しているかどうかは分からない。

 あと、「三が日に初詣」の始まりは、放送でも補足説明されたように、元日が定められ、三が日が休日になってからでないと始まりようがない。ウィキペディアによれば、三が日が休日となったのは、、1873年(明治6年)1月7日太政官布告第2号「休暇日ヲ定ム」による。
1月3日は1874年(明治7年)から1948年(昭和23年)まで元始祭という祭日、1月1日は1949年(昭和24年)以降元日という祝日でもあるが、正月三が日の3連休ないし年末年始の6連休は、「年中祭日祝日ノ休暇日ヲ定ム」「休日ニ関スル件」「国民の祝日に関する法律」といった祭日・祝日を定める休日法に先んじて公布された「休暇日ヲ定ム」による連休であり、ゴールデンウィークのような祝日を活用した連休とは異なる。
と記されているが、1月2日と1月3日は祝日ではないため、カレンダーで赤色に表示されることはない。休暇日ヲ定ムという太政官布告第2号は昭和22年12月31日限りで失効しているため、1月2日と3日を休日とする法的根拠は存在しないように思われる。

 次回に続く。