じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 半田山植物園内の桜の木で、キマダラカメムシの老熟幼虫を見つけた。成虫(写真下)とは背中の模様や全体の形がかなり異なっている。外来生物であるが、私が子どもの頃、東京では繁殖していなかった。


2022年7月20日(水)



【連載】7円玉と9円玉だけで48円以上の全ての金額が支払いできるわけ

 昨日に続いて、鈴木貫太郎さんのYouTubeに関連した数学の話題。今回は、最近公開された、

48以上の整数は 7x+9y で必ず表せることを示せ(x、yは0以上の整数)。

という問題と、それを一般化した、

a、bを互いに素な自然数、x、yは0以上の整数とするとき、ax+byで表せない最大の整数は ab-a-b であることを示せ。

について考察する【問題文の表現は一部改変】。

 上記は、無味乾燥な一次方程式の問題であるように見えるが、日常場面では、

●これまでの硬貨が廃止され、7円玉と9円玉だけになった。この2種類の硬貨だけで48円以上の全ての金額が支払いできることを示せ。

もしくは、

●長さ7cmと9cmのタイルがたくさんある。これらを横に並べて、48cm以上のあらゆる長さを敷き詰められることを示せ。

と置き換えることができる。以下では、一般化は後回しにして、7円玉と9円玉に置き換えながら考察することにしたい。

 この類似問題は、22年以上前の2000年2月25日の日記でも考察したことがあった。この時の問題は大阪大の数学の入試問題として出題されたもので、
どのような負でない2つの整数mとnを用いても
χ=3m+5n
とは表すことができない正の整数χをすべて求めよ。
となっていた。

 鈴木貫太郎の動画ではお得意のmod(モッド)を使った解法が紹介されていたが、7円玉&9円玉に置き換えて考えるならば、これは与えられた金額を過不足無しで支払う方法を確立することと同義となる。

 そこで、
  • まず、与えられた金額をすべて7円玉だけで支払うことを考える。金額が7の倍数であれば支払い完了。
  • 7円玉だけでピッタリ支払えない場合は、当該の金額にできるだけ近い金額分を7円玉で支払うこととする。その場合の不足分は、1円〜6円までの6通り。つまり7円玉だけでは1円〜6円不足する可能性がある。
  • そこで、9円玉を7円玉に取り替える。こうすると、
    • 不足金額が2円、4円、6円の時は、7円玉から9円玉への取り替えを1回から3回行うことで不足をゼロにすることができる。
    • 不足金額が1円の時は、7円玉5枚を9円玉4枚に取り替える。
    • 不足金額が3円の時は、7円玉6枚を9円玉5枚に取り替える。
    • 不足金額が5円の時は、7円玉7枚を9円玉6枚に取り替える。
    という方法により、不足分を解消することができる。但し「取り替える」という操作を行うためには一定金額以上でなければならない。上記では、「不足金額が6円の時は、7円玉3枚を9円玉3枚に取り替える。」が一番大きな金額になり、この場合、そもそも6円の不足となった金額が7円玉6枚であることから、取り替え後の枚数の内訳は7円玉3枚と、9円玉3枚で合計48円。
     なお、48円より大きな金額の支払いでも不足分は1円〜6円のいずれかとなるので(不足が7円以上となった時は7円玉を1枚追加すればよい)、すべて支払い可能、すなわち、すべて 7x+9y で表せる。

     上記の解法は小学校高学年でも理解できる方法だが、一般化ができない。入試問題の解法としては、満点にはなっても、エレガントな解法に与えられるかもしれないボーナス点は貰えそうにない。やはり、modを使ったやり方が優れているようである。

     modを使った解法のなかで面白いのは、例えばトランプのカード「1」から「10」をどのように並び替えても、10通りの数が1枚ずつであることに変わりが無いという点である。

     なお、今回取り上げられた問題(一般化)では、「a、bを互いに素な自然数、x、yは0以上の整数とするとき、ax+byで表せない最大の整数は ab-a-b であることを示せ。」というように「x、yは0以上の整数」という条件がついていたが、さらに一般化すると。

    ●a、bは互いに素、x、yを整数とすると、すべての整数は、ax+byで表わすことができる。

    ということになるようだ。またこの場合、x、yが負になるというケースは、硬貨の例ではおつりを払うという意味になる。

     このことから、ゴールドバッハの予想が解けるのではないかと一瞬思ったが、
    • 上記の場合は、aとbを固定した上で、適当なx、yを選べばどんな整数もax+byで表わすことができるという意味。
    • ゴールドバッハの予想は、任意に選んだ2より大きい偶数は2つの素数の和として表すことができるという意味であり、上記で言えばx=1、y=1というようにx、yが固定されており、かつ、aとbは互いに素であるだけでなく素数という条件がついているので、問題の性質は異なるようだ。
    それと、元の問題で「ax+byで表わすことができる」というのは「一意的に表せる」ということではない。例えば、a、bの最小公倍数に相当する数の部分は、(硬貨の例で言えば)どちらの硬貨でも支払い可能となる。もしかして一意的に表せることがゴールドバッハの予想に関係してくるのかと思ったが、

    54=7+47=11+43=13+41=17+37=23+31

    というように「54」という数は5通りもの素数の和で表すことができるから、一意性自体はあまり関係無さそうだ。

     不定期ながら次回に続く。