じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 ↓の記事で、『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』の話題を取り上げた。このシリーズの1番目は『ボッコちゃん』であったが、私がこのことですぐに浮かぶのは、北九州のウォーキングコース沿いで見かける写真のようなマネキン人形である。姿形も表情もとてもリアルで、季節に合わせたファッションのセンスもいい。このマネキンが喋ったり動いたりしたら、「ボッコちゃん」そのものになりそうな気がする。

2022年5月25日(水)



【小さな話題】『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』#1〜#7

 NHK-BSPで2022年4月5日から毎週火曜日に放送されている 、表記の番組(公式サイトはこちら)の備忘録と感想。これまでの内容は、
  1. ボッコちゃん
  2. 生活維持省
  3. 不眠症
  4. 地球から来た男
  5. 善良な市民同盟
  6. 逃走の道
  7. 見失った表情
の7話であり、全20回が予定されているらしい。

 一話完結型【但し前後編の2回完結あり】のドラマは大概、「ガッカリ編(=期待外れ)」、「くだらん編(=じつにくだらない)」、「分からん編(ストーリーが理解できない)」の回が含まれていることが多いのだが、このシリーズは今のところすべての回が分かりやすく、佳作以上であるとコメントさせていただけそうだ。原作が優れていることもその理由だろうが、それぞれの回のキャストの演技力も抜群である。全20回と言わず、ぜひとも第二弾以降を続けてもらいたいところだ。
 なお、私は原作は一度も読んだことが無いが、放送内容の一部についてはなんとなく既視感があった。ネットで調べたところ、2007年から2008年頃に、NHKで

星新一ショートショート

としてパイロット番5作品、レギュラー放送25作品、スペシャル版6作品が放送されており、一部は翌年以降にも再放送されていたことから、おそらく、その一部を視聴していたためと考えられる。といっても、当時の放送内容の中で記憶に残っているものは1つもない。

 以下、ネタバレ満載の一口コメント。
  1. ボッコちゃん
     ウィキペディアに記されているように、この作品は星新一の代表作であり、最初の文庫作品集の表題にもなっているという。1958年発表ということだが、今の時代、AI技術の進歩によって、ボッコちゃん以上の接客スキルを備えたロボットが実現しており、ドラマと同じような展開は十分に起こりうる。星新一の先見性を示しているとも言えよう。
     今回のドラマでは水原希子さんがロボット役を演じておられたが、これはなかなかの名演技。今の時代、人間がロボットらしく振る舞うことのほうが、ロボットが人間らしく振る舞うよりも難しくなっているように思う。
  2. 生活維持省
     ウィキペディアによると1960年発表の作品で、あらすじはリンク先の通り。
     幸いなことに、2022年現在では生活維持省は存在していないが、もし世の中から戦争、癌、交通事故、災害、パンデミックなどによる死亡がすべて根絶されたとすると世界の人口は増えすぎて、「人口爆発、都市開発、治安の悪化、交通事故が発生し、生活水準は下がり、ノイローゼや自殺、貧困と暴力が公害や犯罪を蔓延らせる。行き着く先はいつも同じ、戦争です。」という事態に陥る恐れが無いとは言えない。今の日本でほぼ平穏な生活を送ることができている陰には、こうした犠牲者がおられるということを忘れてはなるまい。いずれにせよ、生活維持省が作られなくても人口増加に伴う将来の諸問題が解決できるような総合的な対策を常に検討していく必要がある。
  3. 不眠症
     いわゆる「夢オチ」モノだが、何が夢で何が現実なのか、何が何だかわからなくなる。「私の人生も実はすべてが夢の中の出来事だった」という形で目が覚め、さらにその目が覚めたことも実は夢だった、という形で無限連鎖が続いていくのが、実は人生の本質なのかもしれない。
  4. 地球から来た男
     テレポーテーションというのはウソで、本人が別の惑星に送り込まれたと思い込んでいるという話だが、じつは、今の地球環境も毎日入れ替わっていて、個々人はランダムに「複数の地球」の間を移動しているのかもしれない。けっきょく、自己の同一性自体が創り上げられたものということになるが。
     ま、ポジティブに捉えるならば、過去に嫌な体験があった人は、「今の自分は別の地球に送り込まれている」と信じ込むことで、前向きの生き方ができるようになるかもしれない。
  5. 善良な市民同盟
     前後編に分かれていたが、結末は予想通りだった。カルト宗教の信者たちもこのような形でマインドコントロールされているのだろう。
     「パンデミックと、ワクチン」というのは新型コロナに似たところがある。
  6. 逃走の道
     結末を知らずに視たので、かなりの迫力があった。もしや、マネキンばかりが住む別の世界へ?と思ったが、妥当なオチであった。
  7. 見失った表情
     昨晩放送されたばかりであったが、他の作品に比べるとイマイチ、面白くなかった。役者さんほどではないにせよ、多くの人たちは「表情操作機」なるものを使わなくてもある程、顔の表情をコントロールできると思われるからである。写真を撮る時に口元を開く「チーズ」のポーズも同様。もっとも、新型コロナ以降はマスク着用により、相手の表情が読み取りにくくなっているが。