じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 岡大・東西通りのハナミズキが見頃となっている。以前はGWの頃に咲いていたと記憶しているがずいぶんと早い。

2022年4月16日(土)



【連載】abc予想証明をめぐる数奇な物語(2)

 昨日に続いて、

NHKスペシャル「数学者は宇宙をつなげるか?abc予想証明をめぐる数奇な物語【ブログ後編はこちら

についての感想と考察。なお昨日も述べたように、上記の放送は59分バージョンであったが、4月15日の23時からは89分の「完全版」が放送された。このWeb日記では59分版をベースに、完全版のほうも並行して参照しながら感想を述べることにしたい。

 さて、昨日のところで、anc予想は単純化すると、

c/rad(c)<rad(ab)

という形になるという話を取り上げた。この式が何を意味するのか、高3までの知識、それも50年前に得た知識しか持たない私なりにもう少し考えてみることにしたい。

 昨日も述べたように、ウィキペディアによれば、rad()とは

●自然数>nに対して、nの互いに異なる素因数の積を n の根基 (radical) と呼び、radと書く。以下に例を挙げる。

として定義されている。私の理解が正しければ、例えば本日の年月日からの連想で、a=2022、b=416とすると、素数判定機や電卓による計算で、
  • 2022=2×1011=2×3×337
  • 416=2×208=2×2×104=2×2×2×52=2×2×2×2×26=2×2×2×2×2×13
となるので、

rad(ab)=2×3×13×337=26286

となる。いっぽう、

c=2022+416=2438=2×1219=2×23×53

となるので、

rad(c)=2×23×53=2438

よって、

c/rad(c)=2438/2438=1

であり、rad(ab)=26286であるから、

c/rad(c)<rad(ab)

は確かに成立する。しかし、この不等式に何か意味があるのかはサッパリ分からない。ジョセフ・エステルレ博士(ソルボンヌ大学)が1985年にabc予想を提案した時には、「正しくても間違っていてもどうでもよい、たいしたことない予想」と受け止めらたそうだが、うーむ、上記の c/rad(c)<rad(ab)が フェルマーの最終定理の証明にも繋がるような重要な予想であるとは直観できない。

 さて、ここまで書いたところで、改めて放送を再生してみると、画面の右下に「a、b、cは互いに素な自然数」という但し書きがついていることに気づいた。上記では、a=2022とb=416は互いに素ではないので、c/rad(c)<rad(ab)が成り立っても成り立たなくても、関係の無い事例であることが分かった。やれやれ。

 次に放送で挙げられた例は、a=2n、b=3nというものであった。そこで予想されていたのは、a+bすなわちcの「遺伝子(素因数)」は、nがどんな値であっても「長さ(素因数のベキ指数)が1の遺伝子しかない」か、「5の位置に長さ2の遺伝子があって、残りの遺伝子はすべて長さ1の遺伝子である」かのいずれになるというものであった。放送ではn=5、n=10、n=15の場合でこれが成り立つことが示されていたが、しかし、このことが、c/rad(c)<rad(ab)という不等式とどういう関係にあるのかはよく分からない。

 なお、画面の右下には小さな文字で、

※【「長さ(素因数のベキ指数)が1の遺伝子しかない」か、「5の位置に長さ2の遺伝子があって、残りの遺伝子はすべて長さ1の遺伝子である」かのいずれになるというのは】abc予想“簡易版”による計算のため一部の例外ありと記されていた。

 また、少し後の画面の右下には、

※【c/rad(c)<rad(ab)という不等式は】abc予想“簡易版”ε→0、K(ε)=1として単純化

という但し書きがついていた。うーむ、簡易版すら理解できないのでは、私の人生の中で「宇宙際タイヒミューラー理論」を理解するのは到底不可能。せっかく生まれてきたのに、不可能であることをそのままにして死ぬのは何とも残念な話だ。

 不定期ながら次回に続く。