じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 春分の日の岡大構内は閑散としており、文学部西の駐車場からミモザと花桃を車に邪魔されることなく見渡すことができた。このうち右側のミモザは、枝が伸びきって不安定な状態になっている。年内には剪定、もしくは強風で倒れる可能性が高く、これだけ見事な咲きぶりが見られるのは今季が最後と思われる。左側のミモザのほうも倒木のあと残った根から枝を伸ばしているだけであり、いずれ撤去されると思われる。

2022年3月22日(火)



【連載】チコちゃんに叱られる!「いらっしゃいませ」「数字を3桁ごとに区切る」/カッコと句点

 昨日に続いて、3月18日に初回放送された表記の番組についての感想・考察【岡山では3月19日が初回放送】。本日はこのうち2.と3.を取り上げる。
  1. ニンニクがスタミナのもとなのはなぜ?
  2. 店員さんが「いらっしゃいませ」と言うようになったのはなぜ?
  3. 数字を3桁ごとにコンマで区切るのはなぜ?

 まず2.の「いらっしゃいませ」は、「徳川家康が東海道五十三次を整備したから」と説明された。家康により五十三次が整備されたことにより、東海道の宿の数はおよそ3000軒に増えた。中でも名古屋熱田区にあった宮宿は東海道最大の248軒となり強引な客引き合戦が行われた。こうして、江戸時代中期・後期以降に、それまでの「おいでなさいまし」に替わって、「こっちへおいでなさいませ」という意味の「いらっしゃりませ」が使われるようになり、「り」が言いにくいことから「い」に変化して「いらっしゃいませ」となった。現在では、店の中に入ったお客に対しても「いらっしゃいませ」が使われており、本来の意味は失われ、客が買い物をしやすくする意味で使われている、と説明された。

 「いらっしゃいませ」という挨拶言葉についてはこれまで注意を向けたことが無く、どこでどの程度声をかけられてきたか殆ど記憶していない。京都で暮らしていた時には「おいでやす」をよく耳にしたが、学生向け食堂でも同じように使われていたかどうかは覚えていない。長崎に住んでいる時は、長与の八百屋さんが「ごりよう、ごりよう」を頻発していたが、その八百屋さん特有の呼びかけであって長崎で定着しているわけでもないように思われた。
コンビニでも、 入店時に「いらっしゃいませ」、退店時に「ありがとうございました」と声をかけられるが、上記の「これは客が買い物をしやすくする」意味よりもむしろ、「あなたが店内にいることを確認しました」という万引き防止の意味で使われているように思う。
 海外旅行先での挨拶言葉についても殆ど記憶が残っていないが、一部の観光客向けの土産物店は別として、普通の商店では、店員から先に挨拶されることはあまり無かったような気がする。

 最後の3.の「数字を3桁ごとに区切る」については、「福沢諭吉が決めたから」と説明された。3桁ごとにコンマで区切るという表記は、福沢諭吉がアメリカの簿記の本を翻訳して日本に紹介したのがきっかけになっている。江戸時代の帳簿では数字は数字の漢字と位の漢字で表現されていたが、福沢はアメリカの会計本『帳合之法』の翻訳を通じて3桁ごとに点を打つと方式を紹介した。西洋式の簿記は広まらなかったが、数字の書き方は浸透した。

 「3桁ごとに区切る」ことが英語由来であることは小学生の頃に教わった記憶がある。私自身は、日本人は日本語の表記に合わせるべきだと反発して、しばらく4桁事にコンマをつけていたことがあったが、先生から直されてしまった。しかし、現在に至るまで、3桁ごとに区切る意義は感じられず、このWeb日記でも、桁数の多い数値を自分から3桁ごとに区切ることはない。

 放送によれば、1952年に内閣官房長官が各省庁に書類の書き方を統一するように通知した(『公用文改善の趣旨徹底について』)。その中で大きな数は「三けたごとにコンマでくぎる」と定めた。もっとも、公用文の表記はときおり改正されており、例えば、文化庁の文化審議会は、横書き文書で用いられていた「,」は「、」を原則とすることを提言しているというし、すでに首相官邸のホームページなどでは「、」の表記になっている。余談だが私自身は、現職時には何度も入試関係の委員をつとめていたが、議題の殆どは表記の変更にかかわるものであった。具体的にはこの「,」と「、」のほか、
  • 「若干名」と「若干人」など人数を表す表記
  • 「〜である者」と「〜であるもの」の書き分け
  • 「選抜」と「入試」
  • 「合格発表」と「合格者発表」
などなど。

 元の話題に戻るが、世界の中で4桁ごとに数え方が変わるのは日本のほかには中国、韓国、モンゴルの一部くらいで殆どの言語では3桁ごとに数え方が変わるという。ところが「コンマ・ドット問題」があり世界基準ではコンマをつけていないという。日本・アメリカ・イギリス・中国などでは、3桁ごとにコンマで区切り、小数点はドットをつけているのに対して、ドイツ・イタリア・フランス・ポルトガルなどは、その逆の使われ方をしている(こちらに事例紹介あり)。そう言えば、「コンマ以下」には小数点以下という意味があった。この表記の混乱を避けるために、国際基準では、3桁区切りは空白で表記し、小数点のみコンマ(カンマ)またはドットで表記することになっているという。この取り決めは2003年、第22回国際度量衡総会の決議によるという(国際単位系(SI)第 9 版(2019)日本語版について)。

 これまた余談だが、こちらの資料には、文末にある括弧と句点の関係の使い分けについて重要な提言があった。それによれば、
文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。
 例)当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である。)。
さらに、二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。
 例)当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している。(別紙として、決定に 至った経緯に関する資料を付した。)
なお、一般の社会生活においては、括弧内の句点を省略することが多い。解説・広報等では、そこ で文が終わっていることがはっきりしている場合に限って、括弧内の句点を省略することがある。
 例)年内にも再開を予定しています(日程は未定です)
となっている。このWeb日記では、その時の気分で「。」の位置を変えていたが、今後はできるだけ上記の基準に合わせるようにしたい。