じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



03月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る


 気象庁の黄砂情報によれば、3月5日には西日本に黄砂が飛来。これにより、この日の日の出は霞んで見えていた。

2022年3月05日(土)



【連載】コズミックフロント「“幽霊粒子” ニュートリノの謎」(4)ニュートリノ振動の仮説と実証

 昨日に続いて、2月24日に初回放送された表記の放送の感想・考察。

 昨日の日記の最後のところで、太陽から放出されるニュートリノの数が、理論予想の1/3にとどまるという、太陽ニュートリノ問題について取り上げた。

 この問題について大胆な仮説を提唱したのが、かつてフェルミの研究チームで「子犬」という愛称で呼ばれていたブルーノ・ポンテコルボ(放送では「ポンテコルヴォ」)であった。ポンテコルボは第二次大戦後、イギリスの原子力エネルギー庁で働いており、原子炉からニュートリノが放出されることを知っていたが、研究成果は当局から機密扱いとされた。その後、冷戦がエスカレートする中、共産主義の活動をしていると疑われ、ソ連に亡命。ポンテコルボは、1957年、ニュートリノには3つの異なる種類があり、移動する間に、ある状態から別の状態、さらに別の別の状態、そして元の状態に戻る、というニュートリノ振動の仮説を提唱した。この仮説により、太陽ニュートリノの観測値が理論予想の1/3にとどまるという不一致を説明できる【=検出されたのは3つの状態のうちの1つにすぎない】。しかし、そのいっぽう、ニュートリノが振動を繰り返すというアイデアは、アインシュタインの相対性理論に矛盾する。相対性理論によれば物質の移動が光の速度に近づけば近づくほど時間の流れは遅くなり、光と同じ速度では時の流れは止まってしまう。ニュートリノは質量がゼロと仮定されており、時間は経過しない、であるならば振動も起こりえないはずである。

 上記の矛盾は、1990年代、日本のスーパーカミオカンデで行われた観測により解消した。放送によれば、宇宙船が地球の大気に衝突するとニュートリノが生まれ、地下にあるスーパーカミオカンデで観測される。いっぽう、地球の裏側から到達したニュートリノも同様に観測できる。その結果、電子型ニュートリノとミュー型ニュートリノが観測された。ミュー型ニュートリノは、上から降ってきた数は理論値と一致したが、地球の裏側から降ってきた数は、理論値の半分であり、地球内部を通過している間に振動していることが示されたという。これと同時にニュートリノにはわずかな質量があることも実証された。ウィキペディアのリンク先では、この部分について、
ニュートリノの質量やそれらの混合行列に関する詳細な分析を、大気ニュートリノ、太陽ニュートリノ、人工ニュートリノなどを用いて研究している。ニュートリノが質量を持っている場合には世代間の混合が生じる。これはニュートリノ振動と呼ばれる現象である。一例をあげると、飛行中の電子ニュートリノがミューニュートリノへ変化する。このニュートリノ振動を詳しく調べることにより、ニュートリノ同士の質量の2乗の差の絶対値を測定できる。また、ニュートリノと反ニュートリノの振動の違いを測定することにより、ニュートリノの混合行列に含まれる複素数の位相も決定できるかもしれない。ニュートリノに質量があることが明確となった今、このような詳細な研究はニュートリノになぜ質量があるのかなどを理解するためには必要不可欠なことである。
と記されていた。

 ここからは私の感想・考察になるが、上掲の3種類のニュートリノというのは、私が理解した限りでは、1種類のニュートリノの状態の変化であって、3つのニュートリノが独立して存在しているということでは無さそうに思えた。水に喩えれば、H2Oという物質が、氷→液体の水→水蒸気という3つの状態を繰り返しているようなものだろう。但し、水の三態では外部エネルギーに依存しているのに対して、ニュートリノ振動はどうやら外部の影響なしに固有に振動しているようであった。
 ニュートリノの質量についてはウィキペディアでは、
従来弱い相互作用しかしないこともあって質量が観測できず、質量は0であるとするのが一般的であった。しかし、例えば光子には質量が0であるとする理論的根拠が存在するが、ニュートリノについてはそのような理論は無かった。ニュートリノが質量を持つことが分かったものの、ニュートリノ振動からは型の異なるニュートリノの質量差が測定されるのみで、質量の絶対値はわからない。
1987年2月23日に発見された15万光年離れた大マゼラン雲の超新星SN 1987Aから飛来した電子ニュートリノの観測によると、電子ニュートリノの静止質量は5% 以内の誤差で最大 16eV であり、これは電子の質量の30万分の1である。三重水素崩壊の正確な測定によると、電子ニュートリノ質量の上限は2 eVである。
ニュートリノの質量が有限値を持つことは理論研究に大きな影響を与える。まず問題になるのは、これまで各種の提案がされてきた標準理論のうちの一部はニュートリノの質量が 0 であることを前提としている。このため、それらの理論は否定される。また、ニュートリノ振動は、各世代ごとに保存されるとされてきたレプトン数に関して大幅な再検討を促すことになる。
また、ニュートリノには電磁相互作用がないため光学的に観測できず、またビッグバン説では宇宙空間に大量のニュートリノが存在するとされていることから、ニュートリノは暗黒物質の候補のひとつとされていたが、確認された質量はあまりに小さく大きな寄与は否定された。
と記されているが、現時点では標準理論を再構成できる段階には至っていないようだ。ウィキペディアではこのほかニュートリノが光速より速いとされた実験結果とその撤回という興味深い記事があった。

 なお、元の太陽ニュートリノ問題については、太陽モデルの変更も検討されていたようであるが、日震学の発展および改良したニュートリノ測定によって否定されたとのことだ。

 次回に続く。