じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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「n個石が入っている袋から1個以上無作為に取り出したとき、偶数個と奇数個どちらの確率が高い?」について解説しているYouTubeサイト。


2022年2月9日(水)



【小さな話題】n個石が入っている袋から1個以上無作為に取り出したとき、偶数個と奇数個どちらの確率が高い?(その1)

 ネットで検索中、偶然、

直感に反する確率6選【世界のヨコサワ×ヨビノリ】

というYouTubeのサイトに遭遇した。取り上げられている「直感に反する確率6選」とは以下の6題:
  1. 表裏が公平なコインで5回連続襄が出ているとき次は表が出やすい。YesかNoか。
  2. 30人のクラスで誕生日が同じペアがいる確率はどれくらい?
  3. 1/100の確率で当たるガチャを100回引いたら少なくとも1回当たる確率は?
  4. n個石が入っている袋から1個以上無作為に取り出したとき、偶数個と奇数個どちらの確率が高い?
  5. 勝率55%のヨコサワが10ドルから始めたとき破産する確率は?(買ったら1ドル、負けたらマイナス1ドル)
  6. ゆがんだコインを用いて公平なゲームは作れる?
であった。このうち1.は独立事象についての基本中の基本、2.と3.はよく耳にする問題(2.は約70%、3.は1-(99/100)^100=63.4%)、と進んだところで次の4.のところで「ちょっと待てよ」と考え込むことになった。この問題は、「無作為に取り出す」という意味が曖昧であり、何を持って無作為とするのかによって結論が変わってくるのではないかと思われたからである。

 出題者が想定している「無作為」とはおそらく、

●袋の中に入っているn個の石はそれぞれ等確率で独立して選ばれる。

ということを意味していると考えられる。これを前提とした場合、この問題は、こちらの解答のように置き換えることができる。
@袋Aにn個の石が入っている。袋Aから1個の石を取り出し、コインを投げて表が出れば、この石を袋Bに入れる。裏が出れば、この石をゴミ箱に入れる。
A袋Aの石が無くなるまで@を繰り返す。
B袋Aの石が無くなったとき、袋Bに石が1つもないときは、ゴミ箱の石を袋Aに戻し、Aを最初から行う。袋Bに石があれば終了する。
終了時に、袋Bの石が奇数個になる確率と偶数個になる確率を求めよ。

 これによって、
  • 奇数個が選ばれる確率は(2n-1)/2n-1
  • 偶数個が選ばれる確率は(2n-1-1)/2n-1
ということになり、奇数個のほうが確率が大きいという結論になる。

 ちなみに、元のYouTubeでは、組合せの数から確率が求められていた。具体的には、
  1. nがA、B、Cの3個だとする:取り出す際に選ばれる組合せは、A、B、C、AB、BC、CA、ABCの7通りであり、このうち奇数は4通りなので奇数のほうが多い。
  2. nがA、B、C、Dの4個だとする:選ばれる組合せは、1個選ばれるのが4通り、2個選ばれるのが4C2で6通り、3個選ばれるのは4通り、4個選ばれるのは1通りなので、奇数個選ばれるのは8通り、偶数個選ばれるのが7通りで奇数のほうが多い。
というような例が挙げられ、nがどのように大きくなっても奇数個のほうが多いこと、さらに上記と同じnの一般解が紹介されていた。



 もっとも、上記の置き換えは、コインを投げという操作に頼っており「n個の石はそれぞれ1/2の確率で選ばれる」ことが前提となっている。しかし「無作為で選ばれる」ということは必ずしも「1/2の確率で選ばれる」とは限らないようにも思われる。例えば、それぞれの石がそれぞれ1/10の確率で独立して選ばれた場合はどうなるのだろうか?

 例えば、n=3で、3個の石A、B、Cがそれぞれ1/10の確率で選ばれるとした場合、
  • Aのみが選ばれる確率=(1/10)*(9/10)*(9/10) 【1個が選ばれる確率はその3倍】
  • ABC3個がすべて選ばれる確率=(1/10)*(1/10)*(1/10)
となって、Aのみ1個が選ばれる確率のほうがはるかに大きい。なので、選ばれるパターンがすべて等確率になるという前提が崩れてしまい、組合せの数を分母、奇数個と偶数個を分子とする元サイトの解法で大きさを比較することはできなくなる。

 但し、それぞれの石が選ばれる確率が1/2より極めて小さくなると、

●1個のみ選ばれる確率>2個のみ選ばれる確率>3個のみ選ばれる確率>4個のみ選ばれる確率>5個のみ選ばれる確率>...

という傾向が顕著になるため、奇数個が選ばれる確率のほうが大きめになることは直観的に把握できそう。

 いっぽう、「それぞれの石が9/10の確率で選ばれる」というように1/2より大きい場合にどうなるかは、まだ考えていない。【2項分布の数式があったような気もするが、すっかり忘れてしまった】[
]「選ばれる確率をp、全体の個数をnとするとき、「偶数個が選ばれる確率のほうが奇数個が選ばれる確率よりも大きくなるようなpとnは存在するか?存在する場合はその範囲を求めよ」というような問題が作れそう。

 次回では、「無作為に選ぶ」についてもうすこし別の考え方があることについて考察する。