じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 1月2日の日記で、北九州では皇帝ダリアの花は年越しできるが、岡山では霜にあたって枯れてしまうという話題を取り上げた。
 岡山のほうが寒いことを示す顕著な例としては、ヒメツルソバがある。岡山では氷点下の寒さが数回続くと、ヒメツルソバの地上部は殆ど枯れてしまうため(写真上)、大規模な群生は見られない。北九州でも氷点下に下がることはあるが、回数が少ないため、枯れるほどには至らず、石垣の割れ目などで繁殖する(写真下)。

2022年1月11日(火)



【連載】チコちゃんに叱られる!「水族館が暗い理由と大型のアクリル水槽」「鼻をつまむと声が変わる理由」「最強シャボン玉決戦」

 昨日に続いて表記の番組についての感想と考察。本日は、
  1. ぽち袋の「ぽち」ってなに?
  2. なんで水族館は暗いの?
  3. なんで鼻をつまむと声が変わるの?
  4. 最も割れにくいシャボン玉はどれだ!?最強シャボン玉決定戦
という4つの話題のうち、残りの2.〜4.について考察する。

 まず2.の水族館の謎であるが、番組では「人をけすため」であると説明された。サカナは、大きな影や素早く動くものに驚きやすい性質があるため、人間側を暗くして、見学者を見えにくくしているということであった。もっとも、一般家庭の室内の水槽で魚を飼う時、必ずしも室内を暗くする必要はないし、水槽に近づいたからといってサカナが驚くことはあまりない。人間側が暗くても明るくても、あまり関係なさそうに思える。また動物園などで夜行性の動物を観察する場合は、通路を真っ暗にしたりしているが、昼行性の動物であれば、やはり見学者をあまり気にしていない。いちばんの理由は、「水槽の中を見えやすくするため」で良いのではないかと思われた。

 番組では、水族館ネタの続きとしてて、アクリルで作られた大型水槽の話題が取り上げられた。取材対象の会社は、これまでにもいくつかのTV番組でも紹介されたことがあり、私自身は確か、

カンブリア宮殿(2015年1月15日放送)

で、この話を聞いたことがあった。今回のチコちゃんの放送では、もっぱら技術面での工夫に焦点が当てられており、
  1. アクリル板は、同じ厚さの強化ガラスに比べて数倍の強度がある。
  2. 分厚いアクリル1枚では、表面と内部で分子の密度にばらつきが生じるため割れやすくなる。厚さ4cmの時が最適。
  3. アクリル板を貼り合わせることで水圧に耐えられる強度になるが、表面に細かな凹凸が残って光が乱反射するため曇ってしまう。
  4. そこでアクリルパネルと同じ成分の接着剤を流し込むことで2枚のアクリルが一体化して透明度が保てる。
といった点が説明された。
 アクリルには、「強度がスゴい」に加えて「加工がしやすい」という特徴がある。分割したアクリル板をつなぎ合わせて、いろいろな形の大きい水槽を作り出すことができるという。

 ちなみに、アクリル樹脂が工業化されたのは1934年頃のようだが、アクリル製回遊型水槽が完成したのは1970年、屋島山上水族館が世界初であるという。その時のエピソードはカンブリア宮殿でも、
もともと化学メーカーに勤務していた敷山。その会社に在籍していた当時、高松市にある屋島水族館の館長から「水槽の柱をなくしてほしい」という要望を受ける。敷山は、アクリルの持つ可能性を広げる、その依頼を受けたいと感じていたが、勤務先は、その依頼をあっさりと断ってしまったのだ。「アクリル水槽の仕事をやってみたい」そう考えた敷山は、依頼を受けるために化学メーカーを退社。仲間と共に起業し、柱のない世界初の大きな回遊水槽を作ったのだ。
と語られている。もっとも、その後は必ずしも順風満帆に発展したわけではない。
しかし、その成功によってアクリル水槽がビジネスになると見た大手メーカーがアクリル水槽分野に相次ぎ参入し、日プラは経営困難に陥ってしまう。だが、敷山は諦めなかった。 そして、アメリカの名門モントレーベイ水族館との運命的な出会いをきっかけに世界へと打って出る。
というご苦労があったようである。

 余談だが、私が大学で卒論研究を始めた1975年頃、ちょうど、動物を入れるための実験装置の壁面は、それまでの板に代えてアクリル板が使われるようになってきた。これにより中に入れられた動物の行動が見えやすくなるほか、清潔さを保つこともできるようになった。




 次の4.の「なんで鼻をつまむと声が変わるの?」については、「声は口から10cmのところで合成されているから」と説明された。声は口と鼻の両方から出ていて口から10cmのところで合成されているので、鼻をつまむと高い周波数の音が出ないため低くこもり声がかわる。経験的には、鼻をつまんだ時のほうが声が高くなるように思われがちだが、実際は逆であり、鼻を押さえた時に意識的に高い声を出しているために高く聞こえるだけであるという。
 私たちの声は喉のところにある声帯で発せられるが、そこで生じた空気の波は、口だけではなく鼻にも届いて、それぞれの空洞の中で響く。これらが口から10cmほど離れたところで合成され普通の声になるという。口から出ている音と鼻から出ている音を分離すると、鼻から出ている音のほうが高くなる。これは、小さなリコーダーのほうが高い音が出る仕組みと同様であり、鼻をつまんだ時のほうが高い音となる[]。
]「あー」という声を出しながら、鼻をつまんだり離したりすると、音の高さが変化することが確認できる。

 ここからは私の考察になるが、まず、電話の受話器とか、教室のマイクなどに口を近づけて喋った場合、鼻からの音はマイクには入りにくくなる。このことが、対面で喋る時の声と異なって聞こえる原因になっていると類推できるがこれで合っているだろうか。
 次に、自分のしゃべり声を自分の耳で聞く時と、録音された自分の声を聞く時では、音声が異なっているように聞こえるが、これも、声の合成のしかたや伝わり方の違いにあるように思われる。

 もう1つ、番組では声を出す仕組みを声帯と口や鼻の空洞で説明していたが、口を完全に閉じてしまっては声を出すことができない【「ムー」というような音だけなら出せるが】。腹話術の、いっこく堂さんも、口を閉じているように見えて実際は、わずかに開いた口の隙間から空気を出して声を出している。要するに、鼻をつまんでも声は出せるが、口を完全に閉じてしまっては声は出せない。これは、声を出す時に、口の中にある舌を動かしたり、口の形を歪めたりしていろいろな音声を発しているためである。なので、「鼻から出ている音」というのは厳密には、「声帯と口の中の舌などで作られた音を、鼻の空洞で振動させて出している音」ということになるのではないかと思われた。




 最後の5.の「最強シャボン玉決定戦」では、シャボン玉界のレジェンド、杉山兄弟が新たに参戦。杉山兄弟が工夫したシャボン玉成分は、

●精製水、液体せっけん、炭酸水、ラム酒、澱粉糊、粉末ゼラチン、ガムシロップ

となっており、精製水は余分なものが含まれていないので均一に混ざる効果、炭酸水は自然にキレイに混ざる効果をもたらす。この成分を使ったシャボン玉は(軍手をはめた手の甲で)24回突き上げることができ、川村教授の17回を超える記録を超えた。もっとも番組でも指摘されていたが、このシャボン玉決戦では川村教授のシャボン玉、杉山兄弟のシャボン玉、のいずれも杉山兄弟がついているため、自分たちのシャボン玉のほうを丁寧についていた可能性はある。科学的に検証するのであれば、機械を使い、何度も試した上での最高値や平均値で比較する必要があるが、チコちゃんの放送としてはこれで良いのだろう。