じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 農学部構内に、11月下旬から12月上旬に見頃となる白い花があり、ギンモクセイの特別の品種ではないかと思っていたが、久しぶりに見に行ったところ、「ヒイラギ」という名札がつけられていることに気づいた。ヒイラギはとげ状の鋸歯を持つのに対してこの樹木は縁が丸くなっているのでギンモクセイだと思っていたが、ウィキペディアによれば、
若樹のうちは葉の棘が多いが、老樹になると葉の刺は次第に少なくなり、縁は丸くなって先端だけに棘をもつようになる。
と記されており、実際、同じ幹から伸びている若い枝には鋸歯の葉っぱがついていることが確認できた。このほか、ヒイラギとギンモクセイの雑種のヒイラギモクセイがあり、「ヒイラギより表面の光沢は少ない。葉脈の主脈は葉の裏面で突出する。」という特徴が記されているが、並べて比較しない限りは区別が難しそう。


2021年12月01日(水)



【連載】瞑想でたどる仏教(8)智恵と慈悲と心理療法

 11月30日に続いて、NHK-Eテレ「こころの時代」で、4月から9月にかけて毎月1回、合計6回にわたって放送された、

●瞑想でたどる仏教 心と身体を観察する

の備忘録と感想・考察。

 第2回の終わりのところでは、「苦しみの解放から慈悲へ」と題して、苦しみから解放されて智恵を得たらそれで完成になるのか、そのあとどうあるべきか、について説明された。

 スッタニパータには、究極の理想に通じた人が次になすべきことが記されており、生きとし生けるものに対して、安穏であれ、幸せであれ、という慈悲の気持ちを持つことが大切であると説かれているという。自分自身が幸せになることを念願するばかりでなく、他者に対して、いま現在だけでなく、それも未来に生まれてくる人たちに対しても振り向けなければならない。

 慈悲の由来については仏教研究者によって、元々存在していたものなのか、修行を通じて得られたものなのかというように見解が分かれているが、蓑輪先生は、東日本大震災の時の人々の支援行動を例にとり、私たちは本来的に他者に対する慈しみの気持ちを持っている、但し日常的には目立たず忘れられがちであるが、何か危機的な状況があった時に意識されるものであると述べておられた。

 智恵と慈悲は仏教にとって大切な二本柱であり、智恵は瞑想によって得られる気づき、名色の分離や縁起の発見なども含まれるが、ブッダが弟子たちに最初に説いた「四諦八正道」にはすでに慈悲の要素が感じられるという。じっさい、八正道の中には、怒りの気持ちを持たない、相手を傷つけない」といった慈悲の要素があり、また四諦には、
  • 集諦(苦の下人は欲望である)→苦諦(この世は苦しみに満ちている)
  • 道諦(八正道の実践が苦を消滅させる)→滅諦める(苦しみのない理想的な状態)
という一方的な関係性(縁起)についての智恵が含まれており、四諦八正道を通じて、自分に向いての智恵と社会に向いての智恵の両方が大切なものであると考えられているという。日本人の仏教者の中にも、ある時期までは自分の修行ばかりをやっていたが、あるところで大きな体験をして慈悲の世界に気づき、大きな悟りに到達したという話があるという。

 ここからは私の感想・考察になるが、以上に説明された「智恵と慈悲の二本柱」という考え方は、仏教という1つの宗教と、心理療法の違いを区別する上での目安になるかもしれない。
 心理療法は、
  • ウィキペディア
    心理療法(しんりりょうほう、英: psychotherapy:サイコセラピー)、精神療法(せいしんりょうほう, Psychological Treatment)、心理セラピーとは、物理的また化学的手段に拠らず、教示、対話、訓練を通して認知、情緒、行動などに変容をもたらすことで、精神障害や心身症の治療、心理的な問題、不適応な行動などの解決に寄与し、人々の精神的健康の回復、保持、増進を図ろうとする理論と技法の体系のことである。
  • 脳科学辞典
    心理療法とは、特定の訓練を積んだ専門家(臨床心理士など)によって、心理的諸問題を抱える患者やクライエントと呼ばれる人の、認知・行動・感情・身体感覚に変化を起こさせ、症状や問題行動を消去もしくは軽減することをめざす社会的相互作用である。個人を対象として行われることが多いが、集団を対象に行われることもある。
というように定義されており、基本的には、個人における精神的健康の回復・増進を目ざすものである。もちろん、心理療法の中には、他者との関係や社会への適応を重視するものもあるし、究極的にはどのセラピーも共生社会の実現に貢献することを目ざしているとは思われるが、「智恵と慈悲の二本柱」というほどではない。少なくとも、心理療法の有効性は、個人レベルでの変化を指標として確認されるだけであって、社会全体にどこまで貢献したのかは測定されていない(あくまでスローガンのレベル)。

 不定期ながら次回に続く。