じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 ローカルニュースで浅口市のアッケシソウ(サンゴソウ)が見頃を迎えているという話題を取り上げていた。一度は見に行きたいと思っているのだが、今年の一般公開は10月24日までとのことで、都合がつかなかった。
 なお、アッケシソウそのもの、もしくは近縁種と思われる植物は、チベット高原・ダブイ塩湖でも見かけたことがあった。標高4400メートルの過酷な環境で逞しく育っていた。

2021年10月23日(土)



【連載】#チコちゃんに叱られる!「猫の模様はなぜいろいろある?」「親指はなぜ太い?」

 10月22日に初回放送された、チコちゃんの番組の考察と感想。この回では、

  1. なんで猫だけいろいろな模様があるの?
  2. なんで親指は太いの?
  3. コロナ禍の働き方改革のコーナー「チコっと世界のことわざ」
  4. なんでカップ麺の待ち時間は3分なの?
という4つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.と2.について考察する。

 まず1.のネコの模様については、番組では「人間が飼っているから」と説明された。
 この番組でお馴染みの今泉忠明先生(日本動物科学研究所)によれば、ネコの先祖はキジトラ柄のリビアヤマネコであったが、人間に飼われるようになってから、いろいろな柄が登場し、すでに2000年前の古代ローマ時代には、白黒のネコを描いた絵が見つかっているという。多様な模様の原因は突然変異によるものだが、目立つ色に変異しても野生では、天敵に見つかったり自分が獲物を獲るときにも早めに逃げられたりするといった不利な点があり生き残りにくい。いっぽう人間が飼うようになれば、むしろ珍しい色が好まれるため子孫が増えやすくなるのだろう。
 もっとも、もともとの原因はあくまで、柄の変異が起こりやすいという点にあるはずだ。2021年4月24日の回で「イヌはなぜいろいろな種類があるか?」という疑問が取り上げられたことがあったが、イヌの大きさがいろいろあるのは、イヌのIGF1は遺伝子のかたまりが緩んでいて外部の刺激により変化しやすい構造になっているためではないかと指摘された【←但しまだ研究中】。ネコはイヌに比べるとIGF1が変異しにくいため、大きさはほぼ一定になっている。
 もっとも、ネコのいろいろな模様は、必ずしも遺伝子だけで決まるわけではないという。例えばクローン猫は親の猫と違う毛並みになったという事例があるという。また、生まれた時は真っ黒だったが7歳でごま塩みたいな柄になった猫もいるという。あくまで私の想像だが、猫の色というのは、環境からの偶発的要因によって容易に変異しやすい仕組みになっているものと思われる。
 番組ではさらに、シマウマ、トラ、ライオンなどがなぜ均一の模様なのか、という点も説明された。今泉先生によれば、シマウマやライオンも家畜やペットとして飼えば、1万年後には真っ黒になるなど柄が変わるかもしれないとのことであった。番組ではケニアで発見されたという水玉模様のシマウマが紹介されていたが、これは道路で生息地が限定され近親交配が進んだことによる変異であったようだ。

 次の2.の親指については、番組では「石を握りしめるため」と説明された。親指研究のスペシャリストで『親指はなぜ太いのか』という著書を出されている島泰三先生によれば、人類は森から草原に進出したのち、飢えをしのぐ手段として肉食獣が食べ残した骨などを食べるようになった。その動物の骨を小さく砕いて食べる際には、石を強く握りしめる必要があり、適した形に進化した結果親指が太くなったという。また化石を見ると、人類の祖先は骨髄を食べる前と比べ脳が大きくなった。これにより高度な道具を作ることに成功し180万年前には動物の世界を支配するようになったというようなお話であった。
 もっとも、上記の説明では、なんだか、ラマルクの用不用説のように思えてしまう。じっさい島先生は、
硬い骨を割るには石を強く握りしめる必要があったため、人間の親指は石で骨を割れるような適した形に進化をとげ、その結果、親指が太くなった。
というように説明されていた。確かに、親指が太いと石が強く握れるようにはなるが、日々、石を握る動作を繰り返していたことで指が太くなり、その形質が子孫に遺伝したというのであるというのは獲得形質の遺伝ではないだろうか。
 あくまで自然選択説を出発点として考察するのであれば、草原に進出した人類の中で、たまたま太い親指を持つように変異した人類のほうが生き残る可能性が高かったと考えるべきであろう。骨髄を食べるようになった時代というのは、おそらく食べ物が相当に不足していた時代であり、親指の細い人類は生き残れなかったため、結果的に親指の太い人類のみが地球上で繁栄するようになったのではないか。
 なお番組では、アイアイの中指が針金のように細く、長いという写真も紹介された。アイアイはラミーという果実を主食としているが、ラミーは硬くでそのままでは食べることができないので、穴を開けて中指ですくい取って中身を食べる。その結果、中指は特殊な形に進化したと説明された。ウィキペディアによれば、アイアイはラミーばかりでなく、
昆虫の幼虫、カンラン科の果実の胚乳、タビビトノキの花の蜜、樹皮、キノコなどを食べる。門歯で樹皮やマンゴーの果実の繊維質・ココナッツの殻などに穴を空ける。木の中にいる昆虫や果肉は、細長い中指でほじくりだして食べる。なお、報告者のソネラによると米飯を与えると「中国人が箸を使うように手の細い指を2本使って食べる」という行動もとったという。
と記されており、ラミー以外もいろいろと食べているようだが、細い役になっていることは間違いない。しかしこれも、細長い中指をよく使うからそのように進化したというよりも、原猿類の中でたまたま細長い中指に変異した種類が結果として生き残ったと考えるべきであろう。もし、たまたま人差し指が細長くなるような変異が先に起こったら、そちらの動物のほうが繁殖したかもしれない。

 もちろん、動物の進化をすべて自然選択だけで説明しようとすることには難点があり、最近の新しい知見にも耳を傾ける必要があるとは思う。

 次回に続く。