じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 梅雨明け後の晴天が続き、岡大構内各所で除草作業が行われている。雑草生え放題の芝地はスッキリしたが、色とりどりの園芸種が咲いていた「お花畑」も一斉に刈り取られてしまったのは少々残念。特に、写真中段の文学部西出入口脇には、ルドベキア、エキナセア、ミントの花が見頃となっており、まもなくタカサゴユリが花を開くところであったが、まるごと刈り取られてしまった。いっぽう、写真上段と写真下段のハクチョウソウは根が残っているため、数ヶ月後には同規模に復活するはず。


2021年7月21日(水)



【連載】#チコちゃんに叱られる!「運動神経がいいってなに?」と行動分析

 7月16日(金)に初回放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の感想と考察。この回は、
  1. 運動神経がいいってなに?
  2. 海水に塩が入っているのはなぜ?
  3. コロナ禍の働き方改革のコーナー「歌うと唄う」「あふれるとこぼれる」
  4. なぜボクシングのリングは四角いのにリング(輪)と呼ぶ?
という4つの疑問が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。

 運動神経については、「生まれ持った才能よりも、繰り返し練習したおかげ」が正解とされた。スポーツ科学が専門の深代千之先生(日本女子体育大学学長)によれば、いわゆる運動神経がいいとは自分のイメージ通りに体を動かせることを指す。運動神経がいい・悪いという表現は俗語で、運動神経は練習で誰でも身につけられる。生まれ持って運動神経がいい人はいない。もともと、「運動神経」というのは才能やセンスのことではなく脳と筋肉をつなぐ神経そのもの(脊髄から筋肉までの遠心性神経の総称)。いわゆる運動神経がいい人というは脳の中に適切な神経回路を作れている人。脳の神経回路を例えるなら都内の地下鉄を利用して新宿駅から浅草駅に向かうとき最適なルートを通れる人のことを運動神経がいい、遠回りして目的地まで時間がかかる人のことを運動神経が悪いという。

 ここで少々脇道に逸れるが、私自身のような昔人間は、新宿から浅草まで向かうとなれば、丸ノ内線で赤坂見附に向かい、そこで銀座線に乗り換えて浅草駅まで乗り続けるというルートしか浮かばない。いっぽう番組で紹介された最短ルートは、都営新宿線で新宿から馬喰横山駅に行き、そこから都営浅草線に乗り換えて浅草に向かうというものであった。念のためルート検索したところ、都営線経由は馬喰横山駅構内での移動時間3分を含めて所要時間は26分。いっぽう、私が選んだ東京メトロ経由の場合は、新宿から赤坂見附までが10分、赤坂見附から浅草までが25分で合計35分もかかることが判明した。このほか、地下鉄以外を含めたルートとしては新宿から中央線快速で神田、神田から銀座線で浅草というルートも候補に挙げられていた(所要時間は25分)。
 もっとも、負け惜しみを言うわけではないが、東京メトロ利用、赤坂見附経由のルートの運賃はIC242円、きっぷ250円となっている。都営地下鉄利用、馬喰横山経由の場合はIC272円となっていて30円安く乗れる。しかも、馬喰横山経由の場合は東日本橋駅まで駅構内の移動があるが、赤坂見附での乗り換えは反対側のホームに歩くだけなので重い荷物があっても楽だ。ということで、もし新宿から浅草まで向かう必要があった時は、私は相変わらず丸ノ内線・銀座線経由のルートを選択することになるかと思う。

 さて、もとの話題に戻るが、深代先生によれば、
  1. 運動神経がいいとは、成功体験と反復練習。
  2. 成功体験とは【地下鉄のルート探索で言えば】適切なルートを知ること。
  3. 反復練習とは、【地下鉄のルート探索で言えば】適切なルートを何度も使っていれば体が自然に道順を覚える。
  4. 初めての運動でもすぐにできてしまう人は、過去の似たような運動の記憶を応用できる人。例えば、野球をやっていた人は投球フォームが似ているバトミントンのスマッシュが上手。
さらに、運動神経をさらによくする方法としては、
  1. うまい人の動きをまねする。脳の中の適切なルートを発見しやすくなる。
  2. うなくいった動きは繰り返し続ける。脳の中で適切なルートが固定化する。
  3. 練習中の自分を客観的に見る。練習中の様子をスマホで撮影して。いい動作だけを脳に定着させる。
と伝授された。

 深代先生のご説明では、「成功体験」、「記憶」、「脳」といった言葉が使われていたが、行動分析学的に言えば、これらは、強化、分化強化と分化弱化、課題分析、で充分に説明可能であり、すでに実践されている。ネットで検索すると、 などがヒットした。要するに、深代先生のご説明にあった「脳の中で発見」、「脳の中で固定化」、「脳に定着」といった「脳」概念は、別段、脳内での神経レベルでの変化によって証拠づけられたものではないし、その必要もない。一般向けに納得を与えるための方便にはなるが、科学的に見れば冗長となる。最初に取り上げられていた地下鉄のルート探索の喩えについても、より短時間で楽なルートを選択すれば、その選択は「早く着いた」という結果によって強化される。強化された行動は当然、習慣化していく(=「固定」)。

 ま、そうは言っても、課題分析をきっちり行って行かなければ、必要な動作は強化できない。そういう点では、それぞれのスポーツにおいて、専門的な分析ができるコーチの助けを借りることが必要であって、自己流の分析や思い込みに頼るべきではない。

 深代先生は、運動神経をよくするポイントとして「たまには休む」を挙げておられた。これは「休んでいる間に練習でのいいイメージが脳の中で増幅したと考えられる」と説明された。このことが行動分析学的に説明できるか、それとも脳科学の分野になるのかは分からないが、複合的な動作をうまく発揮させるようなケースでは、個々の断片的な動作を強化するだけでは不十分であり、それらを統合できるようなイメージ的な訓練はやはり必要。そのさい、休んだり、レム睡眠時の脳の活動に期待する可能性はありそうだ。

 私は、これに加えて「ケガをしない」配慮がぜひとも必要であると思う。大相撲の力士もそうだが、陸上競技などでも、直前のケガでせっかくの練習の成果を発揮できない選手がおられる。ケガを防ぐためには、単に「休む」ではなく、ケガに繋がるような動作を弱化する必要がある。また、ケガを起こしにくくするように、特定の筋肉を鍛える必要もあるだろう。

 次回に続く。