じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 入学式の頃、岡大・生協食堂(マスカットユニオン)の前に、新入生向けの部活動勧誘立て看板が並んでいたが、その後、新型コロナの感染拡大で部活動が停止されたことなどから、倒れたまま放置されている。

2021年5月27日(木)



【連載】ダーウィンが来た!「鳥の言葉が分かる!聞いてびっくり鳥語講座」その2 「文章を作る?」「外国語の学習?」

 昨日に続いて、5月23日に放送された表記の番組についての感想・考察。

 番組では続いて「鳥語講座 文章編」と題して、鳥たちが、複数種類の鳴き声(単語?)を組み合わせて「文章?」を作る事例、具体的には、天敵のモズが近づいた時に、シジュウカラは「ピーツピ(警戒しながら)ヂヂヂヂ(集まれ)」という鳴き声が発し、モズを威嚇する事例が紹介された。単に「集まれ」というだけでは、天敵に気づかず襲われてしまう恐れがあり、また「警戒せよ」というだけでは団結するために集まることができない。そこで文章を使い、警戒と協力を同時に促すことで1羽ではかなわない敵(=モズ)にも立ち向かうことができる、と説明された。

 この話題は、2019年3月27日に放送された「又吉直樹のヘウレーカ!スペシャル」でも取り上げられており、その際には、
「警戒(ピーッピ)」」、「集まれ(ヂヂヂ)」を組み合わせた「ピーッピヂヂヂ」は意味が通じるが、録音合成して「ヂヂヂピーッピ」のように並び替えると意味が通じない。
ということにも言及されていた。その時の私の考えは以下の通りであった。
  • 単語の組み合わせで文を作ることについては、番組だけではどういう事例があるのかはよく分からなかった。但し、「ピーッピ、ヂヂヂ」が単語の組み合わせなのか、それとも「ピーッピヂヂヂ」という新しい別の単語なのかは区別する必要がある。このWeb日記でも書いたように、例えば、「日day」と「本book」はそれぞれ別の意味を持つ単語であり、「日本Japan」は「日」と「本」から構成されているがこれは別の単語であると見なされる。必ずしも「日」と「本」を組み合わせたとは考えにくい。
  • フクロウ、ヘビ、カラスに対応した鳴き声があり、これを「警戒(ピーッピ)」という鳴き声と交互に発したとしても、それが「組み合わせ」と言えるのか、それとも単発的に2つの独立した単語を交代に発したのか区別する必要がある。
  • 素朴に考えると、人間の言語では、「警戒、集まれ」と、その語順を変えた「集まれ、警戒」は同じ意味になる。シジュウカラで「ピーッピヂヂヂ」は意味があり、「ヂヂヂピーッピ」は意味が通じないというのはむしろ奇妙。やはり「ピーッピヂヂヂ」は単語の組み合わせではなくて固有の別の単語ではないのか?

 今回の放送においても、上掲の私の疑問は解決していない。もっとも、原著論文は拝見していないので、何とも言えない。




 続く「鳥語講座 こども編」では、巣立った幼鳥たちが親鳥と一緒に過ごす中で、鳴き方を学習する様子が紹介された。具体的には、森の中にヘビの模型を置くと、シジュウカラの親は「ジャージャー」と鳴く。子どもたちもそれを真似て「ジャージャー」と鳴くようになった。さらには、混群にいたゴジュウカラやヒガラの子どもたちも言葉を学ぶため(?)にやってきた。それぞれの種で、「ヘビがいる」を示す鳴き声は異なるが、日本人の子どもが「ヘビ」、英語圏の子どもが「snake」と発しているのをお互いに理解するのと同様で、異種間の言葉を学習しているのではないかと説明されていた。

 鳥の特有のさえずりが、親や仲間から学習されるものであるという点は、相当昔にも聞いたことがあった。生まれてから一定期間の間に学習の機会が無いと、親と同じさえずりを発することはできない。また、さえずりには方言のようなものもあるという。今回の「ジャージャー」の学習もその1つかと思われるが、行動分析学でいう「タクト」として機能しているというよりも、親やきょうだいと同じ鳴き声を発しているという「同一性」自体が模倣行動を強化しているようにも思われる。これは、オウムやインコの鳴き真似についても言える。

 「異種間の言葉の相互理解」についてはイマイチ理解できないところがある。例えば、見知らぬ人に番犬が吠えるのは、番犬の立場から言えば、自分の縄張りに入ってきた敵を追い払おうとする威嚇行動であると考えられる。いっぽう飼主は、番犬が吠えたことで、来客があったことを知る【稀には泥棒や悪質訪問販売、カルト宗教の詐欺募金かもしれないが】。この場合、飼主は番犬の鳴き声を利用しているだけであって、番犬の言葉を理解しているかどうかは別の問題である。番犬の吠える原因が何であれ、吠えること自体が飼主にとって有用な情報となるのであればそれで構わない。

 次回に続く。