じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 私が子どもの頃に読んだ『目でみる学習百科 第3巻 宇宙のすがた』(鈴木敬信、1963年、偕成社)では、火星には下等な植物が生息していると推測されていた【画像上】。画像下は、『少年少女宇宙科学冒険全集8 火星救助隊』(パトリック・ムーア著、龜山龍樹訳、1961年、岩崎書店)で描かれていた火星の動物。↓の記事参照。

2021年2月7日(日)




【連載】#チコちゃんに叱られる!「キノコのカサ」「火星人はタコ」「冠婚葬祭の冠」

 2月5日に初回放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の感想と考察。

 今回は、
  1. なんでキノコにはカサがあるの?
  2. なんで火星人はタコなの?
  3. 冠婚葬祭の「冠」ってなに?
という3つの疑問が取り上げられた。

 まず1.のキノコのカサだが、番組では「上昇気流を生み出すため」、つまり「傘の裏から胞子が下に放出された後、上昇気流に乗せて遠くまで飛ばすため」と説明されていた。
 確かにこの説明には意外性があるが、カサの最大の機能は、やはり、「雨から胞子を守る、濡らさない」ということにあるように思う。番組では「上昇気流」が第1のメリットで、「雨に濡らさない」は「胞子がカサの下にあるメリットがもう一つ」というように言及されていたが、重要度は逆ではないだろうか。
 もし「上昇気流」だ最大のメリットであるならば、キノコのカサはみな椎茸のような形になるはずだ。しかし番組でも紹介されていたように、じっさいには色々な形のキノコがあるし、シメジのように密集して生えていたら上昇気流は起こらないはず。解説の先生が「キノコの形と胞子を飛ばす因果関係がまだ確実にはわかっていない」と言っておられる以上、上昇気流説は1つの可能性に過ぎないように思われた。




 2番目の「火星人はタコ」は、ウェルズのSF小説『宇宙戦争』の挿絵か、それを原作とした映画の影響ではないかと思っていたが、番組によれば、
望遠鏡で火星に模様があることを発見したイタリアの天文学者ジョヴァンニ・スキアパレッリが、論文中で、溝を意味するイタリア語「Canali」という言葉を使った。ところがスキアパレッリの論文をフランス語に翻訳したカミーユ・フラマリオンがこれをフランス語「Canal」と誤訳。「Canal」は人工的な運河という意味があったことから、この時点で火星人の存在が示唆された。その後、アメリカのパーシヴァル・ローウェルが、火星には運河があるという思い込みのもとで火星のスケッチをし、「肉体の限界を超えるほどの頭脳を持つ高度な知的生命体がいるに違いない」と想像した。そうした本を読んだハーバート・ジョージ・ウェルズが『宇宙戦争』を発表(1898年)、タコに似た挿絵が描かれて決定づけられた。『宇宙戦争』は1938年10月30日、アメリカのラジオ番組で放送され、それがあまりにもリアルだったためパニックを引き起こした。
と説明された。

 上掲の画像にもあるように、私が子どもの頃は、火星は望遠鏡から推測するだけの未知の世界であり、科学本では、何らかの植物が生息しているのではないかと推測されていた。また当時のSF小説でもいろいろな動物、あるいは地下に住む火星人が登場することがあった。その後キュリオシティーなどによる探査を通じて、火星人は空想だけの存在となった。子どもの頃に読んだ『少年少女宇宙科学冒険全集』は、当時、私が大人になる頃には本当にそういうことがあるかもしれないという期待感があったが、今の子どもたちが読めば、非現実的な空想小説として扱われてしまうかもしれない。




 3番目の、「冠婚葬祭の「冠」ってなに?」は、番組では成人式のことであると説明された。「冠婚葬祭」は、中国由来かと思ったが、番組ではもっぱら日本の文化伝統に基づいて由来が説明された。もちろん、中国、韓国、ベトナムなどでも同様のThe Four Ceremonial Occasionsというのはあるらしい。
 番組でも取り上げられていたが、今日の形態の成人式については、埼玉県北足立郡蕨町(現:蕨市)において実施された「青年祭」がルーツとなっているというのが定説であるが、名古屋市や宮崎県東臼杵郡諸塚村も発祥の地を名乗っているという。